第23回:Shanghai (2)更新日2006/06/29
それでもどうにか気持ちを落ち着かせて、食堂前の電話機からアメリカの実家へ電話をかけさせた。両親と話すことができて少しは気持ちも落ち着いたのか、とりあえず昼食をこの食堂でとることにした。
ところがこの食堂の飯が、これまた完全なる中華なのである。 もちろんここは中国なのだから、本物の中華であるのは当然なのだが、アメリカ人にとっての中華料理というものは、完全にアメリカナイズされた中華料理ということであって、こういった本場の中華は今までに経験したことのない気持ちの悪い味と香りなのだという。
やむなく自分だけ、何だかわからない小魚を煮詰めたものが乗っかった麺料理を食べ、エリカは駅前のコンビニエンスストアでパンを買って食べることにした。
上海くらいの都市ともなると、中国だからとかなんだとかいわなくても、国際都市の名に恥じず、それなりに西欧人でも食べれられるレストランは数多くあるし、コンビニエンスストアも至る所にあった。だが、そんなものばかりを食べているようでは、この先もっと僻地へ入った場合にエリカはどうするのだという不安もあるにはあった。
ただ、ここでぐたぐたと文句を言ったりするとまた機嫌を損ねる可能性もあるので、余計なことは言わずに自分だけはずっと中華で押し通した。これはなんとなく思うところなのだが、欧米人というものはちょっと変わった奴を除いては、現地の食堂や屋台で食べている人は少ないものだ。
そういうわけで、むしろ少しくらい値が張っても欧米風にアレンジされた味を提供する白人ばっかりの店が、アジアの小さな村落にすらきちんと存在するというパターンが多い。
それに比べて日本人というものは、同じアジア人ということもあってか、現地の屋台でもおいしそうに腹を満たしている姿をよく見かけたものだ。それとも、これは西欧人の「金を払ってやるのだから、自分たちのお気に入りの味に合わせてくれ」というような、日本人とは根本的に違うサービスというものへの考え方の違いからくるものなのかも知れないが…。
-…つづく
第24回:Shanghai
(3)