第568回:アメリカ異人種間結婚事情
アトランタに住むヘレン叔母さん(父の妹)のところに行ってきました。ヘレン叔母さんは心臓のバイパス手術、そして難病のRHEUMATOID ARTHRITIS(RA;リューマトイド・アーソライティス:原因不明の全身性の進行性関節炎)で股関節は人工関節、膝も人工と、まるで老人病の見本市みたいな人です。
だけど、とてもエネルギーのレベルが高く、いつも陽気で行動的、元気いっぱいの81歳のお婆さんです。ヘレン叔母さんのダンナさん、ルーサーは黒人です。彼は群を抜いた知性の持ち主で、南部のエリート大学の教授を永く勤め、何冊もの著作を出版しています。南部で、黒人がこのような地位まで上るのは、今でこそ珍しくありませんが、50年前にはとても大変なこと、例外的なことでした。
私の家族、親戚にも異なる人種がいます。私の両親はコーカソイドの白人ですが、他の人種、モンゴロイド系(ウチのダンナさん)やラティーノと呼ばれているメキシコ系、最近、アフリカ系アメリカ人と呼ぶのが政治的に正しいとされている黒人、先住アメリカインディアンと結婚している例が珍しくなくなってきました。
私たちが結婚する10年ほど前には、ミズーリー州を始め、中南部の州の大半では、白人は他の人種と法的に結婚できなかったのです。アメリカの半数近くの州は、ヒットラーのアーリア人種純血キャンペーン並みに白と“色付き”は結婚できない法律が生きていたのです(1967年になってようやく合衆国政府が白人と色付き人種の結婚を禁止できない?法案を可決し、全米に通達したのです)。そんなことを考えると、この40~50年で異人種間の結婚は随分変わりました。
1963年には、異人種間、ここでは白人と白人以外(黒人、ラテン系、アジア系、アラブ系、アメリカインディアン)の結婚は3%でしたが、2015年には17%パに急上昇しています(PEW RESEARCH CENTER)。
2016年にアメリカで28万2,000組が異人種間の結婚をしています。そのうち42%に当たる17万8,000組はメキシコ、中南米のラテン系と言われる人たちで、白人と黒人との結婚は6万2,000件で11%にしかなりません。人口の比率から言って、白人、黒人の結婚はまだ非常に少ないと言ってよいでしょう。
このデータには人種だけ載っていて、男女の比率、たとえば白人男性と黒人女性はどのくらいかという数字は示されていません。
数年前、日系人の主催する新年会に顔を出したことがあります。この田舎町、郊外を含めたとしても、こんなにたくさんの日系人が住んでいたのかと驚きました。百数十人はいたでしょうか、その中で圧倒的に多かったのが“戦争花嫁”(もう相当のお婆ちゃんですが…)で、もちろんアメリカ人の方は軍人です。
若い世代と書いてしまってから、自分を基準にしてのことですが、日本人とアメリカ人とのカップルがガクンと減り、その中でも日本男児とアメリカ人女性の組み合わせは私たちの他、オランダ人女性と結婚した日本の男性がいるだけでした。
どうも、日本の男性、日本女性がとても人気があるのに比べ、アメリカで人気薄なのです。前に書いた同じ調査では、白人と結婚したアジア人は15%もいるはずなのですが、この大半はアメリカ人男性とアジア人女性のようなのです。草食系男子は肉食系女子に太刀打ちできないのでしょうか?
それにしても、このような統計は、アメリカで行われた、アメリカ人が作り上げたもので、他の要素は考慮されていません。たとえば、ユダヤ系、アングロサクソン系、アイリッシュ系、ゲルマン系、スラブ系の間での結婚はどのくらいになるのかなどは無視されています。もっとも、彼らは複雑に入り混じって混血に混血を重ねていますから、すべてを“白”で括るより他ないのでしょうけど…。スコットランド系とイタリア系の結婚データなど、作りようがないのでしょうね。
元々人類に純血人種、民族などは存在ません。もっともっと雑婚が進めば良いと思っています。犬だって雑種の方がはるかにジステンバー(犬の感染症)に罹りにくく、強いと言うではありませんか。
言ってみれば、人間は皆、父と母の混血なのですから…。
-…つづく
第569回:アメリカのマリファナ解禁事情
|