■くらり、スペイン〜移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻

湯川カナ
(ゆかわ・かな)


1973年、長崎生まれ。受験戦争→学生起業→Yahoo! JAPAN第一号サーファーと、お調子者系ベビーブーマー人生まっしぐら。のはずが、ITバブル長者のチャンスもフイにして、「太陽が呼んでいた」とウソぶきながらスペインへ移住。昼からワイン飲んでシエスタする、スロウな生活実践中。ほぼ日刊イトイ新聞の連載もよろしく!
著書『カナ式ラテン生活』。


第1回: はじめまして。

■更新予定日:毎週木曜日

第2回: 愛のひと。(前編)

更新日2002/05/02 

アミーガ・データ
HN: MIHO
1971年、静岡生まれ。
1994年よりスペイン生活、現在8年目。
移住地:マドリード

海外に来てまで、日本人とばかり一緒に行動するひとがいる。海外に来たからと、街で日本人とすれ違っても無視するひともいる。スペインに来たばかりの頃の私は、後者だった。海外生活への意気込みが、変な方向に出てしまっていたのだろう。だからインターネットを通じて彼女と知り合ったときも、すぐに仲良くなったわけではなかった。

そんな私のいびつな心を、MIHOはゆっくり解きほぐしてくれた。愛のひと、なのだと思う。ヒッピーとギャルのテイストが交じった個性的なファッションで、「旅行者立ち入り厳禁」と言われる治安要注意の地区をペタペタと歩く。ふっくらした面立ちからは想像もできないような低いドスの効いた声で、遠州弁とスペイン語を同じように操る。3歳になった愛娘のYちゃんを、叱り、抱きしめ、キスをする。ついでに、スペイン人顔負けの巨乳。そんな一見でたらめな要素が、ぜんぶ、溢れる愛の証(のような気がする)。いつもこころをオープンにして、目の前のものすべてを受け入れる。たとえば、「海外に来たんだから」と肩肘を張っていた私なんかのことも。

そんな彼女も、スペインに来たすぐは「我ながら嫌な女だった」という。日本で美大を卒業後、以前旅行したことがあったスペインはバルセロナへ、インテリア・デザインの勉強のためにやってきた23歳の頃の話。

バルセロナは、ご存知のように、マドリードと並ぶスペインの大都市である。日本でなら東京と大阪にたとえることができるだろう。スペインのほぼど真ん中にあり、いちばん近い海岸まで350km(東京−名古屋間)もあるマドリードと、穏やかに輝く地中海に面するバルセロナ。気候も違えば、歴史や文化、公用語、ひとの気質までがまったく違う。

バルセロナには、彼女のようにアートを学ぼうとする外国人が多く訪れる。壮大なサグラダ・ファミリアで有名な建築家ガウディ、画家なら巨匠ピカソ、ダリ、ミロ。バルセロナを中心とするカタルーニャ地方の出身や縁のある芸術家は、現在に至るまで非常に多いのだ。

だから、彼女も迷わずバルセロナ留学を決めた、わけではない。「イタリアも旅行で行って好きだったから悩んだんだけど。でもスペイン語の方が使えるし(※南米のほとんどの国でスペイン語が話されている)、それにスペインの方が日本人の数が少なかったから」。そうしてスペイン語もカタラン語(カタルーニャ地方の公用語)もまったく知らないまま、旅行中に温かく接してくれたスペイン人たちの思い出を胸に、1994年、彼女はバルセロナへとやってきた。

こうして海外生活が始まったのだが、運の悪いことに、最初にホームステイしたファミリーが、「最悪」だったという。彼女はすっかり自信をなくし、言葉の面でのコンプレックスから対人恐怖症にまでなってしまった。常に友人が周囲に集ってくる現在からは想像もできないのだが、約3年にわたるバルセロナ留学生活の間、彼女にはひとりも日本人の友人も、スペイン人の友人もいなかったという。当時、情熱を燃やしていたのは、夜遊び。日本人の友人を必要としていなかったこともあるが、友人といえば、イギリス系黒人のナオミなど外国人ばかり。

「カタラン人って、ぜんっぜんラテンじゃないんだよ。よく言われることだけど、やっぱりひとが冷たいよね。なんか、住んでる日本人まで態度悪かったし。超高飛車でさ」 旅行では知りえなかった現実に、すっかり落ち込んでしまう。「私にも原因があったと思うんだけどね。ほんと、我ながら嫌な奴だったから」

もう、スペインを去ろうと決意した。英語を学びに、ナオミの故郷ロンドンかニューヨークに行こう。友人と相談し、親にもそう告げたあと、出会いは急に訪れた。

 

 

第3回: 愛の人。(後編)

 
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