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■よりみち~編集後記

 

更新日2013/09/12


9月9日(日)、なんと2020年東京オリンピック開催が決まった。1964年以来の2度目の五輪である。それまで対抗馬であるマドリードの最後の巻き返しが激しく、かなり日本が苦戦しているような情報もあり、何よりも終盤に来て、フクシマの汚染水の関心が海外メディアで高くなり、放射能汚染対策が問題が最大の難関となった印象だった。トルコのイスタンブールは、オリンピック招致の佳境時に長く続いた反政府デモ、そして長期化するシリア内戦と軍事介入の危機が重なり、トルコの不安定な政治状況が浮き彫りとなり、急速に支持を落とした。その中でスペインのマドリードは財政問題は依然として不安な状態ではあるものの、王室が動くなど無難な動きを見せており、3者の中では問題が財政面のみの不安ということで、息を吹き返したものと思っていたのだが、第1回投票で1位が日本、イスタンブールがマドリードを下して2位となった。これには誰しも驚いたことだろう。まさかのマドリードの敗退。実はどうもスペインのスポーツ連盟がドーピングに対しての対応がかなり甘く、それが評価に大きく影響したと本国では分析しているようだ。最終投票の東京VSイスタンブールでは、消去法でいくと東京しかないことは十分予想できた。7年後にシリア内戦がどうなっているか、アメリカが軍事介入した場合には、イスラエルとの中東戦争に拡大していることも可能性としてあるわけで、全く見えない放射能の汚染水と戦争ではどちらが脅威かという選択肢となった。最終プレゼンテーションで、安倍首相が行ったフクイチの実質的な安全宣言("Let me assure you the situation is under control,")によって、評決は決定的となった。
確かに東京での二度目のオリンピック開催は、日本のスポーツ界はもちろん日本全体にとって大変喜ばしいことであり、一回目の1964年の時と同様、インフラの改革、経済の発展、国際化の推進、そしてスポーツの振興と、そのメリットは計り知れないものだろう。但し、フクイチの汚染水問題の目途が立っていたらという条件付きだと思う。もし、フクイチの現状をIOC委員が東電の責任者から説明を受けていたとしたら、ほとんどの委員は日本に票を入れることに躊躇したはずだ。安倍首相は、メディアからの質問やIOC委員の心配を払しょくし、安心させる言葉を並べた。そして、日本のトップ自らが、汚染水の問題が「統制されていて」全く心配はいらないと、さらに東京の水の状態は放射能の国際基準の500分の1であり、なんら問題はなく、報道機関の発表を鵜呑みにすることの方に問題があるとの見解まで出している。外面(そとづら)を良くすることも外交の礼節なのだから、ある程度目をつぶることはできるが、国内で全く汚染水問題の方策も決まっておらず、地下水流入抑制対策も疑問視されており、すべてはコントロールされていて全く問題ないと言ってのける勇気には関心するものの、そんな大嘘をついて後からどうするのだろうという心配が大きい。海外のメディアもそれほどお人好しではない。全く政府のコントロールが効いていないことはすぐに見破るはずで、それが世界に「安倍は大?ツキ」として報道されたら、オリンピックのボイコットなど、日本にとって危機的な状態に陥るのではないかと大いに懸念する。
フクイチの汚染水の問題は、単に地下水の流入や貯水タンクの不備による一時的な問題ではなく、今後果てしなく続くフクイチの廃炉のための冷却水の問題であり、毎日約400トンの水を処理しなければならないわけで、どう考えてもフクイチの敷地内に何十年分の汚染水を貯めるタンクを設置し続けることはあり得ない。汚染水の除染処理もしくは冷却方法の変更(鉛で封印して冷却する方法も考えられているようだ)が不可欠である。さらに、現在問題になっている山側から流入し続ける地下水の処理である。フクイチ施設の地盤に入り込んでしまえば汚染は免れないわけで、いかに汚染させない地下水をそのまま海に流せるかということにかかっている。この汚染水の処理及び地下水の放流は世界中の人々が注目している地球規模の国際プロジェクトであることを早急に認識すべきであり、東電一社の問題ではない。今とても悔しいことは、311事故当初、東電一社に除染から廃炉まで責任を取らせる考え方(東電を潰さないで再稼働して株主を守るという論理が働いていたことは間違いないだろう)を民主党政府が押し切ってしまったことだ。この間違いをいち早く修正して、東電を解体し、政府主導のプロジェクトチームを再編成していたなら、もう少しまともに組織が機能していたはずで、それがとても残念な結果になってしまっている。とにかく今は廃炉作業と汚染水対策である。その陣頭指揮を執る強いリーダーシップを持ったサムライを選出できるかどうかに安倍さんの政治生命、そして日本の未来が掛かっていると思う。(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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