第295回:大量殺戮が起こると鉄砲屋が儲かる!?
昨年の末に、アメリカの北東部にある小さな町で、またまた多量殺人事件が起こってしまいました。
小学校に機関銃とライフル、ピストルを持った若者が侵入し、乱射、虐殺したのです。日本でも大々的に報道されたことでしょう。こんな惨劇を何度繰り返せば済むのでしょうか。
この事件の直後に奇妙な現象が起こりました。
銃、主にセミオートマチックと言われる連射可能な(1分間に800発)軽機関銃、弾薬などの在庫が底を突くほど売れたのです。新品の銃を買う時は、一応建前として、無犯罪証明書を取得することが義務付けられていますが、FBIにその証明書の請求が12月だけで290万件ありました。普段の月の5、6倍にも跳ね上がったのです。
鉄砲屋さんも、銃のメーカー、弾丸メーカーも、口を揃えてオバマ大領に感謝しています。オバマ大統領が議会に銃規制の法案を提出する…気配が漂うだけで、ソレ、今のうちに軽機関銃を買い、そのための付属部品(連射可能なマガジン、弾創など)と弾丸を大量に買い置きしておこうと、多くのアメリカ人が大量の買いだめに走り、大変な買占めブームを巻き起してくれるからです。
実際、マサチューセッツ州、ニュータウンでの小学校大量殺戮以降、12月だけで鉄砲の売り上げは6倍、弾丸の方は在庫が空っぽになるほど売れに売れています。私が覗いてみた安売りスパーマーケット、ウオルマートの鉄砲売り場の弾が載っている棚はほぼ空っぽでした。大量殺人があるたびに、銃と弾丸が馬鹿売れするのがアメリカなのです。
チョット覗き見趣味で、今回、小学校の乱射事件で使われたAR-15という自動小銃をインターネットで見たら400ドル内外で新品が買えますし、中古の売りたし買いたしの欄では(このように、ガンショーやインターネット、雑誌の売りたし買いたしで、政府のバックグランドチェック、無犯罪証明書なしで売られる銃が40%を占めます)、250ドル程度のお金で、30発連射可能なマガジン5個付きで購入できるのです。レディー用として、銃床やグリップがピンク色のものまで売っています。
現在、アメリカ国内にある銃火器は3億1,000万丁と見られています(2009年調べ)。もちろん、人口100人当たり世界でダントツの1位で、88パーセントの人に銃が行き渡ることになります。これは赤ちゃん、小学生、老人ホームに住む人まで数えた中でのことですから、一世帯当たりになると、すべての家が3丁以上の銃を持っていることになるでしょう。
銃の困ったところは、使わずに長年持っていても腐らず、壊れないことでしょうか。テレビや洗濯機は7年から12-13年で壊れ、買い替えなければなりませんし、コンピューターとなるともっと回転が速いでしょう。ところが、一般に出回っている銃火器は構造が簡単な上、40年でも50年でも立派に人を殺せることです。
兵器産業としては、戦争、内戦が起ってくれて、どんどん銃や弾丸を消費してくれないと、大量に余ってしまうのです。そうかといって、プロダクションラインを打ち切ってしまうわけにもいかず、造り続け、バーゲンセールを展開したりします。
大量殺人の後に必ず起こるブームのように売れに売れてくれなければ行き詰ってしまうのです。銃の規制などとんでもない、アメリカ人全員が腰に銃をぶら下げ、ライフル、マシンガンをすべての車に積むように、銃のメーカーは日夜邁進しているのです。
そのためには、NRA(National Rifle Association)という兵器メーカーが後ろ盾になっている圧力団体は、膨大な政治献金をし、なんとしてでもオバマ大統領の銃規制法案を廃案にしなければ…と、暗躍ではなく表立って派手に"民主主義を守るためには、鉄砲を手に"のキャンペーンを繰り広げ、議員さん(主に共和党ですが)へお金をばら撒いています。
軽機関銃を含め、ライフル、拳銃などは、構造が非常に簡単で、チョットした町の鉄工場以下のガレージで誰でも簡単に造れる…のだそうです。そのような自作キットも売り出されています。弾丸はもっと簡単で、許可証を申請すれば、誰でもすぐに町工場を開き、弾丸を作って売ることができます。
さらに困ったことには、銃火器や弾丸のショーバイは麻薬についで儲けが大きく、止められないおいしい仕事だということです。
そんなわけで、アメリカではアフガニスタンの戦争で年に500人程度の死者(アメリカ人兵士に限れば)しか出していないのに、アメリカ国内で毎年1万人以上が銃で命を落すことになります。
ジユウ(自由)の国アメリカはジュウ(銃)の国になってしまったのです。
下手なシャレですみません。
第296回:日本式お風呂とハダカ考
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