第73回:CM話をもう少し引っぱって 更新日2006/04/27
前回、サントリーの昔のCMのことを書いた後、最近私の頭の中でいくつかの懐かしのCMの音がなり続けて止まないので、思いつくままに書いてみようと思う。とにかく50歳の中年男の思い出すもののため、若い方にはまったく分からないものがほとんどだし、それを思い出して何の意味があると問われても答えようがないが、「よしなしごと」として赦していただきたい。
私の店でときどき話題になる、かなりメジャーなものとしては、『ミツワ石鹸』『バヤリースオレンジ』『渡辺のジュースの素』などがあげられる。これは45歳代以上の方々は、まず間違いなくご存知だろう。
「ワッ、ワッ、ワーッ、輪が三つ、ワッ、ワッ、ワーッ、輪が三つ、ミツワ、ミツワ、ミツワ石鹸」。三人の可愛い人形(今考えると目が大きくて日本人離れした顔をしていた)が輪を持ちながら歌って踊るコマーシャル。子ども心にも、とてもお洒落に見えた。確かアメリカテレビ映画『名犬ラッシー』の提供をしていた時流れていた気がする。この曲が三木鶏郎氏の作詞作曲によるものだと言うことを最近知った。なるほどお洒落なわけだ。
チンパンジーが芸達者にコントを繰り広げるバヤリースオレンジのコマーシャルも、多くの人の記憶に残っていると思う。みんな可愛いねと言って見ていたが、私としてはメスのチンパンジーが赤く大きなリボンをして出てきても、少しも可愛らしいという印象を持たなかった。しかも歯を剥いて笑われたときにはなぜか絶望的な気分になり、はっきり言って今でもあまり好きなCMとは言えない。
「ホホホイのホーイでもう一杯、渡辺のジュースの素です、もう一杯。憎いくらいに旨いんだ、不思議なくらいに安いんだ」とエノケンが歌う、渡辺のジュースの素。当時は粉末ジュースを水(もちろん水道水)に溶かして飲んでいた。そのままなめて口をだいだい色にしている友だちも何人かいた。
粉末ジュースと言えば、上記のものほどメジャーではないが、春日井のシトロンソーダは子どもたちの間に人気があった。「町にメロンがやってくる、シトロンソーダがやってくる。シトロン、シトロン、メロンの香り、春日井シトロンソーダ」。水で溶かすとパチパチと弾けるソーダの感触が新鮮だったのだ。
それにしても、「町にメロンがやってくる」とはすごい歌詞、今よりも数倍メロンが高級果物だったと言うことを如実にあらわしている。もちろん当時粉末ジュースを飲んでいた家庭で、メロンなどを食した子どもは皆無だっただろう。
私が好きだったコマーシャル。「なつかしい、なつかしいあのリズム。エキゾチックなあの調べ。オリエンタルの謎秘め、香るカレーの夢の味。ああ夢のひととき、即席カレー。君知るや、君知るやオリエンタルカレー」。オリエンタルカレーの宣伝カーから降りてきたテンガロンハットの女性が歌いながら、カレーをみんなに振る舞うコマーシャル。私もそのお姉さんからカレーをもらって食べたいと、強く思ったものだ。
これも後10台ほど用意し全国各地を周り、40人を越える正社員が芸人となって踊りや演奏、奇術や腹話術を披露した後即席カレーを試食してもらい、即売していたそうである。今では考えられない営業展開だ。
当時子どもだったため飲み物食べ物のコマーシャルをよく憶えているが、その他のものの中で、よくわからないなりに印象深いものもいくつかある。
ひとつはロゼット洗顔パスタのCM。色白の白子さんと色黒の黒子さん。目も口もとても大きな美人の二人の漫画シリーズ。黒子さんが肌の悩みを白子さんに相談し、白子さんがロゼット洗顔パスタを紹介するという筋立てだった。
私は小さい頃から色黒の女性が好きだったので、なぜ色黒美人の黒子さんが、真っ白顔の白子さんのようになりたいのか理解ができなかった。「今のままの方がずっといいのに」と大いに不満な思いでこのCMを見ていたものだ。ちなみに、このロゼット洗顔パスタ、発売して70年を迎える日本最初の洗顔クリームで、今でも着実に売れ続けている超が付くほどのロングセラー商品なのだそうだ。
もう一つは、大塚製薬のサラリン錠。大塚製薬と言えば、大村崑、浪花千栄子のオロナイン軟膏が有名だが、三宅邦子の宣伝していた便秘薬サラリン錠は、便秘という概念がよくわかっていなかった子ども時代でも印象深いものだった。
漫画で描かれた煙突が3本。(確か、お母さん煙突、お姉さん煙突、弟煙突だったと思う)、最初は順調に煙を出していたが、そのうちお姉さん煙突がつまってしまい苦しそうな表情を見せる。
そこで、三宅邦子の「煙突さん、苦しそうですね」の声がかかり、その後はよく憶えていないが、お姉さん煙突がサラリンを飲んだのだろう、最後は再び三本ともニコニコ元気に煙を出す。そして「サラリン、サラリン、サラサラリン。便秘にスッキリ、サラサラリン」の歌声がかかる。
このコマーシャルの説明を母親に求めたところ、「女性は何かと大変なのよ」と言う答えが返ってきて、「ふーん、そんなものなのか」と不思議と納得したものだが、何十年かたった今でも、やはり、女性は何かと大変なんだなあという思いは、あい変わらず持ち続けている。
第74回:泡も煙も消えてしまうものだけれど