坂本由起子
(さかもと・ゆきこ)

マーケティングの仕事に携わったあと結婚退社。その後数年間の海外生活を経験。地球をゴミだらけにしないためにも、自分にとって価値のあるものを探し出したいと日々願う主婦。東京在住。

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第20回:環境にやさしくなければ

ある金曜の夜、突然夫が「鎌倉に行こう」と言いだした。時計はすでに10時を回っている。そう、今から私たちは50Kmも離れた所に食事に行こうとしている。そこはオーシャンビューのレストランでも、雑誌に載るような店でもない。以前暮らしていた頃によく通った、なじみの焼き鳥屋である。食べたいものを食べたい時に行ける幸せ。わが家ではこういうことが贅沢だと思っている。

さて、都内から鎌倉へのアクセスは何通りかある。そういえば、首都高湾岸線の本牧ふ頭から幸浦までが全線開通したではないか。保土ヶ谷を通る必要のない横須賀方面に向かう人には念願の道だ。うん、これを使わない手はない。道幅はたっぷり3車線もあって走りやすい。そして夜だったことも手伝ってか、貸し切りのように空いているではないか。これならお金を払って利用する価値は十分にありそうだ。

この道路が開通してから、東京・川崎方面と横須賀・湘南方面の所要時間が短縮され、内陸部を走っていた大型車がこちらに移っているのだという。渋滞もだいぶ緩和されているそうだ。決して安くない高速料金を払うのだから、空いている道を走りたい。時間をお金で買っているのだから。

久しぶりに車で遠出をすると、新しい発見があっておもしろい。今回気になったのは、料金所にETC(無線通信で通行料金を支払う方法)専用車線が増えていたことだ。料金所で止まる必要がないので利用者の評判は上々らしい。けれど、いまいち普及していない感がある。理由は恐らくこれひとつ。車載器の値段が高すぎるのだ。機種によって差はあるものの、3万円は下らないらしい。ところがETCでも先を行くアメリカではなんと15ドル前後で買えると聞く。アメリカで普及するのは当然だろう。物の適正価格ということを考えると、ますます日本で買い物がしたくなくなってしまう。

けれど個人的には、このシステムは早く普及して欲しいと願っている。料金所渋滞の緩和、キャッシュレス化による利便性の向上といったことだけに注目してしまうが、それだけではない。料金所建設費の節減、料金所周辺の大気汚染や騒音などの環境改善といったことも期待されているのだ。そしてなにより料金所のたびに受け取る領収書や通行券をもらわずにすむ。この紙には、紙代・インク代・印刷代・磁気プリント代・運送費など目に見えないところで実はお金がかかっている。しかも最後はほとんどがゴミとして捨てられるものだ。これらが解消されるETCの登場は大きいだろう。

テクノロジーの進歩が、地球に優しい環境に結びつくのはとてもうれしい。一番身近なところでは、銀行のATM機がある。利用すると最後に明細票をプリントするかどうかを聞いてくるので、もちろん「いいえ」と押す。ちょっとだけいいことをした気分になるから不思議だ。

 

→ 第21回:ふっくらご飯を炊く秘訣はIHにあり


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