のらり 大好評連載中   
 
■よりみち~編集後記

更新日2023/10/12



パレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム主義武装組織である「ハマス」が、2023年10月7日のイスラエルの安息日を狙って大規模攻撃を開始した。1973年10月に発生した第四次中東戦争からちょうど50年後の同じ安息日に奇襲攻撃を仕掛けたことはアラブ諸国への連帯を呼び掛けたアクションであることは間違いないだろう。それまではミサイルやロケット弾の攻撃は続いていたが、越境攻撃はなかった。今回の攻撃の特徴はドローンを使って監視塔を攻撃して、バイクやパラグライダー、そして小型モーターボートなどにより越境する戦術であり、1年以上かけた計画だったようだ。7日午前6時半から始まった大規模なロケット攻撃は、ハマス側は5,000発以上、イスラエル側は2,200発以上だとしているが、とにかくイスラエルが独自開発した自信の防空ミサイルシステム「アイアンドーム」をすり抜けて攻撃してきた。双方の死者の数は、10月12日現在、イスラエル側で1,200人、ガザ地区で1,100人であわせて2,300人を超えている。イスラエル政府はすでに30万人の予備役を動員、ガザ地区周辺に35の大隊を展開しており、さらに死者数が増えることは確実視されている。

イスラエルは、すでに封鎖しているガザ地区を「完全包囲」し、食料と水、燃料、電気の供給を遮断していて、国連のグテレス事務総長は、人道的に危機的な状況が悪化の一途をたどることになると警鐘を鳴らしているが、ネタニヤフ首相は挙国一致の戦時内閣を発足させ、イスラエル政府は「ハマスを地球上から消し去る」と明言しており、ガサ地区が壊滅状態になりそうだ。ハマスはなぜ今勝ち目のない戦いに挑んできたのか? 誰が考えても無鉄砲すぎる戦略であり、イスラエル側の反応がかなり遅れたことに違和感を覚える。安息日を狙った奇襲攻撃ではあるものの、1年以上も前から計画されていたことが、ハマスを徹底監視していたイスラエルの諜報部が全く動いていないことが不思議すぎるのだ。そして、本日10月12日の報道で、「エジプトはイスラエルに3日前に警告していた」とされ、ネタニヤフ首相は「完全なフェイクニュースだ」と否定しているが、エジプト情報当局の関係者は、今週、AP通信に対し、ガザ地区で何か大きなことが計画されていると、イスラエルに繰り返し警戒を呼びかけていたことは確かなようだ。イスラエルとしては、この大規模な奇襲攻撃をある程度予測していて、反対にハマスへの徹底攻撃の口実として利用しようとしていた可能性はないだろうか? すでにアメリカのバイデン大統領は、ハマスの攻撃を「悪の所業」と呼び、イスラエルには反撃する義務があると述べており、アメリカは空母、艦船、ジェット機を地中海東部に移動させており、アメリカの完全なるお墨付きを貰って、ハマスの壊滅作戦を心置きなく実施できるわけで、ガサ地区のパレスチナ人の難民問題が今後大問題になりそうだ。

ウクライナ侵攻によるプーチンの戦争のドサクサにまぎれ、死の商人と言われる武器商人たちが裏で動いている感じがしないだろうか? どうも陰謀の匂いさえ漂っているようで、今回のハマスの動きが納得できない。ここまで計画していたのなら、アラブ諸国との連動が不可欠なはずだが、動いたのはレバノンのヒズボラだけのようで、それもロケット弾の打ち込みと連帯の表明だけだ。イランの不気味な動きも注目されてはいるが、どうも目立った動きはみられない。更なる展開がハマスにあるようにも思えない。イスラエル軍の一方的な攻撃になることは確実で、パレスチナ人の人権侵害がさらに深刻化しそうでとても恐ろしい。一刻も早く戦闘を中止させて、パレスチナ人難民がこれ以上増えないように国連は至急動くべきだ。(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

このコラムの感想を書く

 



のらり編集部

著者にメールを送る


バックナンバー

■更新予定日:毎週木曜日