第302回:安倍首相の訪米とデニス・ロッドマンの北朝鮮訪問
日本の安倍首相がオバマ大統領に会いに来ていたことを全く知りませんでした。例によって、うちの仙人がインターネットのニュースで、日本の3大新聞を読み、「オイ、安倍さんがアメリカに来ていたぞ」と教えてくれたのです。それから、アメリカで発行されてるインターネット版のニューヨークタイムズ、US
Today などの英語の新聞を覗いて見ましたが、安倍さん訪米の記事は虫眼鏡で探さなければならないほど、小さな三行記事としてしか掲載されていませんでした。まず、ほとんどのアメリカ人は安倍さんがアメリカに来ていたことすら知らなかったでしょうね。もちろん、テレビのニュース(全米版)でも完全に無視されました。
ところが、安倍さんの訪米に対して、中国は全く失敗だったと言い、英国の新聞は安倍さんの交渉で解決しようという平和的な態度を評価すると言っているそうです(この中国とイギリスの新聞を直接読んでいないので、知ったような口を利くのに気が咎めますが…)。
この中国とイギリスの安倍さん訪米の評価を日本語のインターネットで書きたてているのは、なんだか日本自体が主体性のない国のようで、惨めに見えてしまいました。他の国が安倍さんの訪米をどう評価するかなんて、全く気にする必要がないのですが…。
それにしても、安倍さんの訪米は、これほど悪い時期はあり得ないほど最悪の時期でした。オバマ大統領は、議会で過半数を占める共和党との間で、"崖っぷちの財政"で文字通り崖っぷちに立たされており、アメリカの天文学的な赤字をどう解消するか、喧々囂々(ケンケンゴウゴウ、こんな字を書くんですね)の最終論争タケナワの時だったからです。
一体、誰がこんな時に、毎年のように変る日本の首相なんかにかまっていらるか、という状況でした。日本と中国と台湾が領有権で争っているチッポケナ島のことなど、お前たちで勝手に決めろ! と思ったとしても不思議でない状況でした。
それにしても、どこの誰が、この時期の安倍首相の訪米を決めたのかしら…。
デニス・ロッドマンは、スポーツ音痴の私でさえ名前を知っているほど、有名、悪名高い元プロバスケットボールの選手です。身体は刺青だらけ、鼻、唇、耳にこれでもかというほどピアースを射し、髪の毛も毎回サイケデリックピンク、真緑、紫、あるいはドギツイ色の縞々に染めたり、白い花嫁衣裳を着てケネディーの息子が発行していた雑誌の表紙を飾ったり、ともかく大変なスポーツマンでした。
本職のバスケットは、スポーツ評論家の受け売りですが、チーム全体の動きを常に捉え、全くエゴのないプレーヤーで、リバウンドとアシストに徹し、バスケットに博士号があれば、その第一号だとまで評価されている…そうですが…。
そのデニス・ロッドマンがオーガナイズした、ショータイプのバスケットチームを率いて北朝鮮を訪れ、元首の金正恩と並んでバスケットを観戦し、晩餐会でも談笑し、大いにマスコミを賑わせたのです。それにしても、三代目の金正恩さん、随分隅々まで栄養が行き届いた、顔つき、体つきですね…。
それはさておき、デニス・ロッドマン訪朝は、テレビのニュース、新聞でもトップ扱いで報道されました。おまけに、ロッドマンがアメリカに帰り着くや否や、トークショー、特別ニュース番組、モーニングショーなどで引っ張りだこでした。
私が見た彼のインタヴュー番組では、例によってスザマジイファッションで身を固め、ピアースだらけの顔で、「俺は政治的な人間ではない」と前置きし、「何といっても金正恩はまだ27-28歳の子供だ。ただ、NBA(アメリカのプロバスケット)が大好きだと聞いたから、そんなら俺たちが本物を見せてやろうじゃないかということになった。オバマも大のバスケットファンだから、ともかくオバマに電話して、まずはバスケット談義でもしたらよい…とアドヴァイスした。なんでもよいから、互いに交流することが第一歩だ」となんともありきたりのコメントでした。
彼のバスケット外交は、世界中の注目を集めるという一点においては大成功でしょう。ニクソンが日本をツンボ桟敷に置き、頭の上を跳び越して中国に飛び、ピンポン外交を始めたことを思えば、デニス・ロッドマンのバスケット外交?も笑って切り捨てることはできません。
金正恩がどれほどの実権を握っているのか、単なるお飾りの人形なのか分りませんが、ともかく金正恩に直接会い、2日間を北朝鮮で過ごしてきたのですから、デニス・ロッドマンは金正恩が元首になってから、一番長い時間を過ごしたアメリカ人であることは間違いありません。
米国政府はロッドマンに対し、われ感知せずという態度を取っていますが、ロッドマンを交渉の表に立てて、北朝鮮は少なくともアメリカのバスケットボール・スタジアムにミサイルを撃ち込まない、その見返りとして、NBAの公式戦の何試合かを北朝鮮で行う…というような案を出せば、案外、金正恩が乗ってくるかもしれませんよ。そんなことが門を開く第一歩に…ならないとも限りません。これはチョット現実性の少ない、飛躍し過ぎの案かもしれませんが…。
日本の皇太子が国連で演説をしたそうですが、これもアメリカでは、恐らく世界中でも誰も知らないでしょう。ニュースになったのは日本だけでしょうね。
皇太子、イギリスに留学したことがあるそうですから、クイーンズ・イングリッシュを披露して、アメリカの夜遅くやっている視聴率の高いトークショー、ジェイ・リノ、ジミー・キンブル、デイヴィッド・レターマンなどのショーに気楽に出てくれれば、近親感を抱く人が増え、彼の意見を聞かせるチャンスになったはずですが……。
第303回:新ローマ法王の誕生に思ったこと…
|