■TukTuk Race~東南アジア気まま旅


藤河 信喜
(ふじかわ・のぶよし)



現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D、映像作家、旅人。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、山岳民族と暮らしたりと、大志なく、ただ赴くままに生きている人。
Blog→「ユキノヒノシマウマ」





第1回:Chungking express (前編)
第2回:Chungking express (後編)
第3回:California Dreaming(前編)
第4回:California Dreaming(後編)
第5回:Cycling(1)
第6回:Cycling(2)
第7回:Cycling(3)
第8回:Cycling(4)
第9回:Greyhound (1)
第10回:Greyhound (2)
第11回:Greyhound (3)
第12回:Hong Kong (1)
第13回:Hong Kong (2)
第14回:Hong Kong (3)
第15回:Hong Kong (4)


■更新予定日:毎週木曜日

第16回:Hong Kong (5)

更新日2006/04/06

この地を訪れていた時は、ちょうど日本のメディアなどで鳥インフルエンザが騒がれていた時期でもあり、香港の観光名所の一つであるバード・ストリートを訪れている観光客の姿はまばらではあったが、やはりここにいるいい年をしたおじさん達の姿はいつ見ても微笑ましいものだ。

日がな一日、自慢の愛鳥を小さな竹の籠に入れて、それを前にぐだぐだと男同士で談笑し続けているのだ。なかには鳥籠をお互いに並べて、中国将棋を指しているグループもある。

そして人の指す手をああだこうだと周りで眺める者たちが大騒ぎしては、それに飽きると籠を持って何処かへ去っていく、かと思えばまた新しい人が籠を持って現れる。この何ともいえない風情を持つ区域も、鳥インフルエンザの煽りを受けて、将来的には退去を命じられる可能性もあるという張り紙を今回は至る所で見かけた。

カオルーン地区が観光客と世界中から流れてきた何者とも知れぬ怪しい人種の巣窟だとすれば、香港島のセントラル地区は、世界中から集まってきたエリートサラリーマンの闊歩する街。

しかしながら、こんな近代的な香港島にだってローカルな人々が活動している地域もやっぱりある。それがカオルーンから見て香港島の裏側にあたるアバディーン地区である。この地域へ行けば、未だに船上生活者の姿や路上生活者の姿を多く見受けることができ、物価もカオルーンに比べてもさらに安い。

また同じ香港島の住民でありながら、人々も少し穏やかで、道を尋ねたりしても親切に答えてくれる場合が多い。そんなこの地を観光客が訪れるとすれば、船上レストランでのシーフードだろう。

実際、自分が訪れたときにも日本人の団体客が押し寄せ、大きなロブスターを生簀から選んでは食堂へ消えていく姿を見かけた。もちろんこの手のレストランは、地元のシーフードレストランよりも衛生面や装飾が豪華なだけに値も張る。

この地区の物価がカオルーン地区に比べても安いことを思えば考えられないのだが、水上レストラン内のメニューは日本の海鮮屋と比べても決して引けをとらない値なのだから。

ただ、だからといって貧乏旅行者にとってはまったく興味のない地区であるかといえばそうとも言い切れない。なぜなら、この水上レストランを巡るボートは基本的に無料であり、つかの間の船上の旅をタダで楽しむことができるからだ。

そして、その巨大な水上レストランの屋上へ行けば、この湾を見渡しながら中国人が船室で麻雀に熱中する姿を眺めることができる。

この湾に夕日が差し込む時間帯に行けば、ここが忙しい香港の中にあることを忘れさせてくれ、心地よい潮風がしばし都会の喧騒での疲れを癒してくれる。

…つづく

 

第17回:Hong Kong (6)