第514回:流行り歌に寄せて No.309「赤とんぼの唄」~昭和48年(1973年)3月10日リリース
そろそろ昭和48年の曲のご紹介も終盤ということで、何か大事な曲を見落としているのではないかと、いつもとは違う資料を確認していたところ、あった、ありました。
どうしてこの曲が、いつもの資料には掲載されていなかったのかは不思議なくらい、大変に話題になった曲である。よく頭を絞れば思いついたかも知れないが、記憶力がかなり希薄になっているので、やはりいろいろな資料を合わせて見比べる必要がある。昭和49年分からは、それを怠るまい。(たぶん、きっと)
そういうことで、また誠に申し訳ないが、時間を逆戻りさせることにする。この曲は、オリコンの週間ヒット・チャートで3位まで、年間でも20位にランキングされているヒット曲である。
最初にこの曲を聴いたのは、おそらくラジオからだと思うが、その時の印象は「何だか、変なお兄さんたちが出てきたものだなあ」というものだった。清水国明、原田伸郎の二人は、京都産業大学の現役の大学生ということだったが、その大学の名前は、それまで私は知らなかった。昭和40年に創設された、当時としては新興大学だったのである。(清水が法学部1期生)
「あのねのね」というグループは、この二人を中心に結成され、当初は6人ぐらいのメンバーがいた。結婚前の笑福亭鶴瓶夫妻(駿河学、玲子夫妻)もメンバーだったそうである。しかし『赤とんぼの唄』で、プロ・デビューする頃は、すでに清水、原田の二人になっていた。
デビュー・シングル『赤とんぼの唄』は、ライヴ録音ということで、二人のギターのみの弾き語りだから編曲者がいない。今回、これはいつどこの会場で録音されたものかを調べたが、それに関する資料はなかった。日頃、私が利用するのを避けているAIもわかっていないようである。
ただ、音も大変クリアで、言葉も鮮明に入っているので、明らかに初めからプロの技術者たちがレコードにするのを意識して録音したものだろう。会場の笑いも、十分に意識されている。
さだまさしの『雨やどり』など、ライヴで本邦初公開の曲をレコーディングしたということは少なくはないが、それがデビュー曲で行なわれたというのは、稀なケースだと思う。
よく聴くと、ギターのアンサンブルもカッコよく、ハーモニーも決まっていて、二人が充分な練習、準備をした上でレコーディングしたことがわかる。未だにライヴの時期も場所も公表されていないのは「ひょっとしてスタジオ録音では?」と、うがった見方もしたくなるような、大変に良い出来栄えだと思う。
「赤とんぼの唄」 清水国明:作詞 原田伸郎:作曲 あのねのね:歌
赤とんぼ
赤とんぼの羽をとったらあぶら虫
あぶら虫
あぶら虫の足をとったら柿の種
柿の種
柿の種に足をつけたらあぶら虫
あぶら虫
あぶら虫に羽をつけたら赤とんぼ
“あのねのね”
“あのねのね”の“あのね”をとったら“...のね”
“...のね”
“...のね”に“あのね”をつけたら“あのねのね”
“あのねのね”
“あのねのね”をアンネに替えたらアンネがね
アンネがね アンネがなければできちゃった
できちゃった できちゃったのは赤ん坊
赤ん坊
赤ん坊に羽をつけたら赤とんぼ
コミック・ソングとか、ナンセンス・ソングと呼ばれる部類の歌になるだろう。
前出の笑福亭鶴瓶によれば「あの唄はもともと砂川捨丸・中村春代師匠の漫才で使われていたのを、清水と原田がアレンジして売れたのです」とのことである。
その漫才コンビは、関東大震災のあった大正12年(1923年)1月に結成され、昭和46年(1971年)9月、捨丸の亡くなるひと月前まで、48年間続いた息の長いコンビだったという。あのねのねの二人は、いったいどこで彼らの歌を聴き、覚えたのだろうか。
さて「赤とんぼの唄」の歌詞は実にとぼけたものだが、羽や足を剥ぎ取られたり、くっ付けられたりと、かなりブラックの要素が散りばめられている。
「あぶら虫」とは、私たちの親の世代ではゴキブリのことをこう呼ぶ人たちが多かったので、自分もそう解釈していた。どうもそうではなく、まったく別の虫だと分かったのは、かなり最近のことである。
アンネ・フランクからとって名付けられた、今は亡き生理用品の会社名が、月経のことだというのは、あの頃は当たり前に知られていたが、今の人たちにはピンとこないかも知れない。
あのねのねには『魚屋のオッサンの唄』(『赤とんぼの唄』のB面)『でんでん虫の唄』『つくばねの唄』など、コミック・ソングが多くあるが、『雪が降っています』『嫁ぐ朝に』など、しみじみと聴かせる曲も少なくない。
また、昭和49年9月にKKベストセラーズから出版された『あのねのね 今だから愛される本』は65万部という驚異的な売れ行きを記録した。これはゴースト・ライターの存在なしに、彼ら二人が書きためたエッセーをまとめたものである。その後、多く出された「タレント本」のはしりと言われている。
彼らの出てきた頃は、人気は一過性のもので、やがていなくなるだろうと予測していた人も多かった。しかし、今でも司会業や、清水はアウトドア、原田はゴルフなどの番組に出演して活躍している、大変息の長いタレントである。
一昨年、デビュー50年のライヴを日本各地で開催して、多くのファンが集まった中で、爆笑トークを交えながらヒット曲の数々を披露し、大成功裡に終わった。
第515回:流行り歌に寄せて No.310「同棲時代」~昭和48年(1973年)2月21日リリース
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