坂本由起子
(さかもと・ゆきこ)

マーケティングの仕事に携わったあと結婚退社。その後数年間の海外生活を経験。地球をゴミだらけにしないためにも、自分にとって価値のあるものを探し出したいと日々願う主婦。東京在住。

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第11回:思い出を作ろう

小学生の頃、夏休み恒例のキャンプに毎年参加するのが楽しみだった。現地に到着すると、あるものを作ることからキャンプが始まる。遊びたい気持ちを抑えて作るのは、これから3日間使うことになる食器である。材料となるのは自然に生えている竹だ。竹の節目をうまく使って、お皿とコップと箸を作らなければならないのだ。

でも心配はいらない。参加者のほとんどは、毎日のこぎりや小刀などを使い、おもちゃを作って遊んでいる子供達だ。みんな手慣れた手つきで作り上げていく。そして食器ができた人から順に夕食の準備にとりかかる。初日のメニューはもちろん定番のカレーライス。そのカレーライスができ上がる頃には、食器作りも全員無事に終わっている。懐かしい、楽しい夏休みの思い出の一つだ。今思えば、自分で作り上げた竹の食器で食べるというのは、贅沢なことかもしれない。

1日で1メートル以上も伸び、たった4年で成木になるという竹は、伐採しても次々に生えてくるので昔から炊事や掃除道具などの生活用品の材料に利用されてきた。近頃ではアジアンブームもすっかり定着してきたようで、ベトナムなどから輸入される竹を使った家具やカゴなどの雑貨も珍しくなくなった。

見ているだけでも涼やかな竹は、なぜか夏になると恋しくなる。それもそのはず、アジアに生息する竹は、アジアに住む私たちに快適な暮らしを提供してくれるのだ。そしてそれは、炭になったときに真価を発揮する。最近よく見かけるようになった竹炭が、今わが家でちょっとブームなのだ。

竹炭は、木炭と比べて2倍以上もの細かい無数の孔があいており、吸着力は木炭の10倍以上もあるといわれる。それが脱臭や除湿をしてくれるのだ。 また、マイナスイオンを発生するので、コンピュータや家電の周りに置いておくだけで電磁波を吸収してくれるらしい。

脱臭剤や除湿剤も売られているが、ゴミになるものをわざわざ買うのはどうも気が引けていた。そんな時に竹炭を知ったのだった。コンピュータの電源が入りっぱなしで、犬を飼っているわが家には、これほどありがたいものはない。

さらに、カルシウムやカリウム、ナトリウム、鉄分などの天然ミネラルが、水に溶けやすい形で含まれているため、水に入れるとミネラルウォーターのようになり、花瓶に入れれば水が腐りにくく、花が長持ちするともいう。確かに水に入れると無数の泡が竹炭から出て、ろ過していることがわかる。

おもしろい話もある。あるJリーグのチームは、試合後の選手の足に竹炭をあて、疲労した足をケアしているのだそうだ。体の熱を取り除いてくれるという効果と、遠赤外線やマイナスイオンの健康効果が効くらしい。プロのサッカー選手が使うのだから、きっとそれなりの効果があるのだろう。

そして使い終えた竹炭は、まだまだ捨ててはいけない。これを砕いて鉢植えや庭の土に混ぜれば土の通気性がよくなり、酸性化した土を中和してくれる。

もう一つのおすすめの炭が「鑑賞炭」。パイナップルやかぼちゃ、バナナ、栗などの野菜や果物などをそのままの姿で炭にしたもので、インテリア性の高い炭だ。いくつかまとめてお皿に盛るとかわいらしい。

一斗缶の中に素材を入れて炭火で焼けば、意外と簡単に作ることができる。この夏、アウトドアキャンプやバーベキューの予定があれば、試してみるのもいいかもしれない。外で何かを作った記憶というのは、きっといい思い出になる。

 

→ 第12回:砂浜の宝石


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