「筆を使い油絵を長年描いていたけれど、何かがしっくりこなかった。作品に自由が足りない、自分が表に出過ぎている。」と感じていたという。アーティストが自分の作品に「自意識が過剰で、エゴが強過ぎる」というのは驚きかもしれない。自分を消すこと、絵の具に自主性を持たせること、そのためには実はかなりのコントロールが必要で、何度も失敗を重ねた上で、偶然の余地を残しながらも自分で方向性を持って描く(描かせる)ことができるようになった。
これは絵具の形が示唆する雲や水平線などから触発された絵画術で、キャンバスという限られた画面上で絵具に自由を与え、絵具がまるで自然と同じ様に振舞うようにすること。絵具は自然の真似をするかの様に、キャンバスの上に溜まり、定着し、ゆっくりと動き、そして蒸発や重力に従う。彼女は、こういった偶然で自然の出来事に反応し、決断して作品を完成させる。
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