■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』



第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子

第34回:ハンガリー、温泉にはまるツーリストたち
第33回:コスタリカ、ニ人の17歳の女の子
第32回:グァテマラ、アンティグアの主産業はスペイン語学校
第31回:アルゼンチン最南端・フエゴ島の日本人
第30回:カンボジア、この国はいつたい誰の国?
第29回:ブラジルの日系共同体農場
第28回:マケドニア模様
第27回:マケドニア、国際列車にて…
第26回:ベトナム、これってボランティア?
第25回:ネパールのボランティア





■更新予定日:毎週木曜日

第37回: チリ、イースター島の日本伝説

更新日2002/11/28


チリの首都サンチャゴから飛行機で数時間、太平洋上にポツリと浮かぶ孤島・イースター島は、モアイ像で有名な島。この島を訪れる日本人は二分されている。一つは、中南米諸国を廻る観光客が立ち寄るケース。もう一つは、太平洋航空路線を利用して、日本から直接イースター島をめざすパックツアーの客たちだ。

日本人観光客が多いためか、島は親日ムードでいっぱい。島の水産市場では、日本人に人気の"ウニ"をはじめ、溢れる魚介類には日本語の値札がつけられている。市場の人々の中にはカタコトの日本語を話す人も多い。

「私たちは日本人が大好き。日本人は、この島の人たちと同じぐらい魚が大好きだから、とても親近感があるのよ。この島には日本伝説もあるし…」
「日本伝説…?」という言葉に興味が湧いて、商売抜きで試食をすすめるおばさんに問い直してみる。

「この島の住人の中には、先祖が日本人だという人もいるのよ。日本人が大昔に船でこの島にやってきたという言い伝えがあるの。日本の古代土器のようなものも出土しているわ。だから、この島の人たちは日本人が大好きなのよ。もちろん、いろいろこの島でお金を使ってくれるということもあるけど、それだけじゃないわ」

そんな話を聞いた後で島をブラブラしていると、東洋人っぽい顔立ちの人がいるのに気がつく。イースター島の人々はスペイン系、インディオ系、ポリネシア系、そして複雑に混じり合った混血系といろいろなものの、東洋の血が混ざっているのでは……と思うような人もいた。

宿泊しているゲストハウスの女主人にこのことを話すと、先祖が日本人だと言っている人を呼んでくれるという。イースター島のゲストハウスは5ドル前後から豊富にあって、長期滞在している日本人バックパッカーたちも多い。宿泊している日本人たちも興味津々。

やって来たのは、黒髪の中年女性。
「先祖が日本人というのは、先祖代々の言い伝えなの。私以外にもいるわよ。確かなことや事実は分からないわ。でも、私は日本人の末裔であることを誇りに思っているの。何故って、ソニーやスズキ、トヨタ…といった日本企業はとても有名でしょ。それだけでも鼻が高いわ」

いろいろ話を聞いていると、この島の人たちが日本人を好きなのには、もうひとつ別の理由があった。
「日本人は犬がとても好き。私たちも犬は家族と思っているから、犬を可愛がる日本人には好意的なの。イースター島の犬たちは、あまり首輪をつけていないでしょ。といっても野良犬ではなくて、自然のままに放し飼いにされているの。島の人たちは犬を見ただけで、どこの家の犬かすぐに分かるのよ」

イースター島と日本の距離がもっと近ければ、多くの日本人が溢れる定番観光地になっていることは間違いない。
人も生活もあるがままの自然のスタイル。観光で成り立つ島でありながら、観光地臭さがあまりないのが一番の魅力だった・・・。

 

→ 第38回:キューバ、ドルの威力