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第510回:流行り歌に寄せて No.305 「恋する夏の日」~昭和48年(1973年)7月1日リリース

更新日2025/08/28



今回は「新三人娘」の中で、最後にデビューをした天地真理の代表曲。ドライヴ感のあるイントロから始まるこの曲は、まさに真理ちゃんブームの絶頂期に歌われた曲である。

モノマネ番組で天地真理と言えば、これを歌う人が圧倒的に多い。あまりにポピュラーでご紹介するのが憚られるほどだ。

レコードリリースの約2週間後の7月16日、1位で初登場し、そのまま引き続き1位を6週間連続保ち、10週にわたって10位以内にランクインしていた。

天地真理はこの曲で、週間オリコン1位獲得週が23週、オリコン1位獲得曲5作品(『ちいさな恋』『ひとりじゃないの』『虹をわたって』『若葉のささやき』、本曲)という当時の歴代最高記録を残している。まさに、彼女は輝いていた。

しかし、実は彼女がオリコンの週間ヒットチャートで1位を獲得した最後の曲でもあるのだ。登り切った山は、いずれ降りなければならないということか。

この年の「第24回NHK紅白歌合戦」で白いテニスウェアに白いロングブーツ姿でこの曲を歌っていた姿は、今でも憶えている。高3で大学受験勉強の追い込み時期だったが「せめて大晦日くらいは…」と言い訳をして、家族とともに観ていた。もちろん大晦日以外も、ほとんど勉強をしていなかったのだが…。


さて、この曲はテニスというスポーツを、二人のデートの場面にしたのは斬新だったと思う。
当時、テニスはお洒落で、少しだけ高級感のあるスポーツとして、若い人たちに人気があった。世界のテニス界は、コート夫人、キング夫人などが国際大会で優勝をし、ちょうどクリス・エバートが台頭してくる時期で、彼女は半ばアイドルのような存在でメディアに取り上げられていた。

また、この頃は志賀公江のコミック作品『スマッシュをきめろ!』が実写版で『コートにかける青春』として、また山本鈴美香のコミック作品『エースをねらえ!』がテレビ・アニメ化され、放映されていた。ちょうど、その数年前の『サインはV』『アタックNo.1』のバレーボールのブームの時と同じように。そのようなタイミングだったのだ。

渡辺プロの渡辺晋が、この曲の企画会議で「軽井沢のテニスコートをイメージするのか、箱根のテニスコートをイメージするのかはっきりさせろ」と担当者に迫ったとき「社長、もちろん軽井沢です」と答えたという逸話があったという。

夏の休日に、避暑地・軽井沢のそれぞれのペンションに宿泊して、テニスを楽しむ二人。当時の一般的な若者にとっては、少し届かないけれど、あこがれとしては持っている光景を、とても上手に提示している。



「恋する夏の日」 山上路夫:作詞  森田公一:作曲  馬飼野俊一:編曲  天地真理:歌


あなたを待つの テニスコート

木立の中のこる 白い朝もや

あなたは来るわ あの径から

自転車こぎ 今日も来るわ

今年の夏忘れない

心に秘めいつまでも

愛することを はじめて知った

二人の夏よ 消えないでねどうか ずっと

 

あなたが走る テニスコート

まぶしいのよ 白いシャツのあなたが

ベンチで休む 二人のため

涼しい風 吹いてくるわ

今年の夏誰よりも

私は今幸せよ

愛することを はじめて知った

二人の夏よ 消えないでねどうか ずっと

 

今年の夏美しく

心の中残るでしょう

愛することを はじめて知った

二人の夏よ 消えないでねどうか ずっと

 

前回の『春のおとずれ』に続き、山上路夫と森田公一のコンビの作品になった。海辺の街で、うれしく結婚の予感を感じながら、春の渚を歩く二人と、避暑地でテニスをしながら、愛を育もうとする二人。いろいろなシチュエーションを自在に表現することができる、やはりプロの方々である。

作詞家の山上路夫は、この二曲もそうだが、大変品性のある健やかな詞を書く人だという印象を、私は持っている。
平野愛子の『港が見える丘』『君待てども』の作詞・作曲をした東辰三が父であり、いわゆる思春期に喘息による闘病生活で、楽しい学園生活が送れなかったことなどが、何かの形で彼の作品にその影を落としているのかもわからない。

天知茂の『昭和ブルース』や、江利チエミの『酒場にて』などの作品も、暗いイメージではあるが、どこかスクっとした品を感じるのだ。昔「貴公子の山上」「野生児の沢ノ井(石坂まさをのこと、山上とは同期だった)」と先輩の作詞家たちに言われることがあったそうだが、どことなく納得できる話しである。

ただ、小さいことだが『恋する夏の日』の詞の中に、一箇所だけ時代を感じるものがある。それは「自転車こぎ 今日も来るわ」の部分。今の人たちは「自転車を漕ぐ」という言い方は、ほとんどしないだろう。だから、この箇所を聴くと、思わず微笑んでしまうのである。

自転車と言えば、当時、通称「真理ちゃん自転車」と呼ばれていた子ども自転車「ドレミまりちゃん」というのが大変流行していて、近所の女の子たちの中でも何人かが乗っていた。いや、漕いでいた。

私は、今までの女性アイドルの中で、最高の人気だったのはやはり天地真理だと主張している。それに異を唱える人たちがいると、私はこう質問することにしている。
「あなた方の言い分もごもっともですが、それでは百恵ちゃん自転車とか、聖子ちゃん自転車、あるいは今日子ちゃん自転車というものが存在しましたか?」

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
Lis. master's voice
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※2024年11月30日、「BAR Lismore」は閉店いたしました。


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