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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第932回:リンカーンのお葬式

更新日2026/02/19 



リンカーンのお葬式が昨年(2025年)12月20日に行われました。リンカーンと言えば南北戦争で勝利し、奴隷を開放し、分裂しかかっていたアメリカを一つの国に作り上げた英雄です。未だに米国史を選考する学生の間では学位論文に取り上げる人物の筆頭です。
 
彼、アブラハム・リンカーンは何と言ってもアメリカ史の英雄、しかも立志伝中の出世頭(かしら)的人物で、生まれたのは丸太小屋、貧困極めた環境から巡回弁護士を務め、大統領にまで上りつめたのですから、いかにもアメリカ人好みの立身出世物語にピッタリ当てはまります。

彼のお葬式といっても、本人はとっくの昔に死んでいますから、彼の生誕100年を記念して1909年に発行されたコイン、彼の横顔をレリーフにした1セント銅貨のコインの製造、サーキュレーションを廃止、1セント(1ぺニーと呼ばれています)の終焉を、リンカーンのお葬式になぞったのです。

元々、アメリカではクレジットカード、今ではスマホのQRコードで買い物や決済することが一般的で、自動販売機もカード、スマホで使用でき、実際にコインを販売機に投入することはほとんどありません。スマホ、クレジットカードを持っていない人は、一人前の人間とみなされないのです。日本のようにビール、お酒、タバコ、何でもかんでも自動販売機で買える国は他にないでしょうけど…。

それに、アメリカのコインは廃止になった1セント、5セント(ニッケルと呼ばれています)はトマス・ジェファーソン、10セントはフランクリン・ルーズベルト、25セント(クオーター)はジョージ・ワシントン、50セント(ハーフダラー)はJ. F. ケネディー、1ドル硬貨はアイゼンハワーと出回っているのですが、実際に使われているのは25セントまでで、50セント、1ドル硬貨を受け入れる、自動販売機も車の洗浄機もありません。

リンカーンの横顔が彫り込まれている1セント硬貨は、道端に落ちていても誰も拾わないタグのお金です。しかも1セント銅貨を作るのに3セントかかるというのです。どうにも割りに合わないと造幣局は根を上げていたようです。

1セント銅貨は実在の人物をモデルに使ったアメリカで初めてのコインです。デザインしたのは、リトアニア生まれのユダヤ人、ヴィクトール・ブレイニーという人で、フランスでメダル、レリーフの修行し、ニューヨークに住んでいました。1セントコインに使った写真は南北戦争後に撮られた写真で、写真の方はかなり疲れ切って、やつれた表情ですが、小さな1セント銅貨ではそんな表情まで見えません。

さて、232年間に渡り使用されてきた1セントコインのリンカーンのお葬式ですが、シルクハットに黒の礼服を着込んだジョージ・ワシントン、トマス・ジェファーソン、もちろん喪服の妻、メリー・トッド・リンカーン、そしてリンカーンをフォード劇場で殺害したブースまでが参列していました。なんともアメリカ的というのか、好き者たちがよくぞ演出したものだと呆れ、感心しました。もちろん全員、役を振り当てられた人たちですが…。

立派な樫の木の棺桶に参列者が思いを込めてリンカーンのレリーフが彫られている1セントや花束を投げ入れるのでした。

テレビ局や新聞雑誌の報道陣が、半分面白おかしく報道していましたが、一般の参列者は主催者の思惑通りには集まらず、200~300人というところかしら。

一時期、全世界を牛耳っていたドルは信用度が下がり、ユーロや円、果てまだ中国の元に押され、ひと昔前の勢いがありません。1セントコインの廃止は、ドル終焉の先駆けになるのでしょうか・・・

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えていました。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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