■もう一つの世界との対話 ~谷口江里也と海藤春樹のイメージトリップ
第一話 スカートの向こうの海との対話  1/4
更新日2005/08/04
 
海の中は素敵だよ
君のような女の子がたくさんいるよ
もちろん海の中のことだから、人間じゃないよ

正直言ってこの世はとても退屈だけれど、それでもたまには
やっぱり生まれてきてよかったと、そう思えることだってある
このまえも、わたしが自分の部屋の鏡の前で、柔らかなスカートをはいて
軽くダンスを踊りながら、そんな自分の姿に、何となくうっとりしていると
突然スカートが青く透明な海になり、そこから一匹の魚が
ぴょんと飛び出してきて言った
 
それにしてもまいったね
かわいい女の子を見かけて、ちょっと海の外を覗いてみたけど
この空気とやらの息苦しいのなんの、全く息が詰まっちゃう

どうして魚が? とは思わなかった
だって私は、不思議なことが嫌いじゃない
というより、不思議なことの方がずっとリアルだと思えることがよくある
すべてが、まるであたりまえのような顔をしているけれど
どうして? と一度考え始めると
なんだか訳が分からなくなってくる普通のことと比べれば
不思議なことはいつだって、いきなり始まってしまうのでむしろ気楽だ
だから私のスカートが突然海になって
そこから魚が飛び出してきて、私に話しかけてきたときも
不思議というより、オオツ、なんだか面白いことになってきたなと
そう思った瞬間から、何もかも、すっかり忘れて
私の体は、魚に聞きたいことでいっぱいになってしまった
海の中は何がどんなふうに素敵なの? 私はそこでもかわいいの?
私みたいな魚が、ほんとにそこにいるの? 
私もそこに行けるの?


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『もう一つの世界との対話』
定価 2,415円(税込み)
著者 :谷口江里也/TEXT 
カイトウハルキ/クレイドール
発行:(株)エスプレ
項数:247頁


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