第39回:Butch Cassidy_ララミー刑務所 その2
更新日2007/07/19
ブッチは2年の強制労働の刑に処せられ、ララミー刑務所で1年半過ごした。この期間にブッチの中で何かが変わった。よく言われることだが、刑務所は受刑者をスジ金入りの本物の犯罪人に作り変える。
入所以前のブッチはアウトローとしての生活を打ち切り、足を洗い真っ当な人生を歩もうと、どこかにいつも更生しようという意図が見え隠れしていたが、出所した時には確固たるアウトロー魂を持っていた。元々ブッチにはアウトローとしての才能があった上、監獄で豊かな人脈、教師に恵まれ、出所時に、言ってみればアウトローの博士号を取って出てきたのだ。
後にマット・ワーナーは。「ブッチは銀行、列車強盗の百科事典だ。ありとあらゆる手管を知っている」と、嘆息したほどだった。

ララミー刑務所の牢獄。
狭い二人用の牢獄で、ブッチが誰と同居していたのかは分からない。恐らく頻繁に部屋も同居人も変わったものと思われる。ブッチがいた当時のララミー刑務所の服役者の多くは牛や馬泥棒で、殺人で入っていた者も酒の上での事故だったり、感情的なもつれからだったりの田舎のカウボーイが多く、根っからの極悪犯罪人は少なかった。
フレーモント郡からブッチと護送された同期生5人の罪状は、ハーリー(Harry Gilchrist)21歳、馬泥棒、2年7ヵ月の刑。アイザック(Isaac
Winkle)39歳、羊飼い、大牧場主フランクの牛を殺した罪、1年2ヵ月の刑。ビル(Bill Nichol)18歳、馬泥棒、3年の刑。チャーリー(Charley
Brown)16歳、馬泥棒、塀の下に穴を掘り、逃亡。ビル(Bill Wheaton)23歳、殺人、8年の刑。
この刑罰でも分かる通り、ワイオミング州では大牧場主の圧力で馬や牛泥棒に厳しく、殺人に甘い刑を下していた。羊飼いのアイザックの迷い牛を殺した罪など、3、4年前なら、軽い罰金刑で済み、ほとんど犯罪と言えるようなものではなかった。殺人で3年、小切手の偽造で10年の例も見つけたほどだ。
ブッチの刑は強制労働(hard labor)だったから、その時建設中だった収容所をぐるりと囲む4メートルはあろうかという塀垣造りに借り出されたことだろう。ほか50エーカーの芋畑と、もう50エーカーの穀物畑の農作業。牛、馬、ブタ、鶏の世話。牛舎や豚小屋の清掃などの労働を他の囚人と同様に、させられたとことだろう。

刑務所に付属する農園。見張りの塔が見えている。
ララミーの刑務所は、同時期のほかの州の刑務所に比べ進歩的であったといえる。足枷をつけたままでの鉄道敷設工事や危険な鉱山での強制労働を課していない。祭日には、ロディオ、野球大会、穀物袋に両足を入れ飛ぶように走るサック競争などを行っているし、独立記念日にはオペラまで上演している。恐らく刑務所長アダムスの決断だろう。
アメリカの刑務所としては初めての女性を刑務所内の教会の牧師として迎えている。服務違反の刑罰は、最悪の罰で窓のない小さな箱のような部屋に閉じ込める"箱詰め"、次が食料制限でパンと水だけしか与えられない罰、一番軽いのが獄舎内でも手錠をかけ、それを鎖で天井につなぐ自由制限の罰などを明文化して、設けていた。ブッチがそれらの罰に服した記録はない。
ブッチと同時期に服役していた者をワイルドバンチのメンバーの中に探してみたところ、やはり何人もいた。「務所を出たら、俺と一緒にシゴトをしようぜ」と、リクルートおさおさ怠りなかったのだろう。なにせ人材は豊富なのだ。主なところでは、ロッキー(Abraham
"Rocky" Stoner)すでに50歳を過ぎていたが、出所後、ブッチは彼の牧場を隠れ家として盛ん利用した。
拳銃使いのマックス(Richard CarrもしくはJames Bliss、または人呼んでC. L."Gunplay
Maxwell)は、ワイルドバンチの積極的メンバーになった。
トム・オズボーン(Tom Osborne)は字が読めなかった。そこに付け込みソーン(Thorn)なる男が、トム・オズボーンの牧場そのものの譲渡書類を馬の売買証と偽り、サインさせ、彼の牧場を乗っ取ったのだ。それを知ったトム・オズボーンは、ソーンを酒場で撃ち殺したのだ。その罪でトム・オズボーンは服役していた。彼とブッチは刑務所入りする前からの知り合いだったが、ララミーの獄舎で旧交を温め、出所後ワイルドバンチのメンバーになった。

トム・オズボーン。
ブッチ逮捕の直接の原因を作ったビリー(Joseph "Billy" Nutcher)も馬泥棒の罪で4年の刑を食らっていたが、ブッチがどのような態度を彼に取ったか分からない。少なくとも刑務所内でビリーをつるし上げるようなことはしていない。
これは推測の域を出ないが、ブッチが後に列車強盗行う際、機関車そのものの運転、列車の連結、現金輸送車両の護衛運行など、クロウトはだしの知識を駆使するが、この列車関連講座を受け持ったのが、機関士崩れのアウトローで丁度ブッチと時期を同じくして服役していた、ジョン(John
Worley)ではなかったか思う。なにぶんにもお勉強の時間はたっぷりあったし、熱心に学んだに違いない。鉄道で何年も働くか、誰かに教わらない限り、列車のことをああまで知ることはできない。
-…つづく
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