第680回:コロナ経済援助金の正しい使い方
コロナの影響で仕事ができなくなり、生活が苦しい人たちのために、アメリカも日本と同じでように政府が援助金を出しました。地元の個人営業のような店舗、レストラン、ビアホールなどは軒並み閉まっています。そこで、最低賃金で働くウェイター、ウェイトレス、コック、バーテンダーなどは失業し、さぞ大変だと思います。
アメリカで労働者のクビを切るのは実に簡単なことなのです。中小の企業にはその規模に応じて援助金が出ていますが、それはとてもそこで働く人たちの給料を払えるほどではありません。アメリカではまず大半の人が家のローンを抱えているので、それを月々返済できないとなると、銀行、ローン会社が家を乗っ取ることになります。子供を何人か抱えた家庭にとっては、重大な危機です。
アメリカ合衆国政府は、Stimulus Plan=景気刺激策として、一定の収入以下(前年度の税金申告の額で決められます)の人に、一人1,200ドルを支給しました。軍事予算や今ではNSA(国家安全局;National Security Agency)が使う金額に比べ、まだ微々たるものですが、それにしても、国家予算に食い込むことには変わりありません。そのツケは次の世代の若者に回っていくことになるのですから、とりわけ、どうしても必要でない限り、そんな援助金は貰うべきでない…と考えていました。
ところが、私たちの銀行口座に二人分、2,400ドルが振り込まれていたのです。アメリカの税制の恐ろしいところで、もう40年近く払い続けていた所得税を申告する時、国民総背番号である社会保障番号(Social Security Number;これは生まれたと同時に持たされ、運転免許取得、銀行口座を開く時、不動産を購入する時など、すべてに付いて回ります)を書き入れます。前の年、2019年、私は退職前のハーフタイムで働いており、従って給料も半分でしたから、貧乏人のカテゴリーに入り、自動的に支給されてきたと思っていました。今回は良い方に作用しましたが、このように政府が個人の銀行口座にアクセスできるのは恐ろしいことです。
仙人たるダンナさん、俺たちは食うに困っているわけでなし、そんな金、返せ…と言うのですが、大金持ちの私の弟のところにも、奥さんと息子の分が入金されたと聞き、またトランプが床屋(あの禿隠しのヘアースタイルを維持するのに)に年7,000ドル以上を税金※でマカナッテいると知ってから、ダンナさん、返金のことを口にしなくなりました。 ※訂正:70,000ドル(約770万円)の間違いでした。
でも、考えてみるまでもないことですが、この援助金はトランプ本人はそう思っているようですが、トランプ大統領からのプレゼントではなく、私たちが払っている税金、云わば私たちのお金なのです。二人で2,400ドルなんて、私が退職するまでの40年間に払ってきた税金の総計を持ち出すまでもなく、安い給料から毎月引かれる税金程度のものであることに気が付きました。
政府の方針では、その援助金、救済金を使うことで、アメリカの内需を増進し、多少でも経済効果を生もうと意図したのでしょう。“Made in USA”を買いましょう運動につながっています。それはそれでいいのですが、私たちが買い物をする2軒のスーパー、『スプラウト(Sprout)』と『ウォルマート(Walmart)』(この2軒、お金持ちクラスは近寄りません。赤貧クラス向きです)で買い物をすると、生鮮野菜はメキシコや南米から来ていますから、アメリカ国内の農家を助けることになりません。国内産だからと言って赤ちゃんじゃあるまいし、牛乳ばかり飲んでいるわけにいきません。ブロッコリーなどは香港から輸入しているのです。 香港のどこにそんな畑があるのか不思議ですが…。
そして『ウォルマート』で買い物をするのは、Amazonの社長ジェフ・ベゾスを抜いて、常時アメリカでトップのサム・ウォルトン(Sam Walton)一族をますます太らせる上、売っている物の90%は中国、ベトナム、タイなどで最低賃金以下で働かせているその国の政府とつるんだ企業の人たちを助けるだけで、アメリカの生産業に何の利益ももたらしません。
この際、思いっきり遠出をし、アメリカ国内を車で回ろうとすれば、それはメジャーの石油会社とアラブの産油国に今まで以上に儲けさせるだけです。
とても政府の援助金では足りませんが、燃費の良い車に買い換えようとすれば、それは日本か韓国の自動車産業を助けるだけのことです。
新しいコンピューターに買い替えようとすれば、今では大半が中国、台湾、インド、マレーシア製です。
インターネットで、家具、服飾、靴、室内装飾品、必要のない新製品ジャンクをオーダーすれば、今でさえ億万長者のAmazonベゾスの懐にお金をさらに入れてあげることになります。それにそんなものに“Made in USA”は全くありません。
それじゃ、インヴェストメント(投資)会社に預けるか、クレジットカードに入金しておき、将来、いつでも使えるようにしておくのは悪くないアイディアのようですが、アナタが預け入れたお金は、個人の手の届かないオフショア・バンクに流れるだけです。
どうにも、私たちの周りに純アメリカ産のモノが極めて少ないのです。というより、“Made in USA”を見つけるのは、砂浜に落としたコンタクトレンズを探すようなものです。かなり大げさですが……。
アメリカの産業を助けるお金の使い方は、毎日、マクドナルド、バーガーキングでハンバーガーを食べ(まだ牛肉だけは純アメリカ産です)、まだ中国がフランチャイズに乗り出していないアメリカン・フットボールを観るために大枚を払い、そこでアメリカ産のトウモロコシを使ったポップコーンを食べ、ハイネッケンではなく、アメリカ製ビール“バドワイザー”をたらふく飲み、試合が終わった後で、超ローカルのスポーツバーで祝杯挙げるか、または残念会で悪酔いするまで飲み、そんな場所に控えている娼婦にお金を使い果たすことだけが、純粋にアメリカ国内の消費経済を助けることになるのではないでしょうか。
最近、娼婦家さんもラテン系のメキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、南米と東ヨーロッパの女性が多くなったそうですが、ともかく彼女たちはアメリカ国内で働いているのですから、稼いだお金はアメリカ国内で使うでしょう。
そして酔った勢いで、刺青を入れるのも一考に価します。まだアメリカの刺青屋さん業界に日本のクリカラモンモンの芸術的な刺青ができる日本人の彫り師が入ってきていないか、非常に少ないので、これぞ純粋にアメリカの産業です。
と言うことは、純粋にアメリカに忠誠を尽くそうとするなら、アメリカン・フットボールを観ながら、ポップコーンやハンバーガーを食べ、コカコーラかアメリカビールを飲み、酔っ払って娼婦を抱き、刺青を入れるしかありません。
一体それでアメリカ経済にどれだけ効果があるのか……そんなこと知るもんですか……。
-…つづく
第681回:選挙権は誰のものですか?
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