のらり 大好評連載中   
 
■よりみち~編集後記

 

更新日2011/09/08


野田新総理にバトンが替わって、民主党政権がついに正念場を迎えている。3人目で結果が出せない政権に未来はないことは明白だ。今のところ、期待されていなかった分、そして地味な分、根回しの巧みさや組閣人事のバランス感覚にひょっとしたらという希望が芽生えている感じもあるのだが、民主党の党首になる方は最初の頃は皆さんマスコミ受けもよく、それなりに期待されてきているので、野田首相もいつまでこの好評価が続けられるのか、どうも時間の問題という感じがしないでもない。それでも、今の民主党には誰もリーダーにふさわしい人がいないことが情けない。実際のところ、この野田さんしかいなかったのではないかと思える。海江田さんだと傀儡政権だっただろうし(彼自身、傀儡でもよいと思っていたと平気で暴露したから更に驚いた。なりふり構わず総理を一度やりたいということなのだろうか?)、前原さんだったら、たぶん自民党の批判の格好の餌食になっていたことは明白だろう。鹿野さんも誰が見てもありえないわけで、結局選ぶ人がいないので「どじょう」が出てきて「こんにちは」という結末になったのだ。たぶん、今までの民主党の総理(鳩山・管)では一番まともで、しっかり仕事ができる人だと思う。鳩山さんのような庶民派を気取りながらボンボン丸出しの宇宙人でもないし、管さんのような個人的な感情や好みを強調する社会党丸出しの凡人でもなく、寝技を使ってでも相手から勝ちを取りにいく現実主義であり、一応国士としての志(こころざし)を松下政経塾で叩き込まれた政治家なので、一貫したビジョンで、今までのように次の日に言うことが変わってしまうようなことのないブレない人であることを期待したいものだ。
ただ、気になるのが原発問題だ。野田総理の斬新な脱原発ビジョンは聞こえてこないし、全く原発には無頓着な感じすら覚える。現実主義なのは分るが、経済活動に不可欠な原発は新設はできないが、現状維持で耐久年数が過ぎた段階で廃炉にする方向で考えているはずだ。その猶予期間に自然エネルギー開発すればよいという現状維持派の立場なのだろう。この考え方は決して脱原発ではなく、世間体を意識しての減原発ということで、その証拠に、計画中や建設中の原発は工事を継続する立場であることをすでに表明している。東日本大震災による原発事故で世界中に衝撃を与え、ドイツ、イタリア、スイスなどに脱原発宣言をさせている現実を忘れているのだろうか。特にドイツは、福島原発事故後、国内17基の原発のうち7基を暫定的に停止し、さらに2021年までにすべての原発を廃炉にすることを正式決定している。スイスも2034年までにすべての原発の廃炉を決定している。イタリアでは福島原発事故後に行われた国民投票で脱原発を再決定している。当事国の日本が脱原発に向かわないのは国際的にもナンセンスな話だろう。最も被害の大きく、影響が継続中の日本がなぜ脱原発議論が盛り上がらないのは何故なのだろう? 原発維持派の答えは簡単だ。脱原発といっても、現実的にはすぐに原発は止められない。徐々に代替エネルギーの推進をしながら止めていくしかないのだから、今すぐに原発を止めるような話は無理だという意見だ。確かに正論なのだが、目標もなく徐々に自然エネルギー開発を行うことで原発は止められるはずがないのだ。何年後までに原発をすべて止めるという目標を策定することで初めて代替エネルギーの議論が深まり、現実的な自然エネルギー推進が始まるわけで、日本の場合は特にこのなし崩しスタイルが多く、いつの間にか決定事項が廃止され、忘れ去られていることが多々あるのだ。事業仕分けで建設中止が決定されていたはずの国家公務員用マンション建設が、いつのまにかゾンビのように復活してちゃっかり着工してしまったように、日本の官僚主義は、都合の悪いことは静かに着実に誰も知られないように進められ、気がついたときには誰の責任でもなくなり、誰も罰せられずに、困ったもんだという一言で収束してしまう不思議な行政機関なのだから、脱原発だけは管前総理の意思を継いでしっかりやり遂げて欲しいものだ。
野田さんは海外に日本の原発技術を輸出することも従来の路線通り進める考え方だというのだが、これは国際的にはお笑いネタになり兼ねないほどのブラックジョークになることは明白だろう。福島原発事故の収束もできない国の原発システムを誰が本気で話を聞いてくれるのだろうか。日本の国債の評価が下がるのは当然だろうし、スルーされる国になったのもしょうがない、しかしながら、軽蔑される国にランクを挙げることだけは勘弁してもらいたいものだ。もっと海外から日本の真の姿を見つめて行動するべきだろう。 (

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

このコラムの感想を書く



のらり編集部

著者にメールを送る


バックナンバー

■更新予定日:毎週木曜日