■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』



第48回:モロッコの女性たち
第47回:インドネシア、素朴なロンボク島
第46回:ルーマニアのドタバタ劇
第45回:エストニアの日本料理店
第44回:ギリシア、アテネのさんざんな一日
第43回:ロシア、モスクワ空港警察官の小遣い稼ぎ
第42回:メキシコシティのナイフ強盗
第41回:オーストラリア、ゴールドコーストのツアーガイド裏話
第40回:インド、ダージリンのイメージと現実
第39回:中国、大連の国家安全局員
第38回:キューバ、ドルの威力
第37回:チリ、イースター島の日本伝説
第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子

第34回:ハンガリー、温泉にはまるツーリストたち




■更新予定日:毎週木曜日

第49回:マレーシアの避暑地、キャメロンハイランド

更新日2003/02/27


マレーシアはとにかく暑い国である。隣国のタイやシンガポールも暑いけれど、首都クアラルンプールの陽射しは特に強いような気がした。そんなこともあって、安宿の集まるチャイナタウンのはずれにあるバスターミナルから、避暑地で有名なキャメロンハイランドへ向かうことにした。

マレーシアの避暑地は、他にもクアラルンプール周辺に3ヶ所ほどある。しかし、観光客向けに計画的に開発された避暑地のために、大規模ホテルやカジノ、高級別荘、アミューズメント施設が建ち並ぶ人工的なもので、周辺に住んでいる人たちはあまりいない。

キャメロンハイランドの歴史は古く、統治していたイギリス人がその暑さに音を上げ、自分たちのための避暑地を高原地帯に作ったのがそのはじまり。紅茶の栽培を促進し、しゃれた英国風の家などを建設整備したために、街並みの一部は英国の田舎といった感じがしないでもない。

キャメロンハイランドの楽しみ方にトレッキングがある。いくつものトレッキングコースによって自然豊かな光景を楽しむことができ、山歩きの好きな人には堪えられない。

もう一つの楽しみは、山に暮らす原住民との出会い。ほとんど裸でこの地域に暮らす山岳民族たちは、人なつっこい。
「遠くから来たんだね。そんなにこの土地が珍しいのか? せっかくだからお茶でも飲んでいきなさい」

山奥で出会った山岳民族たちは、素朴な笑顔で迎えてくれた。小屋のような家に暮らし、文明とは無縁の伝統的な暮らしを守り続けている。ただ"タバコ"には興味津々で、彼らの手造りタバコと交換してみた。差し出したタバコを美味しそうにふかす姿が印象的だった。

「いろんな国の人がここに来て、いろんな話をしていくけど、私たちは街の文化には興味ないんだよ。今の暮らしが一番。部族の若者の中には街へ降りていく者もいるけど、結局この土地に帰ってくるのさ…」

また、キャメロンハイランドには、外国人向けの安いゲストハウスが多く物価も安い。1泊300円前後のために、欧米人バックパッカーたちが長期滞在している。

日本人はというと、パッカーたちもやってくるものの、中高年のトレッキング愛好者たちの姿が一般的だ。お洒落なホテルに泊り、名物のローストビーフを食し、一通りトレッキングや紅茶栽培などの観光コースを楽しむと帰ってしまう。

「俺はタイから来たんだ。タイには避暑地はないから、ここはまるで別天地だね。暑さには弱いし、山を降りるのが嫌になっちゃうよ。ところで、日本人はなんで長期滞在しないんだ? 日本人を見ていると、旅の楽しみ方が自分たちとは違うように思えるよ。」
こう話すのはイギリス人の若者。

「俺は生活感覚で日常的な暮らしを楽しみたいんだ。日本人はそれとは正反対。非日常的なものを求めているみたいだね。日本人が忙しいというのはとても有名だけれど、せっかくだからもっと長くゆっくり滞在すればいいのに…」
彼は、 気温20度前後の環境と物価の安さが気に入り、この地に数ヶ月滞在する予定だという。

 

→ 第50回:タイ、カオサンとパタヤの関係