■感性工学的テキスト商品学~書き言葉のマーケティング

杉山淳一
(すぎやま・じゅんいち)


1967年生まれ。信州大学経済学部卒業。株式会社アスキーにて7年間に渡りコンピュータ雑誌の広告営業を担当した後、'96年よりフリーライターとなる。PCゲーム、オンラインソフトの評価、大手PCメーカーのカタログ等で活躍中。


第1回:感性工学とテキスト
第2回:英語教育が壊した日本語
第3回:聞くリズム、読むリズム
第4回:話し言葉を追放せよ
第5回:読点の戦略
第6回:漢字とカタカナの落とし穴
第7回: カッコわるい
第8回: 文末に変化を
第9回: "冗長表現"が文章を殺す
第10回:さらば、冗長表現
第11回:個性なんかイラナイ!
第12回:体言止めは投げやりの証拠

■更新予定日:隔週木曜日

 

第13回: 主語と述語のオイシイ関係

更新日2002/08/22


“文章が苦手だ”と思う人は、なるべく短い文章を書くように心がけましょう。そのとき、主語と述語の関係をきちんと把握してください。それだけで、あなたの文章は正しい日本語に近づきます。

・このパソコンは仕事にも遊びにも使います。

こんな文章をよく見かけます。どこが間違っているかわかりますか?
この文章の主語は“パソコンは”ですね。述語は“使います”です。では、シンプルにこのふたつの言葉だけで書いてみます。

・パソコンは使います。

ヘンですよね? パソコンは道具です。パソコンに“何かを使う”という意思はないはずです。むしろ、パソコンは私たち人間に使われる立場になります。使われる立場でありながら、何かを使役させるとは、なんと生意気なパソコンでしょうか。なんて、本気で思う人はいませんね。この文章を正しい日本語にするとこうなります。

・パソコンを使います。

主語がなくなってしまいました。つまり、この文章には主語が省略されています。実際の意味としては、

・(私は)パソコンを使います。

ですね。初めの文章は

・私は、このパソコンを仕事にも遊びにも使います。

これが正しい。

このような間違いが起きる理由は“助詞”の誤用です。“は”という助詞は“主格”だけではなく“強調”の意味でも使われます。たとえば、

・私は勉強は苦手ですが、スポーツは得意です。

という文章に“は”が3つあります。1番目が主格、2番目と3番目は強調です。このように、主語が明確になっていれば、助詞を誤読する可能性は低くなります。主語を省略してしまうと、初めに出てくる“は”が、主格を示す助詞か、強調を示す助詞か、判りにくくなります。

・勉強は苦手ですが、スポーツは得意です。

 たいていは、“勉強は”を主語として捉えます。すると、述語が“苦手です”ではなく、“得意です”でもないため、読み手が迷ってしまいます。読者はこの文をもういちど読み返して、「なるほど、この文章は“私は”という主語が省略されているらしいな」と、やっと気付くわけです。短い文章なら、このように読み返して理解する手間も無意識のうちに終わります。しかし、文章が長かったり、このような文章が何度も登場したりすると、読み手は疲れてしまいます。「なんだか読みにくい文章だな」、「難しい説明だな」と感じるでしょう。主語をきちんと書くだけで、この問題は解決できます。

主格を表わす助詞は、“は”のほかに“が”、“も”があります。

・私は勉強します。
・私が勉強します。
・私も勉強します。

 どれも正しい文章です。しかし“が”は逆説の接続助詞として使われる場合があります。

・しばらく療養しましたが、これからは働きます。

また、“も”は並列をあらわす意味があります。

・私はリンゴもみかんも好きです。

このように、主格を表わす助詞は、ほかの意味も持っています。したがって、主語をきちんと書いておかないと、誤読の原因になります。

日本語は主語を省略しやすい言語です。しかし、むやみに省略すると読みにくい文章になります。だから、なるべく主語と述語が正しくつながっている文章を書きましょう。主語と述語が正しい関係になる。そうすれば、目的語や修飾語の関係もわかりやすくなりますよ。きちんとした文章を書く第一歩は、クドイと思うほど主語をきちんと表記することです。せいぜい数文字の手間を省いてはいけません。

 

→ 第14回:誰のために記事を書く?

 
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