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■よりみち~編集後記

 

更新日2014/07/03


2014年7月1日、日本の戦後の歴史の中でも特筆すべき日となるかもしれない。安倍晋三内閣が閣議決定だけで、集団的自衛権の行使容認という憲法解釈の変更をするという暴挙をやってのけてしまった。戦争放棄などを定めた『憲法9条』で規定している集団的自衛権の行使を禁止を密室の閣議だけで、「できない」ものを「できる」にしてしまったわけで、いくら首相の釈明会見の中で、「日本が再び戦争をする国になるといった誤解がある。しかし、そんなことは断じてあり得ない」と言い訳をしたところで、集団的自衛権の行使とは戦争に加担することであり、あり得ないなどと言えること自体が詭弁でしかない。国民の命と暮らしを守るための法整備が必要不可欠と強調するのだが、それは個別的自衛権だけで充分対応可能という法学者は無視され、ひたすらアメリカに追従する態勢を強化しようとしている。アメリカの現状を考えると、財政難、国内問題などで軍事力に陰りが見えていることは明白で、日本に対して、軍事費の強力だけでなく、人的協力を求めていることは確かだろう。そのプレッシャーが相当なものであることも理解できるのだが、日本国憲法の草案づくりは戦勝国であるアメリカ指導の下で行われ、日本ブランドとして『憲法9条』が制定された経緯があり、“お前に言われたくない”と拒否できる条項であり、アメリカも今回の閣議決定を当然歓迎してはいるが、表立って日本に要望したと言えるはずがないのだ。

地球防衛軍を自負するアメリカは、世界中のあらゆる国際紛争に乗り出し、民主主義を旗印に、人道的支援の名目で民族戦争に加担してきた経緯があり、その裏の目的である軍事産業の振興やエネルギー資源の確保などによりテロリスト集団の台頭を促進する結果となって現在に至っている。最近では、ブッシュ大統領時代のアフガニスタンのテロリスト掃討作戦やイラク侵攻作戦の際、ヨーロッパのNATO軍に要請して派兵させたように、集団的自衛権の行使を容認するということは、アメリカの派兵要請に対して断る理由がなくなったということである。日本でもイラク侵攻への協力として、莫大な軍事費の提供、後方支援としての給油船の提供や人道復興支援活動と安全確保支援活動として非戦闘地域に限定して自衛隊創設以来初めて陸上部隊を派遣したが、武器は自衛のための最小限に止めたが、今度はそうはいかない。日本の安全保障条約の同盟国であるアメリカが集団的自衛権の行使を容認した日本に対して、アメリカは危機的状況だからと言って緊急要請してきたら、危ないからそこは行けませんと、断りきれるはずがない。そしてもう一つの大きな問題は、テロリストのターゲット国になるということだ。イラク侵攻に多国籍軍として参戦したイギリスやスペインなどでテロリストによる爆破テロが散発したように、アメリカと同様にテロリストから攻撃される可能性が非常に高くなるだろう。「日本が再び戦争をする国になるといった誤解がある」と安倍さんは弁明したが、一度自衛隊がアメリカの傘下に入った段階で、戦争をする国ではなく、国民の命と暮らしを守るには、戦争に加担せざるを得ない国になるということ忘れてはならない。どうしてそんなに戦争をやりたがるのか全く理解ができない。

戦争放棄を宣言した平和憲法の国という「日本ブランド」しか日本のアイデンティティーを発揮できるものはない。安全な国、信頼のおける国、殺さない国、だから国際的なボランティア活動でも評価され、尊敬もされていた日本人が、これから先、何をブランドにできるというのだろうか。アメリカの言いなりで動くポチ軍隊のいるサテライト・アイランドとしか日本は見られなく可能性が充分ある。そんな日本でいいのだろうか?(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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