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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第279回:一夫多妻と愛人志願

更新日2012/09/27



私たちの住んでいる町は、急激に人口が増え続けている"ブームタウン"です。晴天日が年に320日と天候が良い上、住宅、物価が安いので、お年寄りが定年退職後移住してくるのです。

それに伴って、大きな病院、老人ホーム、ケアーセンターが続々と建ち並び、"老人産業"の町になりつつあります。

一方、大学も拡張を続け、新しいビル、校舎、学生寮をどんどん建て、学生数を増やし続け、老人と学生の町になりつつあります。

現在、人口は凡そ12万人です。地元に日刊紙が一つ、週刊新聞が二つ、老人向けの情報誌、学生新聞が発行されています。

1880年代に人口が5,000人だったと言います。驚くのは、その中に独身の女性が5人しかいなかったと言うのです。中国人、インディアン、黒人、プロの娼婦屋さんは勘定に入れていませんが、それにしても、独身女性がひどく少なかったのは事実のようです。

一般に、西部フロンティアでは女性が極端に少なく、男どもは兎の目鷹の目で結婚相手を探していました。辺境の州では、平均75%以上は男性でしたから、鉱山の町、インディアン居留地と接している開拓部落では、大変な女日照り?の状態だったようです。

当時、モルモン教徒は一夫多妻制をとっていましたから、これは女性に飢えた西部の男にとって、羨ましいどころの騒ぎでなく、許せない、とんでもない犯罪行為に見えたのでしょう。これも、モルモン教徒を迫害した一つの大きな理由になっています。

今では、もちろん一夫多妻は認められていません。しかし、アメリカ国内でセンセーショナルなニュースが少ない時や、大物のハリウッド・スターが派手に離婚、結婚を繰り返してくれない時に、穴埋め記事というのでしょうか、年に何度か飽きもせずに一夫多妻の記事が写真入でスクープされます。

アメリカではどこの州でも一夫多妻は違法ですから、法規上では奥さんは一人で、他の女性は奥さん公認の愛人ということになるのでしょう。

離婚、再婚が当たり前、結婚を一回しかしない夫婦が希少価値になりつつあるアメリカでは、男性も女性も一生の間に何人かのダンナさん、奥さんを持つことになります。 言ってみれば縦長の時間の流れの中では一夫多妻、一妻多夫を行っていることになります。一昔前のカソリックのように、一切離婚を認めない方が、一夫多妻に反対する立場としてスジが通っているのですが……。

一夫多妻は、80%のアメリカ人が離婚、結婚を繰り返しているのを、同時進行形で一度に3人、5人の奥さん持っているだけだとも言えます。

女性の権利にウトイはずのアメリカ女性、しかもニューヨークの独身ビジネスウーマンに「大金持ちの男性の2番目、3番目の奥さん、愛人になってもよいか」と訊ねたアンケート調査によると、なんと70%の女性は、2番目、3番目の奥さんとして自分の権利が保障されるなら、愛人になってもよいと答えているのです。

早く言えば、お金が貰えて、何らかの遺産を分けてもらえるなら、大金持ちの2号サン、3号サンになってもよいというのです。 

これを聞いた貧乏な仙人たる私のダンナさんは、深くうなだれ、「どうにも女性はお金と権力に弱くできているのは、世の東西、今昔を問わず変らんな~、何がウーマンリブだ。女性はそれで良いけど、金と権力のある少数の男が何人もの女性を独占したら、残った大量の男はどうなるのだ」と本音とも、弱音とも愚痴とも取れる負け組のゴタクを並べていました。

アメリカのウーマンリブも案外底が浅いのではないかというのが、このニュースを聞いた私の印象でした。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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