第34回:Peking (5)更新日2006/11/09
北京オリンピックへ向けて徐々に撤去、整備が進みつつある、北京の往時を偲ばせる胡同へ向かう。石造りの固く薄暗いモノトーンが似合うこの下町は、紫禁城を中心にして放射状に広がる、歴史ある北京市民の住宅地だ。
かつては宮廷の貴族や皇族が住んでいたといわれるこの胡同だが、訪ねた区域の雰囲気は明らかにそれほど裕福な人々が住んでいるようには見えなかった。くねくねと入り組んだ袋小路は、どこから入ってどこへ抜けるのか、地元民でもない限りは分からない迷路のようで、1時間ほどいったいどこをどう歩いているの分からないままに彷徨った。ただここの裏通りには貧しい人々の姿はあっても、上海の裏通りのように殺気じみた視線を浴びることは一度もなかった。
北京へ来たからには、絶対に食べてみたいものに“北京ダック”があった。もちろん観光客が集まりそうな所には、“北京ダック”があるということを示した看板が多く見受けられたのだが、そんなところはサービスや清潔感は多少良いのかもしれないが、値段の方も裏通りの店よりも3倍ほど高めの設定になっていた。どちらも食べてみた感想からいくと、味の方は値段に関わらずどっちだってそれなりにおいしかった。
この北京ダック、鴨の肉だけではなくて、それを包んで食べる生地やネギ、肉を茹でた湯で作ったスープなども一緒に出てくるから、一品が相当なボリュームになる。食堂の中を見渡すと、日本人とたいして変わらない体格なのに、普段はアメリカ人並みに次々と料理を注文する中国人たちでも、さすがにこの北京ダックが相手だと全部を平らげることはできないようだった。
-…つづく
第35回:Peking
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