■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』



第49回:マレーシアの避暑地、キャメロンハイランド
第48回:モロッコの女性たち
第47回:インドネシア、素朴なロンボク島
第46回:ルーマニアのドタバタ劇
第45回:エストニアの日本料理店
第44回:ギリシア、アテネのさんざんな一日
第43回:ロシア、モスクワ空港警察官の小遣い稼ぎ
第42回:メキシコシティのナイフ強盗
第41回:オーストラリア、ゴールドコーストのツアーガイド裏話
第40回:インド、ダージリンのイメージと現実
第39回:中国、大連の国家安全局員
第38回:キューバ、ドルの威力
第37回:チリ、イースター島の日本伝説
第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子






■更新予定日:毎週木曜日

第50回:タイ、カオサンとパタヤの関係

更新日2003/03/06


バンコクの“カオサン”が、バックパッカーの一大拠点となってからすでに10年以上が過ぎた。この間、カオサンも色々な変貌を遂げてきた。

昔から欧米人のパッカーが集まっていたものの、静かな風情がまだまだ残っていた。それが今では、メインロードは喧騒に包まれ、タイ人の若者が見学に訪れるほどだ。 周辺エリアも年々、賑やかに様変わりしている。

「カオサンは初めて訪れた時はいいけれど、何度もくると嫌になるよ。いろいろ周辺国を回ったりして疲れている時は、カオサンにだけは滞在したくないよね。長居無用といった感じかな…」
といった感想を口々に話すバックパッカーたちも多くいる。カオサンの宿泊費も、他の地方の町に比べると割高だったりもする。

そんなある日、バンコク・ベトナム大使館の査証発給が“共産党大会”のために一時停止になった場面に出くわした。“日本人の場合は通常より数倍の査証料金を払えば発行できる”という、いい加減なものだった。

ただ、理不尽なお金を払うのもばかばかしいので、共産党大会が終わるまでの間、しばらく休息することにしたものの、カオサンに滞在するのは苦痛になっていた。

「パスポートを預けてもらえれば、ベトナム査証取っておくよ。共産党大会はあと数日で終わるけれど、ベトナム査証の申請から発給まで5日かかるし、1週間もここにいるのは嫌でしょ。よかったらパタヤに行ってきたら…」
国際結婚し、カオサンで旅行会社を経営している日本人のこんな言葉から、パタヤに行ってみることにした。

“パタヤ”というと一昔前までは有名リゾート地だ。しかし、今ではプーケットなどに観光客は移行してしまった。バスで4時間ほどで行けることから、旅の疲れを癒したいバックパッカーたちの穴場的休息地となっていた。

実際、パタヤを訪れると海は汚いし、他の観光地に比べると見劣りがする。しかし宿泊環境は群を抜いていた。エアコン付きのきれいなミニホテルが250バーツ前後で見つかり、欧米人パッカーの多くは長期滞在用のミニホテルに宿泊していた。長期滞在ゲスト用に週料金、月料金も設定されている。

カオサンの日本人に紹介されたミニホテルは350バーツで少し高かったものの、広々とした部屋とキングサイズベッド、プール付き、衛星テレビ付きとさらに豪華だった。 もっと安いゲストハウスもあるものの、安くて豪華なミニホテルが多い環境のために、安宿に宿泊しているパッカーたちは少ない。

「僕もカオサンでの噂を聞いて、日本に帰る前に体調を整えたくてここにきました。安宿に宿泊する毎日でしたから…。カオサンはエアコン付きの狭くて汚い部屋が400バーツ以上しますから、それに比べると安くて豪華、まるで天国ですね。これからタイに来る時はここを拠点にしますよ」とアジアを旅してきたパッカー青年が話してくれた。

街を歩くと日本人パッカーたちともすれ違うものの、圧倒的に欧米人の数が多い。しかしカオサンと違って、騒ぎ踊る欧米人の姿はなかった…。

 

→ 第51回:パキスタンの女性たち