■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』



第47回:インドネシア、素朴なロンボク島
第46回:ルーマニアのドタバタ劇
第45回:エストニアの日本料理店
第44回:ギリシア、アテネのさんざんな一日
第43回:ロシア、モスクワ空港警察官の小遣い稼ぎ
第42回:メキシコシティのナイフ強盗
第41回:オーストラリア、ゴールドコーストのツアーガイド裏話
第40回:インド、ダージリンのイメージと現実
第39回:中国、大連の国家安全局員
第38回:キューバ、ドルの威力
第37回:チリ、イースター島の日本伝説
第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子

第34回:ハンガリー、温泉にはまるツーリストたち
第33回:コスタリカ、ニ人の17歳の女の子




■更新予定日:毎週木曜日

第48回:モロッコの女性たち

更新日2003/02/20


スペインからフェリーで気軽に行けるアフリカのモロッコ。アジアレベルの物価の安さと冒険ロマンをかきたてるような不思議なイメージのためか、ヨーロッパをはじめ世界各国からの観光客で溢れかえっている。

しかし、船が到着する港町タンジェ(Tanger)では、船の到着と共に始まる客引きの凄まじさに嫌気がさして、そのままUターンして戻ってしまう人もいる。港での客引きは、観光客の減少という結果をもたらすほど悪名高かった。

そんな状況を放置できなくなったためか、政府によって客引き行為が禁止された。最近では、以前に比べるとだいぶ静かになったそうだ。 と言っても、街に入れば、相変わらず客引き行為は凄まじい。

また、イスラム国であるモロッコは戒律が厳しい男社会だ。街を歩く女性たちは、一様にチャドル(頭からすっぽり被るベール)で包まれ、そのエキゾチックな顔立ちを見る機会は多くない。ただモロッコの場合は、同じように戒律が厳しい中東アラブ諸国と比べて大きな違いがあった。

地方に行って街や村をぶらぶら歩いていると、チャドルに包まれた女性たちから声をかけられる場面がたびたびあるのだ。周りに人がいないのを確認すると、顔を隠しているチャドルを外し、にこやかな笑顔を現わしてくる。

「こんにちは、どこから来たの」
「日本から…。ところで、チャドルを外して外国人と話しても大丈夫なの?」
「人に見られなければ大丈夫よ。モロッコの女の子たちは、みんな外国人と友達になりたがっているの。もちろん私もそうよ」
「でも、何故…」
「そうねぇ、この国は男社会だから、若い女性の多くはこの国を出たがっているのよ。それには外国人と知り合いになるのが一番だし、みんな本音では外国人との結婚を望んでいるのよ。だから英語やフランス語を勉強している子も多いわ」

「日本人の人気はどうなの…」
「一番の人気はスペイン人かな…。なんといっても言葉が通じるでしょ。日本人はお金持ちで、電気製品や車が有名。でもモロッコにはあまり日本人は多くないから、ポピュラーではないわね。でも私は日本に興味あるわ。よかったら今から家に遊びに来ない。家では外と違って自由なの」

そう誘われて、お宅にお邪魔すると、両親や兄弟たちが歓迎してくれた。家に入ると、この女の子はチャドルを外し、自分の部屋へ戻ると、ジーパンとTシャツ姿で現れた。その変りようにびっくりしていると、お母さんが説明してくれた。
「モロッコは、西洋化が進んでいるのよ。特に家の中ではね。外ではイスラムの戒律を守っているわよ」

それから数年、突然モロッコの女の子から便りが届いた。モロッコを訪れていたイギリス人と結婚したので、もしイギリスに来るときには立ち寄って欲しいという内容が、そこには書かれていた。

 

→ 第49回:マレーシアの避暑地、キャメロンハイランド