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■よりみち~編集後記

 

更新日2018/10/25




海外の総領事館で自国の新聞記者が殺害され、死体も含め証拠が隠滅された事件などかつて起こったことがあっただろうか? 前代未聞の国際的な大事件が発生した。サウード家による絶対君主制の独裁国家サウジアラビアが、いま大きく揺らいでいる。

トルコ系サウジ人のジャーナリスト、ジャマル・アフマド・カショギ氏(59歳)は、サウジアラビアの主要な英字新聞などの編集長に任命された経歴を持つリベラルな近代化論者だったが、王制の厳格なイスラム法に批判的な記事が原因で強制的に辞職させられたとする報道もある。2016年12月、イギリスの新聞『インデペンデント(The Independent)』は、アメリカのトランプ大統領を批判したことが原因で、サウジの権力者が出版やテレビへの出演を禁じたと報じた。2017年の夏に渡米し、サウジの言論弾圧や隣国イエメンで続く内戦への介入について、アメリカを代表する新聞『ワシントン・ポスト(The Washington Post)』へ寄稿文を掲載するなど、サウジ政府を厳しく批判。それがサウジを実質的に支配しているムハンマド皇太子の逆鱗に触れたと言われている。

そしてその事件が起こった。事件経過は以下の通り-

2018年10月

2日、カショギ氏、トルコ、イスタンブールのサウジ総領事館に入り消息を絶つ(トルコ人女性と再婚するための手続きで訪問)。

3日、トルコが総領事館から出ていないと見解を公表、サウジ側は即座に否定。

6日、トルコが館内で殺害されたと報道。サウジ政府関係者が関与した疑いを報じる。

10日、カショギ氏の失踪前後にイスタンブール入りしたサウジ政府関係者15人の名前と顔写真が地元紙に掲載される。

15日、アメリカ、トランプ大統領が「サウジの国王も皇太子も事件を知らなかったようだ」と発言。

16日、トルコのメディアなどが館内の音声データの内容を報道。皇太子の周辺者が容疑者の中に含まれると報道。

20日、サウジが館内での死亡を発表。「総領事館にいた人物がカショギ氏とけんかになった末に死亡させた」と偶発的な事故死だったとの内容。

21日、ロイター通信は、サウジ政府高官の話として、サウジ政府に拘束されていたサウジ人の男らが「カショギ氏が大声を出したので首を絞めて殺害した」、うち一人はカショギ氏が着ていた衣服を着て総領事館の外に出て、カショギ氏が生きているようにみせる偽装工作もしていた」との内容を報道。

23日、トルコ、エルドアン大統領が捜査結果を公表。皇太子の事件への関与には言及せず。

25日、アメリカ、トランプ大統領が皇太子の関与の可能性を否定せず。皇太子が「事件を知らなかった」と言った言葉を信じたいとも話す。


ある報道では、カショギ氏にはすでにマンツーマンで動くモグラ(スパイ)が潜入していて、行動や言動のすべての情報が逐一報告されており、その情報により計画的に暗殺されたとしており、総領事館内の音声データでも、総領事館に入館間もなく拘束され瞬時に殺害されたことが分かる証拠が残っていると言われている。

アメリカとサウジとイスラエル、それに対抗するイラン、シリア、そしてロシア、そこにカタールやトルコの思惑や裏取引が蠢いているようで、恐ろしく緊迫した大事件に発展する可能性をはらんでいる。さらに、フランス、ドイツ、イギリスからは、責任の所在が明確になるまで徹底的な調査を行うようトルコに要求しており、どこまでムハンマド皇太子が事件に関与していたかが焦点となっている。

次期国王とされるサウジのトップが失脚するかどうかで、世界の政治や経済を大きく揺るがすことは避けられない。特に日本の原油輸入量の40%を占めているのがサウジであり、サウジが揺れることはそのまま日本に影響してくる大問題であり、さらにサウジへの投資プロジェクトなどに即刻影響するものであり、早急な危機管理体制を検討する必要がありそうだ。
(越)

 

 

 


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