2003年から再開した日本の鉄道全路線踏破の旅が4年目を迎えた。2005年の旅は2月の上田交通に始まり、同月の北陸の旅、5月の関西の旅、8月の箱根、中伊豆、9月の愛知万博だ。44回も書いていながら、実は6回しか旅に出ていない。1回の旅を長く書き続ける傾向が強く、夏に冬の話を書いていたり、雪がちらつく季節に残暑の話を書いていたりする。理由は簡単で、目的地が遠くなっているからだ。
2003年の旅を振り返ると、地元東京の私鉄路線や日帰りできる路線が多い。2004年になると夜行日帰りや一泊の旅が増えた。近い路線を乗り尽くしてしまい、未乗路線が遠くなっている。仕事の空き時間にぶらりと出かける、一日空いたから旅に出る、というわけには行かなくなった。旅に出るために身辺を構える必要が出てきた。泊まりがけの旅だから、時間を調整する必要があるし、旅費もかさむ。パスネットやスイカの旅から、みどりの窓口にお世話になる旅になっている。
そんな状況で旅の回数は減っている。寂しいことだけれど、せっかく遠くへ行くのだから、少しでも多くの路線に乗りたい。汽車旅日記は1路線につき1回を心がけているから、ひとつの旅を何週もかけて書き続けることになる。季節感がずれてしまう部分については、どうかご容赦頂きたい。もっとも、私としては無頓着で、旅行雑誌ではないから季節を合わせる必要もないな、と思っている。暑い夏は冬が恋しくなるし、寒い冬は夏を待ちこがれるという人も多いから、ちょうどいいじゃないか、と開き直った。
2004年末現在の乗りつぶし地図。
2005年末現在の乗りつぶし地図。
違いがわかるところは能登半島と大垣付近。
さて、2005年の旅を振り返ると、JRの新規乗車路線は約150キロ。2004年の半分になっている。既乗路線が多いので新規乗車は少ない。ただし、往復の行程を含めると、もっとも多く乗った鉄道はJRグループだ。たぶん1000キロを超えているのではないか。私鉄のほうは約567キロで、かなり数字を伸ばしている。名鉄や近鉄がこの数字に貢献している。近鉄は日本一の路線網を持つ私鉄。名鉄は第3位だ。
2005年は鉄道の過去と未来を感じる旅だった。乗車路線のうち、のと鉄道の穴水-蛸島間は廃止された。箱根の駒ヶ岳ケーブルカーも廃止。神岡鉄道は今年末に廃止が決まった。上田交通は廃止されるかもしれなかったけれど、分社化して存続するようだ。近鉄養老線は乗車当時は廃止の危機は感じなかったけれど、最近になって近鉄が第三セクターにしたいという意向を表明している。JR西日本の北陸地域の動向も気になる。新幹線開業により北陸本線が第三セクター化されると、枝葉だけをJR西日本に残留させるわけにはいかないだろう。
のと鉄道末端区間。トンネルの文字「いろは」を追った。
暗い話が続いたけれど、未来を感じる旅もあった。愛知万博のリニモやIMTSは従来の鉄道とは異なる形態だけれど、公共交通の未来を力強く感じた。JR富山港線は今年2月で廃止されるけれど、ゴールデンウィーク頃にLRTとして復活する。2004年に岐阜の路面電車が廃止されたけれど、路面電車自体は注目されている。札幌や松山では路面電車の延伸が検討されているし、京都や東京でも復活させる動きがある。大阪の堺市にもLRTの構想があって、阪堺電軌の路線の一部と統合させる案もあるらしい。鉄道貨物の復権も各地で実感できた。コンテナ列車をよく見かけたし、特殊貨車を並べた工業地帯もあった。環境への配慮やモータリゼーション依存社会の見直しが始まっている。
リニモは未来の鉄道を感じさせてくれた。
さて、2006年はどんな旅になるだろう。
まずは廃止対象となった路線、廃止が噂される路線に乗りに行きたい。現在、路線の廃止が決定した路線を列挙すると、
1・JR西日本 富山港線 2006/3/1廃止(ライトレール化)
2・北海道ちほく高原鉄道 ふるさと銀河線 2006/4/21
廃止
3・神岡鉄道 2006/12/1廃止
4・くりはら田園鉄道 2007/04/1 廃止
5・高千穂鉄道 災害運休から復旧できず会社解散予定
以上の5路線がある。このうち未乗路線は4のくりはら田園鉄道だ。この機会に仙台から宮城県北部、三陸方面にも足を伸ばしたい。
このほかにも島原鉄道や三木鉄道、桃花台新交通、秋田内陸縦貫鉄道などが廃止を視野に入れているらしい。これ以外にも地方の鉄道は一様に経営危機で、政府が主導する安全対策の費用や、古い鉄橋などの設備更新費用の負担が重く、いつ廃止論議が起こってもおかしくない状況である。島原鉄道、桃花台新交通は未乗なので、今年中に乗りたいと思う。これで九州と名古屋圏が目的地候補になった。
思い返せば高校時代、私の第一次旅行期は政府と国鉄が赤字ローカル線の廃止を進めた時期だった。あの時の旅も廃止予定線を巡る旅が多く、20年経ったいまも似たような旅を続けている。そろそろ廃止予定線巡りも終わり、気楽な汽車旅ができるかと思うけれど、そのたびに新たな廃止問題が立ち上がる。廃止予定路線巡りには独特の哀愁があって、今しかできない貴重な旅でもあるけれど、そんな心配ない旅もしたい。
廃止の話題も多いけれど、新規開業の話題もある。昨年開業したつくばエクスプレスや沖縄モノレール、未踏の山陰や四国など、行ってみたいところも多い。昨年は九州新幹線、つくばエクスプレスの開業や、東京モノレールの延伸があった。今年はゆりかもめの豊洲延伸、仙台空港鉄道、近鉄けいはんな線、大阪市営地下鉄8号線、神戸新交通延伸がある。新規開業路線は廃止時期を考慮しなくてもいいから、良い季節を選んで出かけようと思っている。
今年は何キロ乗ろう、とか、何年までに全路線を完乗しよう、などという目標は立てない。のんびりゆっくり、自分のペースで旅を楽しむつもりだ。ただし、このコラムは自分のペースで終わらず、、忙しい人のコーヒーブレイクに旅気分を提供できるよう、そして、これから出かける人の役に立つよう心がけたいと思っている。
2005年の新規乗車線区合計 JR:150.5Km 私鉄:567.6Km 累計乗車線区(達成率) JR(JNR):16,016.8Km
(70.42%) 私鉄:3,912.1Km(61.49%) |