■ニューヨーク・カッパ便り~USアート見聞録

原園 綾
(はらぞの・あや)


在ニューヨーク。アーティストおよびアート・プログラムについて気ままにリサーチ中。ハンター・カレッジ人類学修士課程では知覚進化やアートの起源がテーマ。新しい趣味は手話と空手。2004年はいい感じ。

 

 
第1回:アートな旅
~サンタ・フェ&ラス・ベガスの巻




■連載完了コラム
Gallery 1 by 4
~新進アーティスト・ガイド from New York

[全33回]

生き物進化中
~カッパのニューヨーク万華鏡日記

[全15回]

只今、生き物進化中
~カッパ的動物科学概論
[全15回]

■更新予定日:隔週木曜日

第2回:美術館でダンスの展覧会を観るの巻

更新日2004/01/23


ちーす! 新年は1月2日から平常営業に戻ってしまうアメリカなので、オトソ気分なんてなかったっす。でも、旅行から戻った4日に空港からその足で日系大型スーパーに行き、おせち料理の売れ残りでもないかいな…と物色したところ、「かまぼこぐらいです」って。伊達巻きとか食べたかったにょ~。で、とりあえず、具のセットとアンコを買って、おでんとおしるこのお正月でしたの。

まだまだ冬休みモードなカッパは、ニューヨークに来た友達や先輩と出かけてブラブラしてたざんす。友達はダンスの仕事をしているので、ニュー・ミュージアムで開催されていた展覧会「トリシャ・ブラウン ダンスと美術の対話 1961-2001」と題したニューヨークの振付家、トリシャ・ブラウンの展覧会を見に行った。トリシャのダンスの歴史、それも美術家が装置や衣装を担当するなどのコラボレーションを軸にして紹介するもの。


トリシャ・ブラウン 
ダンスと美術の対話 1961-2001
展覧会フライヤー

「ダンスの展覧会を美術館で? なんで?」って代物ではありませんぞ。というのは、トリシャが活動を始めた60年代のニューヨークでは、どの分野もアートは実験的に精力的にドンドン制作していて、ダンス、美術、音楽などの垣根もなく、真の共通言語があった時代。今で言うコラボレーションは、なにも特別なことではなく当たり前の自然現象、なーんていう素敵な時代。その時代、60~70年代または80年代前半ぐらいのニューヨークを知っていたら、他にこんなに面白い所なんてなかったかもしれないぞ。ゲコゲコ~!

ほとほと感心するのは、トリシャを含め当時のダンスをビデオ(なのに)で見ると、面白いのです。たとえ最近の新作はつまらない振付家でも…。なぜか? アメリカのダンスでありがちなストーリーや感情表現に頼らない、動きの追求を純粋にしているからかな。また、音楽や美術の世界でも行われていたミニマムな表現やバラバラにして再構築するような手法を用いたり、元来のダンスでの美をそのまま受け入れないで、こうあるべき腕のラインなどを改めて定規で線を引くように自由に、しかし人間の体の限界を遊びのように取り入れながら創って行ったからかも。

ダンスのための動きではなく、日常の動き、歩いたり、煙草を吸ったりする仕草をダンスに。楽譜のための楽器音ではなく、街の喧騒や時には無音さえも音楽に。造形美の彫刻から、レディメイドで生活に密着したものを作品にしたり素材にしたり。ごく身近なものから形にしていったという点が、飾り気なくてさりげない。そして当時のアート界においては衝撃的で本当にエキサイティングだっただろうな。

彼女のソロのビデオ「Accumulation with Talking Plus Water Motor」が特に面白かった。稽古場で撮影されたカジュアルな映像。自分で話をしながら動いてゆく、ゆっくりしたダンス。足の出方、手の出方、引っ込め方、回し方、派手なものは何もないのだけれど、飽きない。どの動きもウソがない。ムダがない。「こうみせたい」が先行してカッコつけてカッコ悪くなるダンスはたくさんあるけど、正にその反対。シンプルで、お茶目でもあって、そしてきれいなんだ~。この86年の映像はジョナサン・デミが撮っていた。フガフガ! あのトーキング・ヘッズの「ストップ・メイキング・センス」の2年後、「羊たちの沈黙」の5年前ですぞ。

彼女のドローイングもよかった。手足を鉛筆で描いているものや、壁一杯の大きな白い紙におそらくダンスしながら足で(?)描いたと思われる黒い線は、巨大な赤ちゃんがめちゃくちゃ落書きしたよう。


展覧会リーフレットより

ダンス・ファンでなくとも、ドナルド・ジャッド「のらり」前出)やロバート・ラウシェンバーグなどそうそうたるアーティストの作品も舞台装置のスケッチや実物があり、楽しめる展覧会。かっちょよいのは、ラウシェンバーグが舞台美術に使ったボロボロの赤いブラインドとバケツや、車のボディーにも見えるステンレスのボコボコに変形した流し。これには逸話があって、イタリア公演の際、装置が予定通りに届かなかった時、ちょうどラウシェンバーグが遊びに来て、「じゃ、作っちゃろ!」と近所のガラクタ屋に行ったり、路上に捨ててあるものを集めて2日ほどで仕上げたのだ。ボブ、やるー! 実はマース・カニングハム「のらり」前出;とのコラボレーションがもっと有名)のカンパニー50周年記念で舞台に上がった彼の右手がずっと震えていて、カッパはひどくショックだった。「ぼぶ、、、」。舞台袖では車椅子に座っていたと言う。

大学の先輩が出張でNYに来た。エンパイヤに昇ったら、上空では雪が下から天に向かって吹き上げている。その深夜には初めて見るダイヤモンド・ダストていうんじゃろか?! 雪の結晶は見たことあるけど、もっとしっかりした平面のスパンコールのようで、降ってくる時に街灯を反射してキラキラキラ! その後、数日100年振りの大寒波と言われる極寒に突入しちゃったのであるよ。それでも先輩を連れ出し、ブロードウェイのミュージカルや話題のクラブにも行って遊んだじょ。でも外はマイナス15℃前後という驚異の世界じゃった。

 

 

第3回:アングラ、ライブ、ビデオ、エッチング…etc.