第373回:流行り歌に寄せて No.178 「星のプリンス」「落ち葉の物語」「銀河のロマンス」〜昭和43年(1968年)
ザ・タイガースの『B面メルヘン三部作』と、私が勝手に名付けた3曲で、今でも耳にするとジーンとくるような、印象深く、愛おしいナンバーである。
もっとも、このネーミングは微妙に正確さを欠いている。3月25日リリースの『銀河のロマンス』は、最初A面として発売されたが、B面の『花の首飾り』がたいへんな人気曲になり、A、B面を入れ替えて再発売された。オリコン・チャートの上では両A面になっているようだ。
『星のプリンス』は前年の昭和42年5月5日リリースの『シーサイド・バウンド』の、『落ち葉の物語』は昭和43年1月5日リリースの『君だけに愛を』のそれぞれB面として発売されている。
3曲とも、橋本淳:作詞 すぎやまこういち:作・編曲の作品である。メルヘンと感じたその理由は、この頃のGSの曲にはビートルズの影響が強いと言われ、すぎやまこういちの作品にはそれが顕著だと言う人も多い。ほぼ同感ではあるが、私には同じ英国の生んだ、現代の吟遊詩人と呼ばれた、シンガー・ソングライターのドノヴァンの作品を彷彿させられるのである。
あの頃のザ・タイガースのレコードの、色とりどりの花に包まれたジャケットの雰囲気も合わせ、この3曲にはドノヴァンに通じる、繊細で美しいメルヘンのイメージがあると思っている。
さて、3曲の歌詞をご紹介するが、ザ・タイガースの曲には英語表記はつくものが多いので、それも併せて掲載する。
「星のプリンス」(Prince in The Heaven)
橋本淳:作詞 すぎやまこういち:作・編曲 ザ・タイガース:歌
ララランランラン ララランランラン
ランランラン ララランランラン・・・
星が素敵な 夜だから
あの娘はひとりで 泣いている
遠い国から とんできた
銀の瞳の 星のプリンス
*ぼくにかくれて 逢っている
暗い浜辺で 踊っている
あの娘を明るく てらしてる
星のようになりたい ぼくだって
星のプリンス 星のプリンス 星のプリンス*
(*~* くり返し)
「落ち葉の物語」(The story of the falling leaves)
橋本淳:作詞 すぎやまこういち:作・編曲 ザ・タイガース:歌
長い坂道の 落ち葉の丘に
やさしいあの人は 住んでいるのです
コートにつつんだ 愛のショコラーテ
温かい眼差しが 僕を待っています
*二人で見つけた 小さな秘密を
信じておくれよ
すてきな すてきな 恋の物語
冬の坂道に 星がこぼれる
美しいこころが わすれられません
ラー ララララ ラー ララララ・・・*
(*~* くり返し)
「銀河のロマンス」(Romance in the Milky Way)
橋本淳:作詞 すぎやまこういち:作・編曲 ザ・タイガース:歌
銀河にうかべた 白い小舟
あなたと訪ねた 夢のふるさと
*シルビイ・マイ・ラブ シャララララ
シルビイ・マイ・ラブ マイ・ラブ
アイ・ラブ・ユー もえるほほに
美しい 愛のくちづけ*
青いしずくは 月の涙
恋するぼくらの ため息にゆれる
シルビイ・マイ・ラブ シャララララ
シルビイ・マイ・ラブ マイ・ラブ
(*~* くり返し)
流れるような バラの香り
瞳をとじて 甘えておくれ
シルビイ・マイ・ラブ シャララララ
シルビイ・マイ・ラブ マイ・ラブ
この年の4月10日に公開、東宝と渡辺プロダクションによって製作された『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』はザ・タイガースの初主演映画である。この作品中にも、それまでのヒット曲とともに、この3曲が流されていた。
甘いタッチのSFコメディで、アンドロメダ星の王女シルビイというヒロイン役に抜擢されたのは久美かおり。劇中で沢田研一と『星のプリンス』をデュエットしている。役名でお気付きの通り『銀河のロマンス』は、この映画のために作られた曲である。
久美はザ・タイガースの映画の、一人だけのヒロインで、しかもジュリーと恋人同士という設定のため、当時は夥しい数の女性ファンの嫉妬と羨望の的になったらしい。当初は辛辣な中傷や嫌がらせを受けたようだが、そのうちにそれらの女性ファンたちにも応援される存在になっていったようだ。
ナベプロの期待のタレントで、この年の7月には『くちづけが怖い』という曲でデビューし、12月の第10回日本レコード大賞の女性部門の新人賞に輝いている。その後何枚かのシングルを出し、ザ・タイガースの映画にもヒロイン役として登場していたが、『ザ・タイガース ハーイ! ロンドン』出演後休業し、昭和45年には芸能界を引退している。
閑話休題。この『B面メルヘン三部作』を聴き始めた頃は、レコードを回して聴いていたわけではないので「B面」であることを知らなかった。私はテレビやラジオではなく、中学校の昼休みにかかる校内放送で、それらの曲を覚えていった。
もちろんそれらのA面の曲『シーサイド・バウンド』『君だけに愛を』あるいは『モナリザの微笑み』などの大ヒット曲も私も聴いていたし、校内放送でこれらがかかると女生徒らは大喜びだった。しかし、私は『落ち葉の物語』を聴いて、将来訪れるかもしれない自分の恋模様がこの曲のようであったら良いのにと、想像したりしていたのである。
-…つづく
第374回:流行り歌に寄せて No.179 「小さなスナック」~昭和43年(1968年)
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