第41回:私はアメリカの病院が好きだ! ~その2
更新日2002/07/25
前回に引き続き、アメリカでの出産の話。
ルシールパッカードチルドレンズホスピタルという名のその病院で1人目を出産した友人にすすめられてそこで、産むことにした。友人が3人そこで出産し、3人共が「是非、そこにしなさい」とすすめてくれたから。そして、私立の病院で費用は高くつくが、「もし、万が一何かあっても全米でも有数の小児科専門病院であるから安心」という友人の夫の弁に深くうなずいたからだ。(実際には医療保険費は全額夫の会社が負担してくれた。なんていい会社!)
最初に行ったのは、産科ではなく婦人科で、妊娠の為ではなく子宮のあたりに鈍痛があったから、その検査を受けに行った。それは以前にもあったことで、前回の生理との時に「一掃」されないで次の生理が来ると、キャパシティオーバーで痛みが出る、と言うもの。2mはあるかと思うような黒人の男性医師が診察を終えて「大丈夫。何も問題はありませんよ。ところで、この機会に他に相談したいことはないですか?」と言うので、「妊娠しているかも知れない」というと、「すぐに調べましょう」と尿検査をした。5分もすると戻って来て、厳めしい顔で「手を出しなさい」という。何のことかわからず両手をおそるおそる差し出すと、グローブのような分厚い大きな両手で私の両手をしっかりと握って、それからにっこり笑って「おめでとう。妊娠してます」と言ってくれた。その医師のちゃめっけのおかげで喜びが倍になったような気がした。
それからすぐに産科に回って、初回診察の予約を取った。
最初の診察の時は産科の看護婦が問診をとって、システムを説明してくれた。いわく、「貴女には3つの選択肢があります。一つは専属医師による診察。毎回同じ医師によって診察を受ける。ただし、出産当日にその医師がいない、という可能性もある。2つめは医師による診察。毎回誰に当たるかわからない。3つめは助産婦による診察。当病院には現在6人の助産婦がいる。出産当日はそのうちの誰かが担当する。ただし、出産までに必ず1度は6人全員に診察を受けるようにするので、出産時に初対面の人に当たることはない。普通の出産なら最初から最後まで助産婦が担当します。もちろん問題があった時には必要に応じて医師が呼ばれるので技術的な問題はありません」
友人はみんな助産婦コースを選択して、それをすすめてくれていたので迷うことなく「助産婦コース」と答える。
結果として、私にとってはこの「助産婦コース」は大正解だった。妊娠中、出産を通して、不満に思ったことも、不安を感じたことも一度もなかった。アメリカでは助産婦は産科看護婦の資格を取得した上で、さらに学校に通って取得する資格で、修士号と同等である。
アメリカで医師の診察を受けた時にはいつも感じていたことだが、「お医者さま」対「患者」ということではなく、患者と医師は対等で患者の質問には医師は答える義務があるという、考えてみれば当たり前のことがしっかりと根付いているという印象を受ける。当然その裏には、何かあれば裁判ざたになるというアメリカの現実と、陪審員制度のアメリカの裁判では弱者が勝訴する確率が高いので、医師も心構えが日本とは違うのだろう。医師が患者を「診る」だけでなく、「自分がどういう状態であるか、患者に理解させること」までを「診療」の当然のプロセスとしているということは、このうえない安心である。それでこそ、高い医療費も払おうというものだ。と、偉そうに言っているが、滞米中私は医療費に自腹を切っていない。すべては夫の会社が負担してくれた。すばらしい!! 実際これは、私のアメリカ人の友人達の羨望の的であった。いつも、医療費=保険料が高い、とこぼしていた彼女達にとっては、「あり得ない」ことだそうだ。もちろん、私にとってもこれは「駐在員」の家族にのみ与えられた恩恵だったわけだ。
出産当日のことは次回。
(その3へ続く)
→ 第42回:私はアメリカの病院が好きだ! ~その3