■めだかのスイスイあまぞん日記~~ゆったり南米ブラジル暮らし

夏川めだか
(なつかわ・めだか)


仙台市広瀬川にて誕生。その後利根川、井の頭公園の池、ダブリンのギネスビール、多摩の浅川などを転々とし、さらなる新天地を求めて、ついに世界第一の流域を誇るアマゾン川へ流れ着く。



第1回:アマゾンでジャングル暮らし?
第2回:こんなとこに住んでいます。
第3回:ゆるゆるモードにはまる。
第4回:「おんな」を満喫!
ブラジル人女性。

第5回:漢字が流行ってます。
第6回:買い物もひと苦労?
第7回:選挙もお祭りなのね
第8回:アマゾンのサムライたち
第9回:市民の足は爆走バス
第10回:こんなものを食べてます-その1
第11回:音楽と騒音の境界線?
第12回:あやしいポルトガル語講座
第13回:さらにのんびり郊外暮らし
第14回:アマゾンのオタクな人びと
第15回:こんなものを食べてます-その2
第16回:子どもの共和国―その1
そもそもの始まり

第17回:子どもの共和国―その2
大切な居場所

第18回:ブラジル話あらかると

■更新予定日:隔週木曜日

第19回:子どもの共和国―その3:年に1度の大廃品回収

更新日2005/08/25


こんにちは、めだかです。

毎年8月の最終日曜日はEMAUS最大のイベント"Grande Coleta"(グランヂコレッタ)が開かれる日だ。この日は数千人の市民ボランティアと共に数十台のトラックに分乗してベレン市中を走り回り、一般家庭からあらゆる不用品・廃品を集めるのだ。これを修理してリサイクル品として販売した売上がEMAUS運営の主要財源となるのである。また、EMAUSの活動への理解を深め、子どもたちを取り巻く厳しい状況についての意識を高めてもらうことも大きな目的になっている。

炎天下の中、1日中廃品回収に駆けずり回るなんて大変そうに思えるかもしれないけれど、実はこれがとても楽しい。去年初めて参加してすっかりハマり、今年ももちろん参加するぞーと息巻いていたのだけど、なんと諸般の事情により(主に財政上の問題)今年は開催されないことになってしまった。がっかり。ということで、去年の話だけれど「グランヂコレッタ」のことを報告したい。

当日の朝、集合場所の公園に向かう市バスに乗ると早速おそろいのTシャツを着た人々がちらほら見える。お楽しみの第一弾は毎年デザインが変わるボランティアスタッフ用のTシャツ。イラストもかわいらしく、何より知らない人間同士でも同じTシャツを着ているだけで連帯感みたいのが湧いてきて、始まる前からなんだかワクワク気分。

まだ集合時刻30分前だというのに公園には同じTシャツ姿の人々が続々と集まってきていた。そしてその周りの道にはずら~っと並んだトラックの列。地元企業提供の大型トラックから個人所有の小・中型トラックまで、その数なんと60台以上。これは壮観だ。ちょっと立ち話をしたご夫婦は空港に荷物を運ぶ仕事をしていて、毎年自家用トラックと共に参加しているとニコニコ顔で言っていた。

例によって段取りはなかなかスムーズとは言えず、公園はすごい数の人でごった返している。スタッフがマイクでトラックの番号を読み上げ、それを聞いた人々がわらわらと集まるんだけど、トラックが番号順に並んでいるわけでもなく、自分のトラックを探すのも一苦労。フロントガラスに貼り付ける番号札などもその場で書いたりしてるからいちいち時間がかかる。でも、まぁ、そんなことは誰も気にせず、トラックを風船や旗で飾ったり、爆竹上げたり、歌ったり踊ったりでお祭り気分。

集合は7時だったが、9時前になってやっと準備ができたトラックから出発。それぞれクラクションや鐘を鳴らし、歓声を上げながら出て行く。ちなみにワタシが乗ることになったのはかなり年季の入った幌なしトラックで、底の板に数ヵ所穴が開いていて車輪の軸が見える。ひー。

いつもはバスで通る道を、青空の下、さわやかな風を受けながら快適に疾走。でも荷台の囲いにしがみついた状態なのでスピードを出されると少々怖い。よく考えるとけっこう危険な乗り方をしていると思うんだけど、すれ違うパトカーの警官も手を振ってくれるくらいだから道交法とかそんなうるさいことは言いっこなしなのかな。

一緒になったメンバー13人はほとんど若者ばかりで、最初から雄叫びを上げて盛り上がっている。とにかく明るくてノリがいい。ワタシだけが初対面みたいだったけど、そこはもうすぐ友だちになれるブラジル人なので、あっという間に仲間に入れてもらった。中でも元気なニ人の男の子はいろんな歌をずっと楽しそうに歌っていた。

割り当てられた区域に到着し、早速トラックを降りて戸別訪問開始。EMAUSの活動紹介のチラシを手にベルを鳴らし(ないところではもちろん手を叩く)、家の人が出てきたら「EMAUSですけど、何か不用なものはありませんか」と尋ねる。もう数十年続いている年中行事だし、数週間前からテレビCMも流しているので、最初から用意しておいてくれる家が多い。


家庭で不用になったエアロバイクをトラックに積み込む。

玄関先で渡される以外に中に入って運び出してと言われることもある。これがまた面白かった。だってふだんは知り合いでもない家に入れる機会なんてないでしょ。狭い間口の割に妙に奥行のある家、ガタピシするエレベーターで上る眺めのいいマンション、あるいは蔦の絡まる高い塀に囲まれた立派な家にも入った。不用品の置いてある奥の部屋に行くまでに家の中もちらっと見られるし、一般家庭のお宅訪問という感じで興味深い。

廃品として出してくれるのは、テレビ、ステレオ、冷蔵庫、ガス台、棚、イス、机、古着、おもちゃ、雑誌、靴、etc...。それを受け取る先からどんどんトラックに積み上げ、じりじりと進んで行く。トラックが満杯になるといったんEMAUSに戻る。EMAUSの門の前は戦利品(?)満載のトラックが列をなしている。敷地内では待機している人たちが最初は紙類、次に家具類、電化製品、という具合にどんどんトラックから荷物を受け取ってくれ、巨大倉庫に収めていく。

1回目の回収が終わった時すでに昼過ぎだったけどそのまま2回目へ。お腹も空いてさすがにくたびれてきた。そんな時うれしいのが訪問先での差し入れ。これがお楽しみの第二弾。中庭にジュースやお菓子を用意していてくれたり、「ご苦労さま」とペットボトルとクラッカーを渡してくれたりする。中でも一番うれしかったのは、ちょうど誕生パーティの最中というお宅で、バットマンの絵入りバースデーケーキをふるまってもらったこと。なんて親切なんでしょうとみんなで感激しつついただいた。


同乗のメンバーたち。
左端の彼が持っているのももちろん回収品。

2回目から戻ったら2時半を回っていた。やっとランチだ。スタッフの作ってくれたひき肉入りサンドとジュースで一息、ふぅ。そして3時過ぎ、3回目に出発。雲行きが怪しいなぁと思ってたら案の定降り出した。けっこう激しい雨だ。でも傘もないし、雨をものともせず突撃。さっきまでは汗だくになるほど暑かったのに、雨でずいぶん涼しくなる。全身ずぶぬれ状態だけど、ずーっと歌って笑ってホントに陽気。5時過ぎにEMAUSに戻り、回収作業は終了。

その後はグループごとにミーティングが開かれ、簡単な総括を行なった。みんな初参加だったらしいけれど、とてもいい経験ができた、ぜひ来年も参加したいということだった(もちろんワタシも)。みんなとは最後に記念撮影をして、電話番号の交換をして別れた。いいメンバーに恵まれたことにも感謝。

肉体的にはかなりハードだったけど、EMAUSがベレンの市民に支えられていることを肌で知ることができた貴重な体験だった。こうやって周りの社会も巻き込んで、しかも楽しく活動を進められるっていうのは大事なことだなー、ニホンでも同じようなことができたら楽しいのになーなどといろんなことを考えた1日だったのでした。


EMAUSに続々と戻ってくるトラックの列。

 

 

第20回:夜の昼メロ? テレビドラマにはまる日々