■TukTuk Race~東南アジア気まま旅


藤河 信喜
(ふじかわ・のぶよし)



現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D、映像作家、旅人。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、山岳民族と暮らしたりと、大志なく、ただ赴くままに生きている人。
Blog→「ユキノヒノシマウマ」





第1回:Chungking express (前編)
第2回:Chungking express (後編)
第3回:California Dreaming(前編)
第4回:California Dreaming(後編)
第5回:Cycling(1)
第6回:Cycling(2)
第7回:Cycling(3)
第8回:Cycling(4)
第9回:Greyhound (1)

 



■更新予定日:毎週木曜日

第10回:Greyhound (2)

更新日2006/02/23


モントレーは、スタインベックの小説などで知られる西海岸でも最も古い町の一つだ。かつては彼の本の中でもうかがえるように貧困が支配していたのだが、アメリカの世界的地位向上と歩調を合わせるように、その過ごしやすい気候と快適な海風のこの地はアメリカでも有数の高級住宅地へと変化を遂げてきた。町の中心部は半日もあれば歩いて廻れるサイズなのだが、通りにある不動産屋の何気ないビラを見て、その価格に誰もがまず間違いなくびっくりする。 

なにしろ見栄えのしない平屋の小さな一軒屋が、平気で2ミリオンも3ミリオン・ドルもの値段をつけてやりとりされているのだから。少し大きな庭付きや3バスルームとなってくると、あっさり10ミリオンの世界である。パッと見は地味で静かな田舎町といった感じなのだが、そこでやりとりされている土地の価格には日本のバブル期を彷彿とさせるものがある。これをカリフォルニア・ドリームと呼んでもよいのだろうか、せめて夢がさめるまでは…。

バスの停留所にもなっている町のガススタンドに迎えにきてくれていたモニカに連れられて彼女のアパートへ向かった。この土地バブル狂想曲のモントレーにわざわざ彼女が住んでいる理由は、別に富豪の令嬢とか元高給取りだったとかいうわけではなくて、この町にある国際関係学で有名な施設で修士の資格を得るためである。

この施設はその世界ではかなり名を知られているらしく、CIAやアメリカ海軍の将校も海外へ派遣される前にここで訓練を受けるのだそうだ。そんな彼女の住んでいるアパートは、1階で韓国系オーナーがグロッサリー・ストアを開いているこの土地にあった薄ピンク色の乾いた土壁の建物の2階にあった。

今夜はそのモニカが歓迎の意味を込めて、我々に手料理を作ってくれることになっていた。以前にまだ彼女がシカゴにいる時に実家へお邪魔して手料理をご馳走になったことがあるのだが、さすがにイタリア系の血が流れている家系だけあって、そのテーブルに並べられた品々は、味はもちろんのこと、ボリュームや彩りも素晴らしかったのを覚えている。今夜もまたそのおいしいご馳走にありつけると思うと今から待ち遠しい。


とりあえずいったん荷物を解いた後、海辺へ出てしっとりと潤いを含む潮風を浴びた。乾いたモントレーの土地には、この風がなんともいえず心地よい。浜辺に座って打ち寄せる波を眺めながら、この太平洋の向こう側にある東南アジアをこれから渡り歩くことになるのかと思うと、待ち遠しいような不安なような複雑な気持ちになってくる。

一通り海岸沿いを歩いた後で、この町自慢の小さな小さな豪邸を見て周ったり、公園で渡り鳥に餌をやったりして、久々に味わうアメリカのローカルタウンを満喫した。

…つづく

 

第11回:Greyhound (3)