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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第340回:アメリカへの外国人留学生

更新日2013/12/05



どうも、私の大学でインターナショナル・ナントカというタイトルが付いたことは、私のところに持っていけ…と、回路ができてしまったのでしょうか、いくつものインターナショナル・ナントカ委員会を押し付けられるまま引き受け、膨大に時間を取られ、後で悔いることがシバシバです。

大学の中だけでなく、しまいには警察署からまで電話がかかってきて、カンボジア語、ネパール語の通訳ができる人はいないかとか、地元の料理学校からも、日本人の生徒さんのヴィザなどの書類を見てやってくれないかとか言ってくる始末です。

相変わらず、米兵が戦争時に持ち帰った日本、中国、韓国語の文書や骨董品が毎週のように私の所に持ち込まれます。

現在、私の働いている大学には、たった50人ほどの外国人留学生しかいません。今度、いつの間にか私がメンバーにさせられた委員会は、外国人留学生をこの5年で400人まで増やそうという野心的なものです。

先生の方は、数学のドイツ人と南アフリカ人、生物のインド人、スペイン語はスペイン人、コスタリカ人、ドイツ語はドイツ人、体育学部のドイツ人、音楽部では韓国人、中国人、アルゼンチン人、サルヴァドール人と外国人の教授がかなりいるのですが、留学生は比率にすると、ガックリ少ないのが現状です。

元々、アメリカに来る留学生はその国の経済に大きく左右されます。その国が豊かになり、飛躍しようとしている時にはアメリカだけではないでしょうけど、ドッと外に出て学ぶ学生が増えます。20年も前になるでしょうか、ボールダーにあるコロラド大学で働いていた時に、韓国人留学生が大挙してやってきました。 私もすっかり韓国贔屓になって、キムチの善し悪しを味分けるほどになりました。ところが、4、5年経って、ピタリと火が消えるように韓国人留学生が少なくなりました。

2012年から2013年の学校年で、アメリカに81万9,644人の外国人留学生がきています。内訳は中国人(23万5,000人)がトップで、韓国人、サウジアラビア、カナダ人と続きます。前の学年に比べ7%も増えており、史上最多の留学生がアメリカで学んでいることになります。

爆発的なエネルギー、経済成長を続ける中国人が、海外に出て勉強しているのです。サウジアラビアは、政府が豊かなオイルマネーをバックに、コンスタントに留学を奨励し、学生を送り込んできます。

逆にアメリカの学生さんが外国で学ぶ方ですが、大変な輸入超過で、出て行く人は28万3,332人で、来る学生さんの3分の1少々です。しかも、留学先のトップがイギリスで、英語米語の壁に寄りかかっていると見られても言い訳のしようがありません。次にブームのイタリア、そしてスペイン、中国と続きます。

留学生受け入れを、リクルートをもっと盛んにし、我が大学を国際的にも魅力ある存在にしようという結果、大学に利益をもたらしたい…というのが、委員会の狙いです。大学もショーバイですから、授業料を払ってくれる上、大学のレベルを上げる優秀な学生さんが欲しいのです。

ですが、私の大学はアイビーリーグの大学やカルフォルニアのノーベル賞の受賞者が何人もいる有名大学ではないので、それなりの特徴を出さなくてなりません。集った先生たちにも、これぞというアイディアがなく、物価が安い、犯罪が(比較的ですが)少ない、山に囲まれ自然が一杯ある、天候が良いという程度で、学生よりも定年退職者向けのセールスポントしか思いつかないのです。いっそのこと、日本の団塊の世代に焦点を絞って、日本で定年退職した老人をリクルートした方がいいのでは…と思いたくなります。

私の言語学のクラスに3人の外国人がいます。ドイツ人、スイス人、チリ人ですが、この3人が他のアメリカ人とはかけ離れて優秀なのです。それは、まさに目を覆いたくなるくらいの違いで、きっと3人の留学生は、アメリカの学生のことをなんてバカで怠け者なんだ…と思っていることでしょう。

こうまでレベルが違うと、私もどの辺に焦点を当てて授業を進めるべきか、難しくなってきます。第一、彼ら3人にとって、外国語である英語のレポートから、内容以前の英語の質、理論の進め方に、アメリカ人ボンクラ生徒と比べ、雲泥の差があるのです。これは大学に入る前の段階、中学、高校の勉強のやり方から叩き直さなくてはならない問題でしょうね。

今まで、来る者は拒まず、高校を卒業していれば誰でも(とても低いハードルは設けてはいましが)入学できたのを、大学でやっと生徒を選ぶ方針を打ち出しました。それでも、大学一年目で辞める学生、落第する学生、ドロップアウトする学生が40%もいるのです。

私のクラスにいるような優秀な外国人留学生がもっともっと増えれば、自然と、アメリカ人の学生さんも刺激を受け、もっと勉強するようになると期待しています。 

ウーム、それには、いかに外国から優秀な学生さんを呼ぶかが問題ですね。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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