第6回:大人は頭を使うのだ
更新日2001/05/15
月に一度のマザーズクラブの定例集会には必ず出席した。それは、一つにはそこで新し い人と出会えるよい機会であったこともあるが、もう一つの理由は純粋にこのミーティ
ングが面白かったからだ。
ミーティングは最初に、クラブの会長と、プレイグループ、イン・ア・ピンチ、ベビー シッター・コープなどの各コーディネーターが事務連絡をする。そして、月によってや
ることが変わる。
ゲスト・スピーカーが来て講演する月には、ハイウェイパトロールの警官によるチャイ ルドシートの正しい使用法、小児科医による子どものかかりやすい病気の早期発見法、
空手の武道家による護身術教室など、どれをとっても退屈なものはなかった。どれも身 近な話題で、知っているようで実は知らないというものが多かったから、メモを取りな
がら聞いている人も少なくなかった。
ソシアルと呼ばれるメンバー同士の交流を深める月は、英語で「break the ice」とい うが、メンバー同士うち解けるための工夫がなされていた。その一つがゲーム形式のデ
ィスカッション。7人ずつくらいのグループに分かれて丸く座り、みんながディスカッ ションのテーマを書いた紙をそれぞれ1枚箱の中から取る。
テーマは、たとえば「スーパーのレジに並んでいるときに、うしろにいたお年寄りがあなたの子どもにキャンディをくれた。ふだん、あなたは子どもにキャンディを食べさせ
ないようにしていたとしたら、そのお年寄りになんと言うか?」とか「子どもの友だち があなたの家に来た。ランチを一緒に食べさせようとしたら、その子どもがあなたの出した野菜をキライだからと言って食べなかった。あなたがいつも、自分の子どもに好き
嫌いを言ってはいけないと教育しているとしたら、この子供の友だちにはなんと言うか?」といったものだ。
なんということはないのだけれど、なかなかリアリティのある深 いテーマだ。よく考えてある。実際、各テーマごとにいろんな意見が出て、「ああ、そ
ういうときにはこう言えばいいのか」と参考になる。これは私だけではなく、参加した 他の母親たちもそう思っていたようだ。
私としては、アメリカ人と日本人の違い、アメリカ人といってもいろんなバックグラウ ンドの人、つまり、いろんな祖先を持つ人がいることに気づいて面白かった。
たとえば、先ほどのディスカッションの「お年寄りがキャンディをくれた」というテー マは私が引いたもので、これに対して私は「たぶん、そのときはありがとう、と言って
子どもに食べさせると思う。子どももそれが特別な機会だということはわかると思うし 、なによりもお年寄りの好意に感謝すると思う」と言った。ところがイタリア系のアメ
リカ人が「それに、それを断ったらそのお年寄りの面子が立たないでしょう。それを断 るのは失礼よね」と言ったのだ。おお、面子にこだわるのは日本人だけではないのね!
このミーティングは、ただ集まるというよりは、自分が参加するから会が進行していくというのを実感できる集会だった。それになにより、日頃どちらかといえば子供につきあって「くまさん・ぶーぶー」にかたよりがちな脳の違うパートを刺激されて、ちゃん
と「思考回路」をライブで使える、という快感があったのである。
→ 第7回:ボランティアのホントの意味