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■よりみち~編集後記

更新日2023/05/25



5月18日からスタートして、21日に閉幕した『G7(主要7ヵ国)広島サミット』だが、誰がこんな茶番劇のオンパレードを評価しているだろうか? 
岸田首相の地元広島で開催されるG7サミットということで、舞い上がっていたのは岸田首相とその一族だけではないのだろうか?
「核なき世界」を目指すとか、「原爆資料館」にG7首脳が詣でて世界平和に祈りをささげるとか、岸田首相としては二度とやってこない自分の議長の姿を国民の目に焼き付け、平和の象徴である「ヒロシマ」を世界にアピールできる一世一代の晴れ舞台として、入念に企画を考えてきていたのだろうことは想像に難しくない。
しかしながら、原爆記念館にまであの『核のフットボール』が持ち込まれることを想像していたのだろうか? あの「核のボタン」が入っている黒いカバンが広島サミットに持ち込まれることだけは避けるよう強硬にお願いすべきだったはずだ。それが本物の「核のボタン」入りのバッグだったのかどうかという報道を確認したが、さすがにコメントしているメディアはない。日本を属国としてしか考えていないアメリカのバイデン大統領が、「核のボタン」なしに日本に来るはずがないのである。原爆資料館を初訪問したバイデン大統領が、原爆投下の過去の実態と悲惨な被爆者の話を聞きながら、一方では「核のボタン」の上に指を載せているというマンガのような光景が思い浮かぶわけで、採択された『ヒロシマ・アクションプラン』も絵に描いた餅でしかなく、イベントのお飾りでしかない。そこには、広島の祈りでもある「核廃絶」も「核なき世界」も触れられず、「拡大抑止」、核による抑止力を肯定し強調するだけで、何のために広島でサミットを開催したのかさっぱり理解不能なのである。

そして、その極め付けがウクライナのゼレンスキー大統領の突然のG7合流騒動である。サウジアラビアを訪問していた同大統領が急遽日本で開催中のG7に乗り込んできたのだ。当初はオンラインでのミーティングは予定されていたわけで、それが単にリアル会議になっただけということではない。G7の特別ゲストとして会議の中心となることを意味し、こんな大それたことがゼレンスキー大統領一人が言い出して実現できるものではない。サウジアラビア訪問もフランス政府専用機が使用されていて、それがそのまま広島空港に飛んできたわけで、ここにアメリカやNATOの陰謀が見え隠れしている。そもそもが今回のG7の議題はウクライナ問題が中心だったわけで、岸田首相が張り切っていた「核なき世界」のテーマとはほど遠い現実的な問題ばかりであり、ロシアと中国をどれだけ抑制できるか、どうやって経済的に追い込むかという話題ばかりだったはずなのだ。
現在進行形でロシアと熾烈な戦争を続けているウクライナには同情しているし、ロシアの核の脅威について心配しているのだが、G7の話題を独り占めにして、テーブルの中央に座り、武器供与や資金援助を懇願してくる姿は、世界平和を祈り続けている「ヒロシマ」には一番似合わないどころか、聖地「ヒロシマ」に土足で戦地から乗り込んできた無礼者としか映らないのだ。「核なき世界」どころか戦争協力の舞台に「ヒロシマ」が上手く使われてしまった感が強くするのだ。
岸田首相としては、G7議長国として、実りあるサミットだったと立派にやり遂げたことを自画自賛しているのだろうが、世界平和の発信地である「ヒロシマ」が、とても安っぽいアメリカの属国日本で開催されたゼレンスキー劇場に替えられたと思うのだが、いかがだろうか?(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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