第415回:うんぺいとおもちゃ色の気動車 - 弘南鉄道弘南線2 -
駅前に立ち、辺りを見渡す。バスロータリーの向こうの建物に「黒石線検修所」と書かれている。弘南鉄道の黒石線が名残はあれくらいだ。黒石線はもともと国鉄の赤字ローカル線を引き取った路線で、結局は赤字で廃線になった。私は国鉄時代の1983年に乗ったけれど、この風景に見覚えがない。もっとも、その時の記憶が薄れているし、なにより国鉄の黒石駅はここではなかった。
雨上がりの黒石駅
国鉄黒石線が廃止された時、弘南鉄道は国鉄から線路を引いて、こちらの黒石駅構内につないだという。ネットの地図と航空写真を見ると、弘南鉄道の黒石駅から北西へ廃線跡のような筋が見える。その筋をたどっていくと、途中で細い道路になり、やがてJR川部駅に到達する。これが国鉄黒石線。かつて私が乗った線路である。国鉄黒石駅は弘南鉄道黒石駅の北隣にあったようだ。現在は葬祭場になっている。
建物に黒石線の表記が残る
あのとき、国鉄黒石線に乗ったなら、弘南鉄道黒石線で弘前に出ればよかった。そうしなかった理由は、まず廃止される国鉄ローカル線に乗ろうと思っていたからだ。もうひとつ。私鉄に乗るオカネがなかった。当時の私は高校生である。周遊券を買うだけで精一杯だった。
そうだ。帰りは国鉄黒石線のルートを走るバスに乗ってみようか、と、バスの時刻を調べてみた。弘南鉄道黒石線が廃止されるとき、弘南バスが代行バスを設定したはずだ。その路線はたしかにあったけど、一日5本。私たちが黒石に着く直前に4本目が出発していた。次の最終は17時40分。これを待つくらいなら弘南線で戻ったほうが早い。
国鉄黒石駅はメモリアルホールになっていた
弘南鉄道の黒石駅はスーパーマーケットが併設されている。店内をめぐり、パンコーナーでランチパックに似た「フレッシュランチ」を買った。ランチパックコレクターにはよく知られた青森限定品。イギリストースト風とツナサラダ。明日の朝飯用にする。
スーパーを出て、駅の裏口を出てみた。向かいに和菓子屋があり、「津軽名物 うんぺい」という貼り紙がある。うんぺいとはなんぞや、と店内に踏み入れた。糖尿病の治療中だから、本当は和菓子屋など鬼門である。しかし好奇心が勝ってしまった。奥から店員さんが現れる。
「うんぺい」は、こちらではよく食べられているお菓子だそうだ。もち米と砂糖を練り合わせた郷土菓子、と説明書きがある。正月やお祭りのもてなしにも使われるという。スライスしたかまぼこのようで、緑と水色に着色されている。なるほど、いろんな色があれば賑やかだろう。皿に二つしかなかったので、両方買ってみた。
郷土菓子「うんぺい」
こちらでは知られたお菓子、というなら、スーパーにもあるだろう。もう一度店内を探すと、パンコーナーの隣の棚にあった。こちらは白と薄いピンク色。こちらも買う。食べ比べである。M氏に半分食べてもらおうと思う。
スーパーの店内でM氏と合流し、帰りの電車に乗った。さっそく件の包みを開く。全部食べてみたいので、4つのうんぺいをちぎって半分渡した。なるほど……これは関東でいうところの「すあま」である。優しい甘さで、すあまと違うところは、砂糖の粒の食感がある。シャリシャリと楽しい噛みごたえだ。しかしM氏はふた口食べて、「もういいよ」と言った。食べ物には一家言ある人である。もっとも「チーズとトマトは嫌いだがピザは好き」という人でもある。難しい。
帰りの電車で確認したいことがあった。田舎館駅の先にある3両のディーゼルカーだ。携帯端末で調べたところ、かつて弘南鉄道黒石線で運用されたディーゼルカーだという。1両は国鉄時代に譲り受けたキハ22形。2両は秋田の小坂製錬から譲り受けた2100形。私が乗ったとしたらキハ22のほうだ。しかし、2100形は小坂製錬時代に乗ったかもしれない。縁が有りそうでなさそうで。しかし、いまや赤・青・黄に塗られ、幼児玩具のような姿である。どれがどれだかわからない。
黒石線で使われていたディーゼルカー
このディーゼルカーに遮られた向こう側に「道の駅いなかだて 弥生の里」があり、大きな人工池がある。その池をGoogle
Mapの衛星写真で見ると世界地図になっている。車窓からは確認できないし、淵からでは気づかないかもしれない。付近には博物館もあるようで、時間があれば立ち寄ってみたかった。ここ田舎館村は田んぼアートも盛んだという。見頃は10月。覚えておこう。
世界地図の池:大きな地図で見る
晴天が続き、遠くに岩木山が見えた。平賀駅の凸型電機を見る頃には暗くなっていた。弘前で乗り替えた奥羽本線の車窓は、夕日に染まった。新青森の接続は10分。駅弁を買って慌ただしく新幹線電車に乗り込む。新青森
- 八戸間の景色を見たかったけれど、日没後の明るさは長持ちしなかった。私とM氏の最後の見物は、盛岡駅での小町との連結作業だった。
岩木山が見えた
奥羽線で日没……間に合わなかった
あとは駅弁を食べるだけ。私は伯養軒のとりめし。M氏も伯養軒で、しゃけいくらの釜めし。M氏は満足そうである。私の鶏飯も美味かった。五能線の不通区間が残念だったけれど、まずまずの旅であった。
最終ひとつ前の新幹線で帰京
鶏飯弁当の旨さはゆるぎない
2011年09月06-07日の新規乗車線区
JR:249.8Km
私鉄: 30.7Km
累計乗車線区(達成率)
JR(JNR):18,669.9Km (82.95%)
私鉄: 5,717.6km (81.32%)
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