第324回:アメリカの輸出ナンバーワン品目は?
アメリカの平均的家庭にどのくらい100%アメリカで造られた"メイド・イン・U.S.A."のモノがあるか、テレビ、雑誌でよく特集されます。言うまでもないことですが、外国製品を戸外に持ち出した後の家の中は、ほとんどガランドウになってしまいます。それどころか、家そのものの建築材料、材木、壁のパネル、フローリング、カーペットなども外国で作られた輸入物が圧倒的に多いですし、洋服ダンスそのものも、中の衣服も、家具、ガレージに納まっている車、工具にはじまり、家電も外国製品で占められています。
アメリカのメーカーと言っても、モーター部や外板が外国製であったりで、組み立てだけアメリカ国内で行われている製品ばかりです。いわば、アメリカ人は中国製の服を着て、中国、韓国製の家電に囲まれ、日本製か韓国製の車に乗って暮らしていることになります。
外国製品の中心を占めるのが中国です。ロンドンオリンピックのアメリカ選手団のユニフォームがメイド・ イン・チャイナだったので、チョットした非難が巻き起ったりしました。そんなことを言いだしたら、スポーツ選手の履いている運動靴は、100%近く中国製か韓国製なのですが…。
安い賃金で一生懸命働く中国人の作るものが、怠け者のアメリカ人が高い賃金を取りながら、粗雑に作った物より、良く売れるのは当たり前のことに思えます。今、アメリカで盛んにキャンペーンを展開している『アメリカ製を買おう』という運動は一歩間違えば、中国製不買運動に繋がりかねない歪んだ国粋主義に結びつく可能性があります。
なぞなぞクイズ的になりますが、アメリカが中国に輸出しているナンバーワン品目はなんでしょう? これが分る人は相当な国際経済通、国際貿易のプロでしょう。車を含めた機械類? 違います。小麦、大豆などの穀物と答えるなら、良い線行っていますが、残念ながらトップの輸出品目ではありません。アメリカから中国に輸出しているモノのチャンピィオンは、なんと"ゴミ"なのです。
早く言えば、ペットボトル、プラスティック、くず鉄、アルミの空き缶、古雑誌新聞などの紙、いずれもリサイクル、再生可能なゴミを中国に輸出しているのです。総額で2,300万トン、金額にして1兆1,300億円相当を"輸出"しています(2011年調べ)。
アメリカ国内でリサイクル、再生できないわけではないのですが、公害問題など地元の反対で工場設立が難しく、安値でも買ってくれる中国にゴミ処理を押し付けているのです。
アメリカで吐き出されるゴミで、アルミニュウム缶の75%、古新聞・古雑誌などの紙の60%、プラスティックの50%はわざわざコンテナに詰め込み、はるばる太平洋を渡り中国まで運んでいます。くず鉄、金属類は中国とインドがシェアを分け合っています。
中国では大いなる有害な煙を吐き出しながらゴミを再生しているのですが、それも非常に安い賃金に支えられた、危うい産業でペットボトルならキャップと本体、ラベルの紙と本体を剥がす作業をしてくれる人がいなければ成り立ちませんし、紙の再生にしても膨大な水が必要ですから、使い終わった水の垂れ流しを許してくれる政策を取る国でなければなりません。
煙をキレイにしてから吐き出す、使い終わった水も浄化してから川に流す技術はあるのですが、何分にもお金がかかりすぎるのだそうです。それなら、煩いことを言わずにゴミを回収してくれる、世界のチリ紙交換屋さん、オハライ屋さんの中国にもって行けというわけでしょう。
アメリカのペットボトルなどプラスティック容器には"一応"リサイクルマークが付いてはいますが、キャップの部分のハードプラスティック、紙、セロファン状の腰巻ラベルをイチイチ外し、別々のリサイクルに出すようなこととはしていません。そんな手仕事は中国人に任せておけというわけで、到って乱暴な種分け、回収しかしていないのが現状です。
ところが、中国も豊かになり、賃金も上がり、公害の意識も強まり(程度の問題ですが)、ゴミ処理をしていた地域住民の反対運動もあり、もうゴミは要らない、買わない、もって来るなと言い出したのです。中国政府もプラスティックのゴミは輸入禁止する方向を打ち出してきたのです。中国国内でも処理しきれないほどのプラスティックゴミが出ているから、アメリカから買う必要などない…というのが本音でしょうか。
中国の公害、ゴミの問題はアメリカの大国エゴの問題のように思えます。アメリカで出したゴミは、自国内で処理するのが当たり前なのですが、他の国に持って行って処理してもらい、その国が汚れることに目をつぶっているのです。
アメリカ人が出すゴミはプラスティックや紙だけでなく、生ゴミにしろ、群を抜いて世界一なのです。
ゴミ問題を一挙に解決できるような妙案はありません。政府が再生の難しいスタイロフォームのような材質の使用を制限する法案をつくり(実際にドイツ、スカンジナビアの国々では禁止しています)、ペットボトルにリサイクルのための税金をかけ、個々も使い捨てプラスティックを買わない、使わないようにするしか、地球をキレイに保つ方法はないのでしょうね。
第325回:国境という見えない壁
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