かお
杉山淳一
(すぎやま・じゅんいち)

1967年生まれ。信州大学経済学部卒業。株式会社アスキーにて7年間に渡りコンピュータ雑誌の広告営業を担当した後、1996年よりフリーライターとなる。PCゲーム、オンラインソフトの評価、大手PCメーカーのカタログ等で活躍中。

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第8回:プロゲーマーの日常

私も含めて、ゲームは"余暇"だという認識が一般的だ。だから、ほとんどのプレーヤーにとって、ゲームを楽しむ時間は"平日の夜"や"休日"である。真剣に戦うにしても、スポーツと同様に、戦いが終われば安らぎの時間が訪れる。戦うこと自体も"心地よい緊張感"を楽しむレジャーにすぎない。しかし、それがプロを目指す世界になると趣が違ってくる。  漫然と遊びに講じるゲームプレイヤーとは異なり、プロゲーマーのゲームタイムは"試合"または"訓練"だ。今回はプロゲーマー『BRSRK』氏に、日常の様子をレポートしてもらった。彼の戦いの日々を覗いてみよう。

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某月某日。──『カウンターストライク』というゲームに参戦するために、サーバーチェックソフトを使用してゲームサーバーの利用状態をチェックする。このゲームの戦歴も長くなってきて、リストには馴染みの名前も増えてきた。強い人、面白い人、知り合いなど、オンライン上でのライバルや戦友たちだ。そこで、気になるプレイヤーを発見したゲームサーバーに接続する。その瞬間からそこは既に戦場なのだ。16人を収容できるサーバーで、8対8で戦いが繰り広げられていた。さっそく、好みや戦況に応じた武器を購入して参戦した。

次々とライバルを倒しつつ、近くにいた味方が殺されていく様子を横目に、ひたすら戦いを続ける。やがて1対1の状況になり、息を殺しながら徐々に道を歩いていく。頭の中には敵に対しての警戒しかない。相手は物陰に隠れているようだ。スナイプ(遠距離射撃)するのか、あるいは特攻してくるのか。息を殺し、瞬きもあまりせずモニターを凝視し、聞き耳を立てる。きっと、相手も同じ心理で行動しているだろうと苦笑いしながら徐々に進攻する。

足音を立てないようにゆっくり進み物陰から顔を出す。その瞬間、敵がこっちに銃口を向けていることに気がついた。しかし、時、既に遅し。僕の体は地面に横たわった。「ふぅ」。緊張がほぐれた。

このあとのゲームでは自分の行動がうまくいった。自分のスコアは上位の位置にいた。1時間ほどしてこのゲームサーバーを去り、チャットで『廃人軍団』の仲間と会話しながらサーバーを設定し、試合の準備をはじめた。仲間たちとの練習試合とはいえ、今は大事なトーナメント戦の前なので、ある程度の実戦的作戦を展開する。チームが強くなるために。戦場で生き残るために。

12の試合を2セット。最初はテロリスト側で、次は特殊部隊側。結果は辛勝。 自分たちにはまだまだ欠点がある。チャットでの反省会で、気が付いた点をチームメンバーと話し合い、次の練習に備える。さらに2試合をこなした。

引き続き、Quakeの旗取り合戦を練習する。

『DeadlyDrive』と『Maruoka』のメンバーとで作戦を決め、最初の戦闘の組み合わせがサーバーに入る。結果は2-1で我々の敗退。気心の知れた『DeadlyDrive』のメンバーだけではなく、『Maruoka』との混成メンバーなので、イマイチ、スムーズに展開できていない。

試合後、反省会をして、次はどうプラスにして行くかを談義。

その後DeadlyDriveのメンバーと私用サーバーで練習。 時間はすでに朝6時。最後に自分のプレイに対してイロイロと思い浮かべ、反省点を考える。が、時間も時間なので寝てしまう。

そして起床、サーバーをチェックし…。

BRSRK

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プロゲーマーにとっては毎日が戦いの日々。その戦いのすべてが"強くなるため"の鍛錬だ。軍事教練にも似たストイックな日々を積み重ねて、世界の桧舞台を目ざす。日本のプロゲーマーにとって、日本に確固たるステージが無い以上、世界を目ざすべきなのかもしれない。しかし、一般のゲームユーザーと違ってプロゲーマーは目標がある。ゲーマーの頂点とはなにか、そして、どうすればそこにいけるのか。これを認識しているか否かの差は大きい。

プロゲーマー『BRSRK』と出会って、もうすぐ半年になろうとしている。  少しずつ、チャンスが近づいてくる予感がある。

 

→ 第9回:閑話休題~帰らざる橋から


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