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■よりみち~編集後記

 

更新日2018/09/13




2018年9月6日(木)午前3時8分、前日の深夜に台風21号が北海道をかすめて通過して、その暴風圏に入ってからは家が風で揺れるほどの風圧で眠れない夜を過ごしていたので、寝不足のため熟睡していたのだったが、突然の振動音を伴う大きな揺れで一瞬で目が覚めた。今度は地震だ。それも地鳴りの大きさで通常の地震とは明らかに違い、東日本大震災時のような大きくうねるような揺れが徐々に大きくなった。ベッドから起き上がり、ガラス窓が割れたら外に逃げ出さないとマズイと思った。本棚が倒れ、目の前にプリンターが落ちてきた。スリッパを探すがない。東日本大震災の時はこの揺れている時間が異様に長かった記憶があるが、意外と1分間程度で収まった。電気は点いているから、ネットで震源地と震度を確認する。苫小牧方面で、震度6強とある。自宅の場所は震度5強だった。震度6強であれば建物倒壊、地滑り、山崩れ、何でもあり得ると思った。LINEで家族に一応安全を伝えておき、台所や家の中をチェックして回っているうちに停電になって何も見えなくなった。懐中電灯を探し、その頼りない光の中で本棚を戻し、プリンターを設置し直す。水道も心配になり確認するが問題なし。食器などが飛び出したり、転がったりしていたが、被害はコーヒーサーバー1個だけで済んだ。


停電はすぐに回復するものだと思っていたが全くその気配がなかった。携帯電話は繋がるがネットに繋がりづらくなり、やがて全く繋がらなくなった。頼みの綱はポータブルラジオしかなくなった。やはり最後はNHKラジオになるのかと思った。そして停電が全道すべてブラックアウトしていることを知った。まさかと思った。苫東厚真発電所の規模は大きいとは聞いていたが、北海道の発電所は十分バックアップできる規模だと思っていたのだ。それも復旧には1週間以上とか報道をし始め、必ず泊原発の核燃料貯蔵プールの方は予備電源が作動していて全く問題がないことをやたらに強調する。ラジオだけの情報なので、他の地域の被害状況がなかなか見えてこない。とりあえず、札幌近郊などは大規模な被害報告は入ってきていないようだったが、震源地に近い厚真町や安平町から山崩れや建物倒壊の報告が入ってきていた。最初は2名死亡程度の報道だったが、行方不明者がどんどん増えていて、40名近い人の安否が不明で、ほとんどが厚真町郊外の農家のようだった。

札幌は大丈夫だと思い込んでいたのだが、ラジオでさかんに清田区の被害を報告し始めていて、建物倒壊や地盤沈下などで住民が避難しているとのことで、札幌の他の地域は無事なのに清田区のある地区だけが被害が拡大しているのか不思議に思えたが、停電後にTV画像でその液状化現象を観て驚いた。陥没や隆起だけでなく、道路に川が流れているようにうねっているのだ。北海道はどこの地域にも泥炭地が多く、これが土地開発の大きなネックになってきていた。そのような場所であったことは間違いないだろうが、札幌などは泥炭地だらけだから、なぜ清田区の一部だけが液状化が起こったのか説明がつかない。土地改良の際の手抜き工事の可能性も否定できないだろう。ウワサの話では、元水田地帯で沢が流れる谷があって、それを崩してそのまま埋め戻した地区だということで、今後の調査が待たれる。

全道一斉のブラックアウトの影響は甚大で、今回の地震の被害も大きいが、ブラックアウトによる被害の方が経済的には大きいように思える。停電になると、信号が動かないので道路が動かなくなり、当然、JR鉄道も地下鉄もストップ、空港も計器や照明がないから閉鎖、スーパーやコンビニもレジが使えないから営業できない。但し、地元のコンビニ、セイコーマートが車のバッテリーを引き込んでレジだけ動かせるようにして営業を続け評価を上げている。東日本大震災の教訓を生かして、災害マニュアルを作成し、閉店しないで営業するノウハウを研究していたようで、断水そして停電している家庭のためにガス釜で米を炊き、温かい塩むすびも各店舗で提供したようだ。結局、最短で10時間後に一部の電気が復旧(我家も10時間で回復)、しかし最大3日間の停電を経験した家も多かった。


今回の全道ブラックアウトは、北電の甘すぎる災害時の想定と、国の原発再稼働推進政策の問題が大きいと思える。北電は泊原発の再稼働ありきでしか北海道の電力構図を考えておらず、いずれ再稼働ができればすべて問題ないシステムを維持しようとしていたわけで、泊原発なしで、大災害が発生した場合のシミュレーションすらできていなかったと思える。苫東厚真発電所が全道シェアの50%以上であったわけで、それがすべて喪失した場合のバックアップを全道規模の配電は不可能になることは素人であってもわかることで、システム自体を変えなければならないことは明らかなことです。一部の原発推進者が、このブラックアウトは泊原発を再稼働していなかったからであり、早急に再稼働すべきという呆れた主張をする人がいるようだが、言語道断で、泊原発は今回の地震で震度2でありながら電源喪失事故を起こしているわけで、再稼働など絶対にあってはならないことです。どうも、今回のブラックアウト現象を原発再稼働への動きに利用しようとする動きに対しては絶対に許してはなりません。(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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