第3回:アングラ、ライブ、ビデオ、エッチング…etc.
更新日2004/02/05
大学の新学期、つまり宿題山積み生活を目前に、見られるものは見ておこうと、チョロチョロしておりました。60年代から続いている筋金入りアングラ(って言っていいかしら)「リチャード・フォアマン」から、注目の「フォースト・エンタテイメント」(イギリス)、若手パフォーマンス・グループの「ラジオホール」、意外な発見だった「ビッグ・アート・グループ」、R&Bのliving
historyと言われる「サム・ムーア」(ブルース・ブラザースのモデルになったSam
& Daveのサム)のライブ。どれも一癖も二癖ある作品や、アーティストたちでありんす。
公演チラシより
中でもビッグ・アート・グループの『House of No More』は面白かった。ハンディ・ビデオカメラと映像合成するラップトップを数台づつ使っている(これも舞台の手前に並んで見えている)、とはいえ、すごくアナログなパフォーマンス。技術的に先端のメディア・アートうんぬんってものではないのよん。なんたってクロマキー合成だけで見せるようなものですから。誘拐事件を追って……というストーリーはあるのだけれど、それより見せ方なんです。
一人のキャラクターを同時に二人で並んで舞台でやっていて、カメラが一人の横顔ともう一人の伸ばした手をとらえていて、その映像が舞台の正面に左右に並ぶ二つのスクリーンに映し出され、横を向いてモノに手を伸ばす一つのシーンになるような。でも、その映像を作っている状況、つまりカメラの前で動いている二人の役者もスクリーンと同じく舞台に載っている。どこを見たらいいのか? どちらも楽しい。
女性の役だって一人は男性がやっていたりして、役になりきった迫真の演技なんて毛頭望んでいない。何故か皆まゆ毛をつぶしていて、少し高い位置(額に)書いてあるのも作りもの(人形)っぽくしてあるというか、彼らのスタンスなんでしょ。しかし、どたばたコメディで終わってない。スクリーンで完成した構成を見せるための同時撮影風景(裏)を見せるリアリティーは迫真の演技よりずっと身近でハラハラする。ケーッ。
そうそう、NY近代美術館(MOMA)で同時開催中だった「アーティスト・チョイス:モナ・ハトゥーム Here
Is Elsewhere」と「キキ・スミス
Prints, Books and Things」の展覧会もチェーック! パレスティナ人でロンドンを拠点に世界的に活動しているモナがキュレーターとなり、MOMAのコレクションから作品を選び、展覧会を構成した。
「アーティスト・チョイス:モナ・ハトゥーム」展リーフレット
現在改築中のMOMAが倉庫に眠るコレクションをうまく利用するプロジェクトと思ったら、なんと1989年に始まったシリーズで、これは第6弾。過去にはエルスワース・ケリーやチャック・クロースなどがセレクトしていた。彼女のセレクションには私の好きなアーティストが何人かいたが、その一人、フランシス・アリスのMOMA移転の際の「行進」の作品もあった。移動をテーマにいくつも作品を作っているが、フランシスは2002年の6月23日、マンハッタンから橋を渡ったクィーンズ地区の仮設美術館(約3年間)まで、百人余りの大行進を行った。バンドも入り、花をまきながら、山車の上にはピカソやデュシャンのMOMAを代表する作品(確かレプリカ)が、そしてアーティスト代表としてキキ・スミス(これ本人!)が椅子に乗って担がれていた。行列には犬もついて来たとか。
そうなんです。キキ・スミスは、そんな大行進で担がれちゃうほどのNYを代表する彫刻家の一人。人間のボディーを扱う痛い作品という印象がありましたが、この展覧会は、版画を中心に平面作品をまとめて見せていました。絵本の挿絵のような作品、精密なエッチング、写真込みのコラージュ、紙でボディーの形を作ったインスタレーションなど。平面の作品にもやはりボディーの限界、生と死がうすーく漂っているなあ。
鳥や猫(彼女のペットだった)や鹿など動物の作品の解説には、死体やはく製をスケッチしたと書いてあった。形、色、毛皮や羽根の質感の美しさに生命を見たとある通り、細いラインはシワの一つも逃さないかのように忠実にそして静かに描き出していた。
「キキ・スミス」展リーフレット
寒い冬はまだ続いております。うちのワンコはんは、雪でも寒くてもぐいぐいこちらを引っ張って全力で前進しますので、カッパも負けてはおられません。
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