第37回:Peking (8)更新日2006/12/07
峰を吹き抜ける風を浴びながら、長城で半日ほど時間を過ごした後で麓まで降りてみると、そこでまたひと悶着が待っていた。我々はどうもこの中国という国との相性が、とことん悪いらしい。
午前中にタクシーに相乗りして、ここまでやって来たバックパッカーの二人連れとは、帰りの時間を待ち合わせしていたのだが、どうやら彼女たちは先にタクシーを使って帰ってしまったらしかった。夕暮れも近づいてきて、人気のなくなった山の麓で、周りにはタクシーを呼ぶ公衆電話も見当たらず、我々はなすすべもなくただ次のタクシーがやって来ることを祈りながら時間を過ごした。
しばらくして、とにかくタクシーはやって来たのだが、そのタクシードライバーにバス停まで乗せて欲しいと話すと、また例のメイヨーという答えが返ってきた。まったくここまで来てまたメイヨーかよと、疲れもピークに達していたこともあって、むしろなぜか可笑しくなってしまったが、タクシードライバーとしても、料金のふっかけようのない貧乏旅行者は遠慮したいというところなのだろう。
何度聞いてもメイヨーの一点張りであったが、さすがに日暮れも近づいてきたこともあって、タクシードライバーも我々を乗せて引き返すことに決め込んだのか、なんとかバス停までは乗せてくれることに同意してくれた。
ところがである、このタクシードライバー、バス停まで着いた段階で、乗る前に約束していた料金とはまったく別の値段を請求してきたのである。まあ少しくらい高めに請求するのであれば、彼のおかげで我々もあそこで夜更かしせずに済んだのだから払おうかという気にもなるが、約束していたはずの午前中のタクシー料金と同じというものから比べると、3.5倍もの値段ということになると話が違ってくる。
もうなにからなにまでこの調子で、この国では疲れてしまうが、とにかくこういうボッタクリに屈してしまうと、後からくる日本人観光客までが同じ目に会うことは目に見えている。そういうわけで、バスが来るまでの30分ほどの間に渡って、「いや払え」、「いや払わない」といった具合で延々と路上の交渉が続いた。
結局、バスがバス停に到着した段階で、我々が揉めているのを見てとったバスドライバーが、運転席からなにやらタクシードライバーに声を掛け、渋々ながらもタクシードライバーは約束どおりの金額をポケットにしまって去っていった。
とにかくアグレッシブという意味では、世界中のどの国の民族にも決して引けをとらない中華の人々だが、こういう性格だからこそああいう巨大な建造物を作り上げるパワーというものも秘めているのかも知れない。
-…つづく
第38回:Guilin
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