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第505回:流行り歌に寄せて No.300 「てんとう虫のサンバ」~昭和48年(1973年)7月5日リリース

更新日2025/06/19



てんとう虫というものを、かなり長い間見ていない。もう、何十年になるかもしれない。
私が小さい頃、草っ原には数多くいた。それを摘んで、立てた手の人差し指の第二関節あたりに止まらせて、少しずつ登っていき、パッと羽を広げて飛び立つ姿を、何度も見ていた。

やはり、もっともポピュラーなナナホシテントウと遊ぶことが多かったと思う。あと判別できると言えばニジュウヤホシテントウくらいで、その他の種類はよくわからなかった。

ナナホシは、アブラムシなどを食べてくれる益虫で、ニジュウヤホシは、野菜などを食い荒らす害虫だった。そう聞いていたからだろう、見た目もナナホシは愛らしく、ニジュウヤホシは憎らしく感じた。子供とは言え、そんな単純な思考しか持てなかったことが、今では情けなく思う。

この歌の中の、赤はナナホシ、黄色はニジュウヤホシということになるのだろうが、青いてんとう虫というのは見た記憶がない。今回調べたところ、日本には青い種類のものはなく、オセアニア地方に行かなければ、その姿を見られないそうだ。


さて、この『てんとう虫のサンバ』は、ちょうど私たちの世代というか、昭和50年代の結婚式で、新婦側の友人のグループたちによって、よく歌われる曲だった。

「私たち、仲良しグループの中で、一番奥手だとみんなに思われていた◯子が、実はこんなに素敵な彼氏を誰よりも早く捕まえてしまうなんて、何だかずるいと思います。でも、やっぱり幸せになってもらいたいから、この歌を歌います。◯子、本当におめでとう!」などとコメントしてから「あなたと私が…」と、みんなで半泣きしながら歌い出す場面がどれだけあったことだろう。

最近では、どのような曲が歌われているのだろうか。GoogleのAIに寄れば、中島みゆきの『糸』、嵐の『One Love』、Superflyの『愛をこめて花束を』などがあげられているが、中島みゆきの歌を結婚式で歌うことなど、私たちの時代では完全に御法度だった。ウエディング・ソングにふさわしい曲を彼女が作るとは、未だに信じられない思いである。



「てんとう虫のサンバ」 さいとう大三:作詞  馬飼野俊一:作・編曲  チェリッシュ:歌


あなたと私が 夢の国

森の小さな教会で

結婚式をあげました

照れてるあなたに 虫達が

接吻(くちづけ)せよとはやしたて

そっとあなたはくれました

赤 青 黄色の衣装をつけた

てんとう虫が しゃしゃり出て

サンバにあわせて 踊りだす

愛する二人に 鳥達も

赤いリボンの花かごと

愛の接吻(くちづけ)くれました

 

今日は楽しい 夢の国

森のおまつり舞踏会

白いドレスで出掛けます

幸せ誓った おいわいに

森の可愛い虫達が

楽器を持って集まった

赤 青 黄色の衣装をつけた

てんとう虫が しゃしゃり出て

サンバにあわせて 踊りだす

まあるいまあるいお月様

愛の光でほほえんで

森の月夜はふけました

 

赤 青 黄色の衣装をつけた

てんとう虫が しゃしゃり出て

サンバにあわせて 踊りだす

まあるいまあるいお月様

愛の光でほほえんで

森の月夜はふけました

 

この曲は、その年に出されたチェリッシュのアルバム『春のロマンス』の収録曲だった。
この曲が出される1年ほど前、まだプロの作詞家でなかったさいとう大三は、ふとしたきっかけで、友人に白金のスナックで馬飼野俊一を紹介された。その後、馬飼野のもとへ、さいとうは自分の書きためた詞を見せ、指導を受けるようになる。

その中の一つが『てんとう虫のサンバ』の元となった詞だった。アルバム『春のロマンス』のレコーディング・ディレクターの高橋隆から、アルバムに森山加代子の大ヒット曲『白い蝶のサンバ』のような曲を入れたいという依頼を受けた馬飼野は、さいとうの詞に曲をつけて『てんとう虫のサンバ』を作り上げ提供した。

本来は、アルバム収録曲の一曲に過ぎなかった『てんとう虫のサンバ』は、その後大阪 ABCラジオのディレクターがラジオで流したところ、たいへんな反響があり、リクエストが殺到した。それにより急遽レコード会社が会議を開き、シングル・カットすることが決まったのだという。

チェリッシュの7枚目のシングルとして発売された同曲は、3枚目のシングル『ひまわりの小径』に次ぐ週間チャートとしては2番目のヒットとなったが、累計の売り上げとしては、このデュオの最大ヒット曲となった。

そして、昭和48年(1973年)の『第24回NHK紅白歌合戦』にこの曲で初出場を果たしたのである。因みに、メイン・ヴォーカルが松井悦子だったため、紅組としての出場だった。

作詞家のさいとう大三はこの曲でデビューすることができた。そして、その翌年の昭和49年、レコード大賞歌唱賞を受賞した西城秀樹の『傷だらけのローラ』(馬飼野康二:作・編曲)の作詞でその名を広める。

同年には、リンリン・ランランの『恋のインディアン人形』(筒美京平:作・編曲)、そしてルネ・シマールの『ミドリ色の屋根』(村井邦彦:作曲 馬飼野康二:編曲)の詞も手掛けた。(書いているだけで、懐かしさが込み上げてくる)

演歌の世界では、竜鉄也に『紬の女』を提供し、そして、その竜と組んで、美空ひばりの『裏町酒場』(京建輔:編曲)というヒット曲を生み出した。最近は、田川寿美に多くの詞を提供しているようだ。


さて、友だちの結婚式で『てんとう虫のサンバ』を歌った女性たちは、今では古稀を過ぎたあたりになっているのだろうか。早い人は、そろそろ孫の結婚式に呼ばれたりしているのかも知れない。時の流れは早過ぎる、とため息をついたところで、詮ないことなのだが…。

 

 

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
Lis. master's voice
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※2024年11月30日、「BAR Lismore」は閉店いたしました。


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