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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第556回:“偏見のない思想はスパイスを入れ忘れた料理”

更新日2018/04/05




今シーズン最後の春山スキーに行ってきました。私たちお気に入りの“モナーク”という、大陸分水嶺にあるスキー場です。このスキー場は標高が富士山より高いので、シーズンが長く、積雪量も多く、寒いので雪質もいいのです。しかし、雪質が良いということは、とても寒く、シバレルということなのです。冷え性の私など、リフトの上で凍死しそうになります。足、手の感覚が痛いのを通り越し、なくなってしまうのです。

ですが、春になると日照時間が長くなって、気持ちのよい暖かな日が多くなり、リフトに日向ぼっこ気分で乗ることができるほどになります。寒がりの私には、この春スキーが一番なのです。

このモナークスキー場はいつ行っても空いているので、まずリフト待ちはありませんし、ゲレンデも人っ子一人いないのが、気に入っている理由です。

ところが、ところがなのです。
スキー場の広大な駐車場に車を乗り入れたら、なんとすでに満杯に近く、普段使われていない隅の隅に誘導されてしまったのです。このスキー場はほとんど地元の人しか来ませんので、一体どうやって経営を成り立たせているのか、余計な心配をしたくなるほど、いつ行ってもガラガラなはずなのに、この混みようはどうなっているのでしょう、と思っていたところ、よく見ると、駐車している車の大半、ザッと見回したところ、70%くらいはテキサス・ナンバーなのです。それに大型、中型のバスが7、8台、これもすべてテキサス・ナンバーでした。何か特別なプロモーションをテキサスで展開しているのか、右も左もテキサス人ばかりで、地元勢は隅に追いやられてしまった感じなのです。

スキー靴に履き替えたり、休憩するための200人は収容できるロッジのホールに足を踏み入れ、またもやビックリ。そこが、まるでラッシュアワーの池袋駅のように超満員だったのです。しかも、声の大きいテキサス人が我が物顔で占拠していたのです。どうにも州が大きいと、声も大きくなるようなのです。私たちはトイレの脇にあるベンチに空きを見つけ、そこでスキー靴に履き替え、スキーの身支度をしたのでした。

幸い、テキサス勢は全くの初心者が大半でしたから、ロッジ近くの最初心者用のスロープに固まっていて、普通のゲレンデはガラガラでした。私たちのレベルは老人スキーですから、1時間か1時間半おきにコーヒーブレイクを挟みます。そして、ロッジに降りてきて、またビックリ。

テキサス勢は引率の世話係の叔母さん、叔父さんだけが居残り、誰もいないのですが、上のサンデッキのあるテーブル、椅子、それにダイニングルーム、ホールにも、長靴、コート、名前を書き入れた水のペットボトルが、いかにもその場所は私の、僕の席だとばかり、占有権を主張しているのです。もちろん、それらのスペースは皆で使うもので、一日占拠するスジの場所ではありません。使い終わったら、綺麗に後片付けをして、皆で使うところです。それを、引率のオジン、オバンがニラミを利かせて場所を他の誰かに取られないように見張っていたのでした。

横で耳に入ってくる会話から、彼らが教会関係のグループで, 信者の子供、青年たちのために春休みを利用して、大挙してスキーツアーを組んだことのようでした。

そのグループが引き上げた頃を見計らって、私たちはランチタイムを意識的にかなり遅らせて、ダイニングルーム行ったところ、そこはまるで豚小屋と言ったら豚に失礼になるような汚れようだったのです。床もテーブルの上も食い散らし放題、汚し放題だったのです。引率者たるデブ叔母さん、大きな声で携帯でシャベリまくっているだけで、子供たちに後始末をするようにと注意する気遣いなどは全くなく、自分が他の利用者のために、その場を整頓することなど、想像もしていないようなのです。スキー場のロッジ経営者は、テーブルにモノを置きっ放しにしたり、占有しないよう張り紙をしてあるにも拘わらず、全く無視しています。

ウチのダンナさん、「どうも、キリストさん、自分の始末をし、他人を思いやることを教えなかったみたいだな」とのたまっていました。私が恥ずかしがらなくてもいいのですが、こんなアメリカ人を集団で見るたびに、ダンナさんに対して恥ずかしい感情が湧き出てくるのを抑えることができませんでした。それに、どうして保守的なキリスト教のグループには、ああまでデブの人が多いのでしょう。失礼しました。これは全く別の問題ですね…。

ダンナさん、スロープの下で老人体操をしてくると、汚れて騒々しいダイニングルームを早々に抜け出していきました。

二人でリフトに乗った時、「オレ、あれがどんなキリスト教セクトなのか知らんけど、ともかくああやって、ガキどもにスキーを体験させるのは良いことだと思うよ。そうでなければ、あのガキどもはビデオゲームばかりして、自然に触れるチャンスがないんじゃないのかなぁ」と、普段、毛嫌いするほどキリスト教の臭いを嫌っているはずのダンナさん、テキサス勢に肯定的なこと言っていました。

私は、それにしても、信心深いであろうリーダーたち、引率の大人は、子供たちに最低限のマナーをあらかじめ教えておくべきだと思うのです。あの引率者、リーダーは、おそらく日曜日ごとに教会でアリガタイ説教をする人たちなのでしょう。とは言っても、彼ら自身に最低限のマナーもないのに、子供たちを躾けられる訳がありませんね…。 

こんなことを言い出すのは、私も口うるさいお婆さんの範疇に入ってきたからでしょうか。これでまた、テキサス人に対する偏見が確信に近づいてしまいました。

そんなことがあっても、天候にも恵まれ、最高の春スキーを楽しんできました。

-…つづく

 

 

第557回:新鮮な卵と屠畜の現状について

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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