原園 綾
(はらぞの・あや)

1967年生まれ。世田谷区立赤堤小卒。ニューヨーク在住。大きくなったら何になろうかな?

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第6回:カッパの夏休み日記

残暑お見舞いは、アラスカ中央に位置するデナリ(マッキンリー山の別名)国立公園から申し上げます。アメリカは広いぞー。南のフロリダではサーファーなどがサメに噛まれたりしているのに、こちらは涼しくてそんなニュースはまったく現実味あっりましぇーん。ここは氷河の天然クーラーが24時間ですから。マッキンリー山がドッバーンと見えるビジターセンターのあるこの丘では、白く輝くマッキンリーからまるで直接吹き下ろしているような風が最高に心地よく、なんちゅーか、湿気と排気ガスの煮えたぎる都会の夏が遠い昔話のようですの。すっずしくて、お山も神々しくって、こんなに贅沢な環境で羽を伸ばせるとはってカンジ。恐怖の大量蚊のシーズンも7月末でほとんど終わっていたらしくラッキー。

ゲコゲコ、さて、そろそろ宿のある町へ戻るバスを探しましょうか。公園内には基本的に要予約のキャンプサイトしかないのでしゅ。それから自家用車も入れません。「おにーさーん、次のバスにのせて下さーい」とお願いすると「オッケー、あと30分あるから展示室でも見てて」と言われた。それでもって展示室に行ったらすごいもの発見!! 各種うんこがビンに入って一列に並んでいるではないか、まるで窓の外のマッキンレーに対峙するかのように。ムムッ、これには見覚えがあるぞ、小さい楕円の黒めのコロコロしたの。昨日ハイキングの途中、見つけたのと同じだ!! ラベルをみるとムースだ! わーい。わしゃ、ムースが通った道を歩いたんじゃ! しかもハエもとんでて、このビンのなかのものほど乾燥してなかったし、きっとそんなに時間もたってなかったのね、うふふ。こちらの草っぽいのは、ヤギさんですね。おお、注目すべきは消化されなかったレンジャー(公園管理のプロ)のバッチがグリズリーの糞と一緒に入ってます(といった茶目っ気のある展示もある)。

さーて、それでは片道5時間バスの旅。コンクリで舗装されてないので、ちょっとがたがた道ですねえ。窓の外を眺めながら、というよりは皆、目を血走らせながら必死に動物を探してます。「11時の方向にカリブ発見!」と叫ぶ声。ほかに車がいるわけでもなし、バスはその都度止って乗客はカメラ、ビデオで激写しまくり。広い公園内にポツンポツンと、1匹でいるものが多いのですね。

こちらに来る朝のバスではキツネがいきなり車道に出て来て平気な顔でバスの脇を歩いていきました。大きなカリブがゆったり横切って待たされたり、雷鳥の家族が草むらをのそのそ移動していたりとありますが、車の近くで見れるものは一部。ほとんどは広大な緑や山、川の中でポツンと双眼鏡がなくては厳しいほど小さく遠くに見える。バスの運転手に「止めるスポットが悪い」とダメ出しするぐらい、みんな燃えているのだ。「3時!」「7時!」「10時!」しまいには「10時35分」なんて小刻みになったりして。その情熱が叶ってひたすら眺めちゃいましたねー。

まるで絵葉書のような、マッキンリーを背景に角がシルエットになったカリブとか、のっそり進む母熊のあとを「おかあちゃん、おかあちゃん、まっちくりー、お水はまだ苦手だよー」と、川渡りでは不器用な小走りになる小熊ちゃんとか。

もうすぐ公園出口到着、、と思ったらまたバスが止っちゃた。ひょえー、デカイ! グリズリーが車道の脇の草むらでもそもそ何か食べている模様。こんなに大きかったら、動きがゆったりとしてても当然かと思ったら…ピョンッとジャンプ。あれれ、どこいちゃったのー。反対から来た車の音にびっくりして、思いも寄らぬスピードで草むらの奥に逃げてしまった。あんなに機敏に動けるから獲物をしとめられるのケロッ。野性ですな。でもほとんどの時間はのそのそもぐもぐモードなんだろうな。

そして11時近くても明るい、まだ白夜に近いアラスカの夏の夜となりました。あっそろそろお別れの時間のようです。今週のテーマソングが聞こえて来ました。それではまた次回だゲコッ。 ♪テレビもねぇラジオもねぇ. 俺はぜったいグリズリー, 俺は田舎のグリズリー♪

 

→ 第7回:ニューヨークから


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