第715回:左義長の福井へ - 福井鉄道、福井駅停留場~市役所前停留場 -
貴生川駅17時39分発の米原行きに乗ると米原到着は19時41分だ。近江鉄道本線は通しで乗ると片道2時間もかかる。ただし停車時間が長い駅がある。日野で10分、八日市で11分、彦根で15分。がんばれば1時間半で到達できるけれど、全区間通しで乗る人が少ないようだ。JRなら草津で乗り換えると約1時間で、運賃は100円程度高いだけだ。私もフリーきっぷがなければJRにしたかもしれない。米原に着く頃はすっかり陽が落ちていた。
〇〇限定を見つけると買ってしまう。甘かった
米原駅は新幹線の停車駅だし、北陸本線と東海道新幹線の分岐点である。それにしては駅構内が寂しい。売店もない。駅弁屋も見当たらない。駅前も暗い。晩飯はどうしよう。駅員さんに聞いてみた。駅弁屋は新幹線乗り場と西口で、たぶんもう終わっていると言う。ならば駅員さんの食事はどうしているかと聞いたら、少し歩くとスーパーがあって、そこの惣菜売り場で買っているそうだ。次に乗る特急「しらさぎ61号」の発車まであと10分。急いでスーパーへ行き、見切り品のご飯とトンカツを買う。旅らしくない。早くも独り暮らしのような食事が懐かしくもある。
米原行きの車内、人はまばら
次の目的地は福井だ。今夜は福井で泊まる。乗車券は横浜市内発、東京都区内着で、米原、金沢経由の一筆書き。横浜ではなく東京までとした理由は、大手町から地下鉄半蔵門線に乗り、田園都市線に直通できるからだ。都区内着のきっぷは東京駅基準で運賃を計算する。23区の端まで乗れるから、東京駅で降りてしまうとちょっともったいない。大井町へ行って大井町線経由でもいいけれど、それは次の機会にしよう。明るい時間に帰れたら、旗の台の馴染みの店に寄れる。旅の終わりに馴染みの店に立ち寄る。ちょっと大人のたしなみっぽい。
新横浜駅で買った一筆書き乗車券、発券に手間取った
自由席特急券も新幹線と同時購入で半額
それはともかく、今回の旅の目的地は近江鉄道だけではない。福井駅付近の鉄道訪問もある。まずは福井鉄道で、ヒゲ線と呼ばれる福井駅前の線路が100メートル延伸して、福井駅に近づいた。えちぜん鉄道の福井駅は高架化工事のため、仮線として北陸新幹線の線路を借用している。これが珍しいし、まもなく工事が終わるから見に行きたい。田原町駅は福井鉄道と線路が繋がり、直通運転が始まった。これも見たい。
JR米原駅。JR西日本とJR東海の電車の並び
えちぜん鉄道の福井駅の仮線借用は2015年から始まった。ヒゲ線の延伸と田原町駅の直通工事は2016年に落成した。しかし、いつでも行ける。何かのついでに福井に寄ろう、などと構えていたら、仮線借用は今年(2018年)の6月に使用終了と報じられた。そうなると重い腰が上がる。そんな時、水彩画家のSさんからお誘いを戴く。
「左義長に合わせて行きませんか」
スーパーのお惣菜で夕食
「ひだりよしなが」とはなんのことか。福井県の武将かと思ったら「さぎちょう」と読むそうだ。勝山左義長というお祭りだ。福井県を代表する祭で、300年も続く奇祭として知られているという。ネットで調べたら、えちぜん鉄道の公式サイトで左義長のガイドツアーを見つけた。祭のあらましをひととおり教えてくれるそうだ。それをSさんに伝えたら、すぐに「ふたり分で予約しておきました」と連絡があった。水彩画家のSさんは「北斗星の達人」である。廃止直前の寝台特急北斗星で旅をしてから3年も経った。いま、縁あってえちぜん鉄道を描いている。次は福井で会いましょう。そんなやりとりを覚えていてくれた。そこに近江鉄道の危機のニュースがあり、旅程が決まった。
福井駅に到着、景色が変わって驚く
夜の湖東、北陸本線を特急しらさぎ号が走っている。独身ひとり飯の食事を済ませると眠くなってきた。しかし福井は途中駅。寝過ごしてはいけないから眠気に耐える。21時頃に福井に着く。冷たい空気に身が引き締まる。福井駅前は北陸新幹線の開業を前に大きく変貌していた。路上以外は雪が残っていた。
壁面に恐竜の絵、英文で恐竜王国福井、恐竜の王政はやだな(笑)
ガラス張りが未来的、というイメージはいつまで続くだろう
今夜のホテルは福井駅前ではなく、福井鉄道の市役所前停留所の近くだ。新しくできた福井鉄道の駅前停留所からひと駅。徒歩でも行けるけれど未乗区間を素通りできぬ乗り鉄の性だ。電車は駅前大通りを走り抜け、分岐点を右折。期せずして福井の最初の目的を果たした。夜の初乗りは少しだけ不本意ながら、明日の朝、また乗ればいい。
さて、未乗区間に乗ろう
市役所前電停 (数ヶ月後に 福井城址大名町 に変わった)
-…つづく
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