原園 綾
(はらぞの・あや)

1967年生まれ。世田谷区立赤堤小卒。ニューヨーク在住。大きくなったら何になろうかな?

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第2回:ぼく白熊。白くないんだ、地黒なの。てへ

ルンルルルルン。ねえねえ、ぼく白熊なんだ。もうすぐ夏ですね。ということは、そろそろ毛が生え変わるんだ。衣替えっていうのかなあ。ふふふ、ちょっと黄色くなちゃったからちょうどいいや。でも汚れだけじゃなくてね、太陽があたって酸化しちゃうの。本当はぼくの毛透明なんだよ。知ってた?毛の一本一本に空洞があるから光を反射して白く見えるだけ。氷や雪と同じこと。北極圏の白い世界で白く見える姿は餌を捕るのに好都合。でもその穴に藻が繁殖して緑色になっちゃった仲間もいたんだよー、ミドリグマ?!

自慢の毛皮は、ウォータープルーフで泳いだあとにプルプルってすればオッケー。それに寒い時には防寒にもなるし。マイナス40℃でも体温37℃をキープできちゃう。毛皮のおかげで、ちょっと走ったりするとオーバーヒートしてしまうぐらい!だから運動のあとは海に入って涼んじゃうんだ。もちろん寒いときジッとしてると、風邪ひいちゃうからそんな時は毛のない所は内側に隠したり、鼻づらを手でカバーしたりしてやりすごすけどね。そうそう、それからぼく白熊って呼ばれるぐらいだから、色白だと思われちゃうんだけど、打ち明けちゃうと地黒なの…。肌は黒いのだ。ガオー。どお?ワイルドな魅力が伝わったかーい?!

茶色のクマさんは遠い親戚です。偉い学者さんいわく「10万年から25万年前にシベリアに行った茶色のクマさん達が氷河の環境の中で進化していったと思われるのであーる。えっへん」なのだ。陸上で最大の肉食動物でっす。北極圏で食物連鎖の頂上にいるということは、いろんな環境汚染を体に蓄積してしまうということ。だから海を汚さないでね!

寒い冬も氷河を歩いてます。冬眠するのは女の子。赤ちゃんができるときだけね。赤ちゃんはかわいいよねえ。でもぼくは男の子だから赤ちゃんの世話はしないんだ。白熊の世界では子育ては女の子が命がけでやる仕事。厳しい自然でおっかさんは大変さあ、そしてとっても親子仲いいよ。でもお母さんク マはとくに神経質だから近寄っちゃダメよ。白熊達は他のクマよりも人を餌と思うことが多いのだ!またまたガオー!

人生はロンリーきまま旅。一日に80kmの移動も記録されてるぐらい。てくてく歩いて、てくてく歩くよ。だいたい人と同じぐらいの早さかな。かなり広いけど自分の地域ってのがあって、餌の分布などによって5万平方キロ(愛知県位)から35万平方キロ(日本全国位)とクマ各々。その中を季節で餌の状況も変わるから移動するの。主食はアザラシ。走るのは体がすぐ熱くなっちゃうから苦手だけど、短距離なら時速40kmはいけるね。ぼくは太めで大きいから他の哺乳類と比べたらエネルギーを倍使っちゃうの。だから陸上では休みながらゆっくり動くんだ。のっそりのっそり。特技は水泳!長距離いけるよ。数時間ノンストップで100km泳ぐ友達もいる。時速10kmも可。水中視界も5m先までお見通し。他のクマさんに比べて首が長いのにはお気付き?水泳や狩りをする時便利なの。水上に顔を出しやすいでしょ。大きな手も水掻きに役立つ。

こうした活動のほとんどは一人でやるの。ときには仲間と協力するときもあるし、遊びでお相撲とることもあるんだけど、基本は独りなんだ。一人で移動を続けるといろんなこと考える。だからきっとエスキモーも僕らのことを"almost a man"とか"The great lonely roamer"なんて呼ぶんだね。でも一人で旅してると吹雪になったり餌がなくてペコペコになったり、つらいこともあるんっす。

蒸し暑くなる季節、白い世界で白熊のぼくが一人で見る夢も白いのかなあ、なんて頭のなかだけでもクールダウンしてね。

 

→ 第3回:日本の大学の話だゲコ


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