柿の木の花。
柔らかな葉に隠れるようにして
よく見れば確かに柿の実につながるような形をした
透明感のある小さな花。
この季節になると故郷の加賀では
柿の葉に酢飯を広げ、その上に締め鯖や生姜などを乗せて
一枚いちまい木の桶に並べて重しを乗せた柿の葉寿司を
祖母や母がつくってくれた。
あの美味しかった柿の葉寿司は
この柔らかな葉があったからこそなのだと
今さらながらにそう思う。
柿の葉の香りがほんのりしみて……
いつ誰が、柿の葉をそんな風に用いはじめたのだろう……
そのことがなければ、懐かしい記憶だってなかったのだと、ふと思う。