■めだかのスイスイあまぞん日記~~ゆったり南米ブラジル暮らし

夏川めだか
(なつかわ・めだか)


仙台市広瀬川にて誕生。その後利根川、井の頭公園の池、ダブリンのギネスビール、多摩の浅川などを転々とし、さらなる新天地を求めて、ついに世界第一の流域を誇るアマゾン川へ流れ着く。



第1回:アマゾンでジャングル暮らし?
第2回:こんなとこに住んでいます。
第3回:ゆるゆるモードにはまる。
第4回:「おんな」を満喫!
ブラジル人女性。

第5回:漢字が流行ってます。
第6回:買い物もひと苦労?
第7回:選挙もお祭りなのね
第8回:アマゾンのサムライたち
第9回:市民の足は爆走バス
第10回:こんなものを食べてます-その1
第11回:音楽と騒音の境界線?
第12回:あやしいポルトガル語講座
第13回:さらにのんびり郊外暮らし
第14回:アマゾンのオタクな人びと
第15回:こんなものを食べてます-その2

■更新予定日:隔週木曜日

第16回:子どもの共和国―その1:そもそもの始まり

更新日2005/06/02


こんにちは、めだかです。

ベレン市内のNGO団体に通うようになって1年になる。いちおうボランティアとしてだけれど、別に高邁な思想とかそんなものがあったわけではなく、たまたま存在を知り、活動内容に共感を覚え、そして何より居心地がいいのですっかり居着いてしまったのだ。

そもそも来伯前の心づもりでは語学の学習がメインになるはずだった。が、こちらに来てみたら通おうと思ってた社会人講座は数年前になくなっており、しかも外国人が少ないベレンにはポルトガル語を教えてくれる学校がないことも判明。幸い、日本語を勉強中の大学生と交換授業ができることになったけれど、それにしてもどこか居場所がほしいなと思った。できれば生のブラジルに触れられるような…。

すぐにはそんな所も見つからず、うだうだしていた頃、家に転がっていた雑誌をパラパラめくっていたら、ベレンのストリートチルドレンを支援する団体を紹介した記事を見つけた。うわ~、こういう活動もあるんだ。でもストリートチルドレンなんてちょっと怖そう…というのが正直な感想だった。でもすでに地元で30年以上も続いているというし、意義のあることをやっているのは記事からも明らかだった。

暇も手伝って一体どんな所なのかなと軽い気持ちで調べ始めると、以前そこでボランティアをしていた人の書いたサイトを見つけた。そのレポートを読んで興味を引かれ、団体のHPも辞書と首っ引きで読んでみた。うん、けっこう面白そうかもと思ったのでとりあえず話を聞きに行こうと決めた。と言っても、片言未満のポルトガル語ではいきなり行くのも無謀なので、知り合いに頼んで電話をかけてもらい、早速訪ねてみることになった。

スタッフによる面接はブラジルらしくゆるやかなもので、ファーストネームを聞かれただけで名字も住所も身分証明書も必要ナシ。後はこの団体を知った経緯やここでやりたいこと、こちらの仕事や専門について聞かれたくらい。今まで経験のないことをしてみたい思っていたので、「子どもに接する活動をやってみたいんですけど…」という希望と週2日位通えますということを伝え、すべてはスタートした。

この団体は「エマウス共和国(EMAUS)」といい、約35年前からストリートの子どもたちを集めて社会教育や職業訓練などの活動を行なっている。スタッフたちが日々貧しい地域を歩き回り、市場などで働かされている子や路上にいる子たちを見つけて活動への参加に誘うのだ。もちろん親にも説明し、納得してもらって来ることになる。大半は母子家庭、あるいは祖母・母子家庭の子で虐待を受けていた子も多いという。

子どもたちを取り巻く厳しい状況についてスタッフから説明され、最初はかなり緊張していた。一体そういう子たちに対して、経験もなく言葉もままならない人間がどんな風に接すればいいんだろうかと。でもそんな心配は初日に吹っ飛んでしまった。はじめから子どもたちはすごくオープンで、何の構えもなく受け入れてくれた。大体においてブラジル人はフレンドリーだけど、あまりに屈託がなくてこちらが戸惑うくらいだった。

とにかく好奇心いっぱいの顔で矢継ぎ早にうわーっと話しかけてくる。「どこから来たの?」「ベレンまでどのくらいかかったの?」「ニホンは今何時?」「サヨナラってどういう意味?(この言葉はブラジル人はみんな知ってる)」「生の魚を食べるってホント?」「何歳?」「ニホンに帰るとき連れてってくれる?」…。その後は次から次に「ねぇねぇ、僕の名前を日本語で書いてよ」と言って子どもたちが列をなし、カタカナで書いてあげると、こっちまで嬉しくなるような思いっきりの笑顔を見せてくれる。


「ワタシの写真撮ってよ~」とせがんでいたのに
カメラを向けたら照れてしまった

食堂で一緒に昼食をとったときも、勝手がわからないでいると「ねぇねぇ、ここに座りなよ」と椅子を持ってきて隣に座らせてくれ、何かと世話を焼いてくれる。何人かが一度にしかも早口で話しかけてきて、何が何だかわからないという顔をしていると1人の子がその場を仕切ってくれて「ちょっと待って、ワタシが説明するから。あのね、こういうことなの…」とゆーっくりと話してくれる。

何というか、もう初日からハマった感じだった。生のブラジルに触れたいとか、できればポルトガル語に囲まれる環境に身を置きたいとかいろいろ考えていたけど、そんなことはともかく、この子たちと一緒に過ごせたら楽しそうだな、ここにいてみたいなと思ってしまったのだ。特に子ども好きでもない自分がそんな風に思えたのが不思議な感じ。

というわけで、子どもの共和国での活動が始まった。もちろん子どもたちはかわいいだけではないし、活動だって楽しいことばかりではなかった。でもともかく1年続いたってことは、やっぱりそこに何かぴったりくるものがあったということだろう。そんな共和国での毎日について少し報告していきたいと思っている。

 

 

第17回:子どもの共和国――その2:大切な居場所